第220話 子宝の神に俺はなる! EDだけどな!
真っ白な世界だな。これが性の世界か? ドラゴンとSMしなければならないんだろうか……嫌だなあ。初めては好きな人がいいなあ。って言うか息子よ、何故反応しないんだ? 結構ムフフなシーンはあったぞ? 状況が状況だったからかもしれないが、朝勃ちすらしないって何故なんだ? 子供ボディだからか? いやそんな事はないはずだ。
『なんで真っ白な世界なの? こんな事初めてなんだけど』
まさか俺は、童貞でありながらエンドの称号を得てしまったのか? まさかの息子ジエンドなのか? 嫌だ、地球も含めて新品未使用なんだぞ? 中古品じゃないんだぞ。
『お願い、話聞いてよー』
「俺はインポテンツなのか!?」
『はっ? いんぽてんつってなに?』
いんぽてんつ、それは普通の童貞である俺には、とても辛い難病だ。異世界では薬もないし……ああ、泌尿器科が恋しい。行った事ないけど。
「EDの話はもういい。で、ここでなにするんだ?」
『いーでぃ? 貴方が勝手に始めた話でしょ? それに試験を始めようと思うんだけど、貴方性欲無いの? その若さで枯れてるの? 普通に受験者の性欲が現れ、それに耐久する試験なんだけど』
意外に細かいドラゴンだな。
性欲の耐久試験……じゃあなにか? あのドラゴン達は内なるSM願望を解放して楽しんでいたのか?
「いや俺、自分で言うのもなんなんだけど、かなりのスケベだぞ? 巨乳好きだし女好きだし」
俺はノーマルのEDだが、女の子は大好きだぞ? 特に巨乳が!
『ならなんで今、性欲が具現化されないのよ。具現化されないって事は、ヒラーキヨーイチ、貴方異性の事が好きじゃないんじゃないの? それか無欲か』
そう言われてしまうと困るな。とりあえず念じてみるか。
女、女、女、女、女、女、女、女あああああ!
「でないなあ、これさ試験失敗って感じかな? まあ仕方ないかあ。だがSMドラゴン、貴様に一つ言える事は、俺の名前は、ひ・い・ら・ぎ・よ・う・い・ち、な。ヒーラキヨーイチじゃない」
試験は失敗なら仕方ないが、名前位はちゃんと覚えて貰おう。
『今更、名前の訂正? 貴方変わってるわねえ。覚えたわよ』
SMドラゴンに変わり者扱いされた……。名前は重要なんだぞ?
『あれ? 試験が終わる? まさかのクリア? えっありえないんだけどおおおお』
えっ試験クリア? 名前を訂正しただけど?
♢
試験をクリアしたら直ぐに元の場所に戻るのかと思いきや、何分経っても変化がない。クリアしたのに? 置いてきぼりか?
『おーいたいた。まさか俺以外にも、精龍人がいるとは驚きだぜ、やっと絶倫馬鹿の称号から抜け出せる! ありがとう少年!』
若い様な、年老いた様な不思議な男の声が響く。
『いやー絶倫馬鹿の称号ってさ、次代が現れるまで延々と語り継がれる称号だから、恥ずかしくてな!』
その話が真実なら、俺の次に精龍人が現れるまで絶倫馬鹿の称号が付くのかな? EDなのに?
「あっあのうどちら様ですか?」
とりあえずこの不思議音声さんの名前を聞こう。
『あー名前は言いたくない。言いたくない程恥ずかしい名前だって、覚えておいてくれよな』
恥ずかしい名前って、男性器的な名前なのかな? ちんこって名前で、称号が絶倫馬鹿なら俺なら自殺するな。
「貴方は生きているんですか?」
『いんや死んでるよ!』
死んでる? 喋る? =幽霊って事か? えっまじ? お化け?
「おっおばきゃああああああああ!」
『うるさっ! 急に叫ぶなよ……とりあえず少年、君は次代の精龍人になれた、おめでとう! 因みにこの儀式って、次代の精龍人を探す儀式で成龍になるのとは関係ないから』
「きゃあああってえっ? 関係ないってどう言う事ですか!?」
『おお……叫ぶのやめたんだ。普通の龍族は、自分の性壁を見つめなおして、馬鹿だなあって思って大人になる儀式だよ。勝手に成龍になる為の通過儀式になってたけど』
え? 性癖を見つめ直して大人になるって……賢者タイムになって大人になるの? 龍族って馬鹿なの?
『馬鹿なのって思ったでしょ? だけど長命主になるとさ、意外に自分の事を見つめ直す機会ってないんだ。だから龍族達にとっては紛れもない試験なんだよ』
「えっじゃあ俺が大人になるには……」
『知らないけど、普通に歳を重ねていくしかないんじゃない? 一応龍族全体には、次代の精龍人、ひいらぎよういちが試験をクリアしたと、周知したけど』
「周知したんですか?」
『そりゃするよ。いつまでも俺の名前で、絶倫馬鹿を広められたくないしね』
こいつ最低過ぎる! 自分の嫌な称号を俺に押し付けやがった! 俺だっていらねえよ!
「ふざけんな! こっちは異世界に来てから息子の調子がおかしい事に今気付いたんだぞ! 息子が立ち上がれないのに、称号と名前だけ一人歩きとか拷問じゃないか!」
『まあいいじゃん。あっそろそろ俺も時間だから、後は頑張れよ、次代の精龍人』
「ちょ待て! おい!」
♢
いきなり元の世界に戻された。
「糞があああ!! 先代精龍人めええ!」
俺が1人憤慨していると、扉からメチルさん(龍モード)とSMドラゴンが入ってきて、2人して俺に首を垂れている。
『先程の先代様からの御告げがありました。貴方は次代の精龍人様なのですね。先程までの無礼をお許し下さい。私ども龍族は貴方を子宝の神として崇めます』
子宝の神!? 童貞でEDなのに!?
『ささっ私にお乗りください。龍の巣へ凱旋しましょう』
メチルさんの尻尾に包まれ、強制的に俺を背に乗せる。
「あっあの凱旋って……」
『次代の子宝の神として、龍の巣を一周します。その後式典もありますので』
式典ってなんだよ、嫌な予感しかないんだが!
「断りたいんだが……」
『行きますよー!』
メチルさん俺の話を聞いておくれえええ!




