第233話 戦いに向けて あれれー魔力がないよ?
こいつは芋虫状態のまま連行しよう。神だから1か月位このままにしておいても平気だろうしな。
リュイを蘭から預かり、俺の頭に乗せておく。リュイなら落ちないだろうしない。
「洋一、紗香がどうやってここまで来たか聞かなくていいの?」
「あっそう言えば! 色々あり過ぎて聴きそびれたけど紗香さん、なんでここに? 堺さんにもエロスにも連絡付かなかったんだけど」
俺の疑問に紗香はふわりと笑う。
「星冥様の結界がありましたからね。私がここに来られたのは、エロス様、アマルナ様、魔王様のご助力があったからです。洋一君の異変にいち早く気づき、対応してくださいました」
エロス、アマルナ、堺さんが力を貸してくれていたのか……エロスなら突撃してきそうなもんだけど。
「エロスやアマルナは?」
紗香さんの表情が曇る。
「エロス様、アマルナ様は力を使い果たし、神界で眠りにつきました」
眠りっ!?
「えっ? 大丈夫なの!?」
「エロス様とアマルナ様は、普通に神界で寝てます。あっ洋一君これをアマルナ様から」
寝てんのかい! 紗香さんの表情が暗かったから、焦ったぜ。
請求書 金貨30枚 世界を救って、紗香も救って必ず払え、死ぬなよ! アマルナ
筆で書かれたアマルナの手紙を、胸ポケットにしまう。請求書ってところがまたアマルナらしいな。
♢
リーさん達を蘭と紗香さんが回復し、俺達は魔獣の森へ戻った。ヴァイシュラヴァナを星冥がかけた拘束の他に鉄の鎖で繋ぎ、蘭が魔法で作った鉄の檻に打ち込み、蘭、紗香さん、アナスタシア、リーさんの順に結界を張り逃さない様にする。
『信徒よ! これでは見せ物小屋じゃないか! 結界を張り過ぎじゃないか? それにこの鎖のせいで神気や魔力が使えないぞ!?』
「お前は危険人物だからに決まってんだろーが。例え太一が危険だったとしても、殺す事はないだろ。まあ全部終わったら解放するから大人しくしてろよ」
『全部終わったら? それでは我がアンラマンユに苦情を入れにいけないではないか! 彼奴が悪意をばら撒くから、地球は大変な事になったんだぞ! 我は尻拭いをしていたのに!』
「地球が大変な事にか……よし。皆んなアンラマンユと戦う為に作戦会議をしよう」
『我を無視するな! おーい! 信徒よー!』
最後までうるさいヴァイシュラヴァナを無視して、俺の部屋に入る。
会議にいるのは、蘭、師匠、豪爺い、桜さん、紗香さん、アナスタシア、精霊王、リーさんだ。
精霊王と桜さんに現状を伝え、もう直ぐアンラマンユとの戦いになる事を伝え、更には星冥の話をすると、精霊王の眉間にシワが走り、怒気を放つ。
「精霊爺い? どうしたんだ? とりあえず星冥は、変な奴だけど俺達じゃ勝てないぞ……」
『戦おうとは思ってはいけない、アレはそう言う存在だ……儂の友もかつて彼奴の仲間だったが、星の為に死んだ。彼奴ならなんとかできた筈だ……だがそれをしなかった。だから儂は彼奴を許せない。許してはいけないんだ』
ちょこちょこ出て来る星の生贄になった人かあ。気になるな、精霊爺いなら教えてくれるかな?
「その人ってどんな人なの?」
俺の言葉に精霊爺いは、きょとんした顔をする。
『そうじゃなあ……優しくて、誰からも好かれる奴だった。歳の頃は、葵と同じくらいだな。魔術や魔法ではない、おかしな術を使う奴だった。確かニ……なんとかじゃ!』
二って精霊爺い、ほぼ覚えてないじゃねえか。
「忍者でござるか?」
『ブシャシャシャ! 実に懐かしい響き! それじゃああ!』
鼓膜がいかれる……!
「うるせ! 叫ぶなよ! 精霊爺いはただでさえ、身体も顔もでかいんだから!」
『すまんすまん、そんな奴の最後は……やはり思い出せぬか。今では、友の名前すら思い出せぬ。顔も薄っすらとしかわからぬ。ただ、確かに友はいた。友は世界を護ったのじゃ』
精霊爺いは拳を硬く握っている。師匠が顎に手を当て、なにかを考えている様だ。一々様になるんだよなあ。
「うーん、それって大和さんの言ってた人かな? 詳しくは教えてくれなかったけど」
『大和……その者なら、友の名前も……』
「なんて言ったかなあ。確か聞いた気がするんだけどなあ、ただ大和さん、連絡つかないからなあ」
笛吹いてみようかな? 笛を吹いてみるが、音が鳴らない。あれ? 壊れたのか?
『いつかその者に会えたら、友の話を聞かせて貰おう。ワシは神獣がいない世を、精霊と共に守護をする。この世界の王達にも伝えておこう。この世界の人間では、戦力になれないからな』
精霊爺いが、変なポーズをしシュバっと消えた。
「洋一君、僕はおじさんと修行するから。蘭ちゃんと一緒にアナスタシアちゃんや、リュイちゃんや、桜さんや、紗香さん達を宜しくね!」
師匠も外に出て行く。多分星冥に勝てなかったのが悔しいんだろうな。
「━━洋一。警戒は常に俺達もしているが、気をはっておけよ」
俺の胸を軽く叩くと、豪爺いも出て行った。
「蘭、紗香さん、アナスタシア、俺も修行した方がいいかなあ? 1か月で強くなれるかはわからないけどさ」
「いやあ……」
蘭が濁している。
『無理ね!』
「おま! 無理って言うなよ! アンラマンユと戦うんだぞ? 回復とか結界とかスキルとかさ!」
『あんた自分が魔力0なのわかってるの? 魔力0でスキルや魔法が使えるわけないでしょ?』
えっえええ……強くなれる道がないじゃないか。




