第223話 新たなるお尻フラグ!?
規格外の2人のせいで、リュイが泣いてしまい蘭と俺で一生懸命なだめるはめになった。なんとか蘭が出したお菓子でご機嫌を取ったが、疲れたな。
「はあ、とりあえず俺達は次の国に行くよ。ガギュウも無事だったしな」
『えっ僕を心配してくれたの?』
「そりゃ神獣だしな。心配もするさ、狙われているのは精霊と神獣で、ここは他所から見たら禁忌の国で隔離されてたからな。リーさんに頼んで無理やり乗り込んだ感じだし」
『僕を心配……ドキン! これが恋!?』
尻尾を千切れんばかりに振り、鼻息を荒らし、潤んだ瞳で俺を見るガギュウ。なんだ? 今ドキンとか言ってたけど、嫌な予感がする。エロスと同じ匂いが……。
『あっあの趣味はなんですか?』
なんでいきなりお見合いみたいな雰囲気になっているんだよ。もう適当に答えるか。
「は? 趣味? 趣味は寝る事かな」
『あっ! あああ! 僕と同じ! 運命! 神のお導き!』
いやいや、創造神は多分寝てるし、アナスタシアは人を導くなんて出来ないからな? 紗香さんならできるだろうけど。
『ちょっと! あんた今、私を紗香と比べたでしょ! って言うか龍族の人達が何人か亡くなってんのに遊んでんじゃないわよ』
アナスタシアが怒っている事もわかるんだけど……いつもならもっとショックを受けたりしていたはずなのに、種族が変わっておかしくなったのか? 戦士として散った彼等を称えることはしても、嘆いちゃいけない気がするんだよなあ。
『いや、彼等の死を嘆く事は彼等への侮辱だ。妾達は彼等の分まで強く、魂を背負い生きていかなければならん。旦那様は流石だな、精龍人になってまだ間もないのに龍族のを志を持つとはな』
いや龍族の覚悟とか志とかは、知らないけど今まで色々な人に沢山教わってきたからな。
「ナチュラルに俺の心を読むな。色々間違って、叱られて、教わってきたからな。泣いてやるだけが、弔いじゃないってのをわかっただけだよ。本当は寂しいし辛い気持ちもあるけどな、さっきまでふざけあってた訳だし」
『だがそれを見せずに前を向いた旦那様はかっ』
━━ドガアアアン!
「豪爺いも師匠ももう少し静かにやってよ! せっかくちょっとカッコいい場面だったのに! 俺が成長した的なさあ! リーさん最後の方聞こえなかったんだけど」
『うるしゃあ!』
「アルデンテ!!」
痛たたた、なんでぶっ飛ばされたんだ? 最後の方聞こえなかったから聞き返しただけなのに。
「洋一、遊んでる暇はないかもよ? 敵が禁忌の国にも侵入出来るんだから早く他の神殿にも行かないと」
そうか、結界を打ち破れるなら早く行かないとヤバいのか。
「あー蘭ちゃんそれはどうかな?」
「えっ? 何故ですか?」
「さっき倒した奴は一応神だよ? 属神って言って神の子供みたいな奴なんだけど」
神の子供? 序列がよくわからないな。師匠が、鞘で何かを書き出す。
「洋一君は、神マニアだからわかると思ったけど……。とりあえずこれ見て。序列は、神、属神、御使って順だよ。組織で言えばNo2くらいかな?」
「えっ? それってめちゃくちゃ強い奴なんじゃ」
「あれくらないなら僕1人でも余裕だけど、今回はそっちのおじさんもいたからね」
師匠は、龍族の人達と談笑している豪爺いを見ている。
「属神や亜神って言う奴らはさ、所詮神になれなかった奴らだからね」
あれでも豪爺いも誰かの御使なんじゃなかったかな?
「まっ洋一君なら、岩とか投げられない限り死なないよ多分」
「多分って師匠!」
師匠は話に飽きたのか笑いながら、いじけているアナスタシアの方へ歩いて行く。
「豪爺い! ちょっと聞きたいんだけど」
俺が声をかけると、龍族との話を切り上げ、豪爺いがやってくる。
「━━改まってどうしたんだ?」
「豪爺いは誰の御使なの?」
俺の質問に豪爺いの表情が固まる。
「━━何故と聞いてもいいか?」
「今さ、師匠に神や御使の話を聞いて、気になったんだよね。さっきの敵も属神だった訳でしょ? 御使なのになんで倒せたかなあって」
豪爺いは目を伏せ、深いため息をつく。
「━━まあそろそろ話しておいた方がいいか。俺はな、過去にノーデンスの御使だった。御使としての使命は特に言われなかったな。言われたのは、この世界に悟がいて、封印されているが生きている。これだけだ」
えっ? 豪爺いって親父(仮)の御使だったの?
「━━規格外の力を与えられ、最初は苦労もしたが。奴の言う通り、悟にも会えた。それに今は洋一、お前もいるしな。不安そうな顔をするんじゃない」
豪爺いは俺の頭を撫でる。
「━━魔王や創造神は、ノーデンスの御使だと気づいていたがな。魔王達に会って直ぐ、称号が外れたから、ノーデンスにとってもその程度の存在だったのだろう」
「うちの親父(仮)がすみませんでした!」
とりあえず豪爺いに謝る、見た事ないがあの糞親父、方々で迷惑かけまくりじゃねえか!
「━━クックック。ノーデンスの事は恨んでいない。まあもうちょっと具体的な説明とかあったら楽だったがな。さあ蘭よどうする? 俺は敵側もしれんぞ?」
豪爺いは、静かに話を聞いていた蘭を見る。
「はあ。試すような真似をしなくても、私は貴方と戦いませんよ。少なくとも明確な敵になるまでは」
「━━クックック。相変わらず良い女だな。洋一大事にしろよ? 蘭程の女はそうそういないぞ?」
「女って……まあ蘭は家族だし、豪爺いと蘭が戦いそうになっらたら俺が止めるよ!」
蘭と豪爺いは、2人揃ってため息をつく。
「━━蘭よ。大変だな」
「ええ……もう慣れました」




