第227話 モーゼの十戒
湖の中って、うーん。どうしたら良いんだ? 潜るのか? 俺、金槌だし蘭は鳥だから水には入れたくないし……どうしたら良いんだ?
「湖の中って……天虎はどうやって管理してたんだ?」
『管理なんかしてないよ、だって湖の底までいけないし。この湖の周りで暮してただけだよ? 創造神様も別になにも言わなかったし』
ファンキー爺いの職務怠慢のツケが俺達に回ってくるなんて、嫌な世界だ。
「ファンキー爺いめ、適当な仕事しやがって」
師匠が何故か俺の首を急に掴む。
「とりあえず洋一君、真ん中辺りに飛ばすから、天眼で神殿の位置を見て来てね。せーの!」
「俺泳げなあああああ」
━━ザバアアン!
水に叩きつられた、やばい、死ぬ、どうにかして泳がないと、だめた身体が沈む! どんどん、下に落ちていく。服は身体に絡みつき重くなるし、息が続かない! 誰か助けて……。
俺がジタバタともがいていると、身体が急に浮上する。
「はあ。洋一大丈夫?」
「おエッ!! ゴエッ! ゴエエ!」
「全く葵も無茶するんだから」
無茶ってレベルじゃない! アレは殺人だ!
「豪爺いとリーさんを宥めてからきたから、助けが遅れてごめんね?」
「あっああ……だいじょばないけど、あの3人が戦ふよりは……いい」
蘭に浮遊の魔法で連れられ岸に戻る。
「洋一君、ごめんね? でも金槌だったんだね。まさかヨワヨワの実でも食べたの?」
ヨワヨワの実ってなんだよ、食べたら弱くなる実か? まあ師匠が、一応茶化してはいるけど謝ってくれたからよしとしよう……って言うか怒る気力もツッコミを入れる気力もない。
「━━洋一、大丈夫か! まさか泳げんとは……特訓だな」
『旦那様は泳ぎが苦手だったのか。なら修行しましょう、泳げる様になるために!』
あっあれ? おかしいぞ? 何故に特訓やら修行やらと言うワードが? ちょっと特訓したくらいでどうにかなる深さじゃなかったぞ?
「待って待って! 特訓してどうにかなる深さじゃないよ!?」
これでは結局洋一、水中殺人ショーの開幕になってしまう。どうにかして止めなければ!
「━━泳いで行こうとしてるのか?」
「へっ? だって泳ぎの特訓って」
「━━クックック。葵も見て来てとは言ったが、行って来いとは言ってないだろ? 大体の位置に辺りを付けたかっただけだからな」
「じゃあなんで特訓を?」
「━━この先使わないとも限らんだろ? せっかく水耐性もあるんだから、ちょっとは泳げたほうがいいからな」
水耐性、水の中じゃまるで役に立たなかったよ……自然エネルギーには勝てなかったんだよ……。
『旦那様、妾が手取り足取り教えるぞ!』
「水着ないぞ? フルチンでやるのか?」
『水浴びは裸で……』
リーさんは俺、師匠、豪爺いと見て顔を赤くして、蹲る。
「━━洋一ならフルチンでも良いだろ」
俺ならってどう言う事!?
「豪爺い、俺がフルチンを正装にしているみたいな感じで言わないでよ!」
「━━クックック、いやいやそうじゃない。肉体年齢的な問題だ。俺や葵がフルチンでは問題があるだろ?」
確かに成人間近の師匠、それに豪爺いが全裸は絵面的にもキツイ。
「魔法で酸素マスクを作って潜れたり、魔法で神殿の周りの水を退けれたら楽なのになあ」
『蘭の魔法でも、天虎の言霊でもできるんじゃないの? 特に言霊なら、水に命令するだけで良いと思うけど?』
「それだ!」
俺達とは反対方向にいるアナスタシアの方へ走って行くと、なんと言う事でしょう、そこには全裸のアナスタシアがいました。
「ぶっ!」
思わず魅入ってしまった。鼻血も止まらないし……いやしかしアナスタシア、綺麗なおぱああああい!
『変態!』
アナスタシアの前蹴りが俺に当たると、アレが俺の目の前に、はっはじめて生でみた……!
『えっなんで、赤い顔して倒れてんの? ちょっとえ? 蘭! 来て!』
「アナスタシア様、これは興奮してこうなってるだけですから大丈夫ですよ。それより早く服を着てください。向こうで葵も鼻血を出しながら倒れてますから」
『きゃあああ!』
♢
俺と師匠は豪爺いからゲンコツを落とされ説教された。何故豪爺いからと言うと、俺や師匠に効く攻撃が出来るのが豪爺いであり、最年長で良識があるからだと言う事だ。
だが俺にはアナスタシアの身体が脳裏に焼き付いて離れない。こんな時でも、俺の息子はスタンドアップしてくれなかったが……モザイク無しがここまでの破壊力とは……。
「豪爺い、女の子って良いね」
「━━クックック洋一、お前モテないだろ」
「うぐっ! まあモテないけど……」
「━━まあそう言う事したいなら、ちゃんと結婚して責任が取れる時にしろよ? 葵お前もだ」
「「はい……」」
めちゃくちゃ正論すぎて俺と師匠はぐうの音もでなかった。
「━━天虎、言霊で水を避けれるか?」
豪爺いは俺達に背を向け、天虎に話しかけると。
『自然相手に使った事ないからわからない。まあやってみるけど……水よ神殿周りから退けてくれ』
天虎が湖に向け、赤い瞳になり話しかけると、水が自然と引いていく。
モーゼの十戒みたいな光景に俺の視線は釘付けになる。
「すげえ!」
『これ……思ったより疲れるなあ。この力自然にも効くんだ!』
天虎は自分の力が、自然に通用した事な驚き喜んでいる。試した事なかったのか、普通試しそうなもんだけどな……。天虎が馬鹿なのか、天然なのか判断に迷うな。




