第219話 性の世界へさあ行くぞ!
鞭、蝋燭、磔、目隠し、縛り、俺が知ってるだけでも相当種類のSMプレイだっだぞ? それをただの座禅だと? メチルさんには、朝飯前のプレイと言う事か?
メチルさんは、SなのかMなのか非常に気になる。俺はMじゃないしなあ。何気に言葉攻めの部屋が一番嫌だったなあ、この豚が! って言われてブヒイブヒイ喘ぐドラゴンとか……。
「メチルさんになにが見えてるかは知らないけど、普通あんなもん見たら、トラウマになるぞ」
メチルさんは困った顔をして。
『私には座禅をしている姿しか見えないんですが、試験を受けられ、突破した方はなぜか皆んな私を罵るんです。また試験をクリアできなかった方は、試験の部屋から出てこなくなるんですよ……』
「SMにハマるか、ブチ切れて出てくるかの二択かあ。あの試験ならまあブチ切れるだろうなあ……」
『私には座禅をしているだけで、いきなり怒られるので、こうなったら事前に見せちゃおうって思いまして。事前に見せたら、異様に興奮してやりたいって言う方か、無言で立ち去られる方かで別れてまして……お客様はどうされますか?』
どうされますかかあ。受けたらあのSMプレイを朱色のドラゴンとしなきゃいけないんだよなあ……気が重いがやらなきゃ、リーさんやリーさんの両親に殺されるだろうしな……。
しかもなあ、メチルさんの目、めちゃくちゃ期待してんだよなあ。俺が、断ったら多分傷つくよな。
「やりたくないけどやるよ」
俺の言葉を聞くと、メチルさんの顔がパァッと明るくなり
『わああああ! 苦節15年! 久々の試験案内ができるうう!!』
余程嬉しかったのか、ガッツポーズをしている。
「はははは……がんばりますんで、案内お願いします」
『さっ行きましょう! 試験の間へ』
俺をつかみ、凄いスピードで羽ばたくメチルさん。風が肌を切り裂きめちゃくちゃ痛い。飛ぶ事5分程で、メチルさんがやっと止まってくれた。
「早すぎる……良く死ななかったな」
メチルさんが、やっと手を離してくれた。正直身体中が痛い。
『あっああ! 大丈夫ですか!?』
「大丈夫、なんとか……とりあえず中に入れば良いのかな?」
『はっはい! このスペーシャリの間で!』
スペーシャリってなんだ? スペーシャル、スペシャル? スペシャルの間!? 今さら断れないし、仕方ないか……。
重い足取りで、メチルさんが開けてくれたドアから中に入る。
「こっこんちわあ。試験受けにきやしたー」
中に入ると、中は暗くなにも見えない。俺が目を凝らして見ていると、中央が光り輝く。
『オーッホホホ! スペーシャリの間へようこそ! 貴方が試験を受けに来た、男ね!』
SMプレイをしていた、朱色のドラゴンが高笑いをしている。ドラゴンの身体にボンテージ、変な仮面に鞭、やっぱりコイツかあ。
「なあ一つ聞きたいんだけど、ドラゴンと龍の違いってなに? メチルさんとかケスディアさん達は和風の龍だったけど、あんたと変態プレイをしてたのは洋風だろ? この違いってなんだ?」
『よっようふう? わふう? メチルにケスディア家……ああ! それは成龍になるとこの身体からメチルみたいになるのよ! 私はなりたくないからこのままだけどね!』
大人と子供で姿が違う、なんて言ったかなあ。
「ああ変体か。龍って変体なのかあ」
『変態? そう私達は性を解き放った存在! Sの向こう側、Mの向こう側の世界の住人よ! 貴方見どころあるじゃない!』
朱色のドラゴンは俺をめちゃくちゃ褒めてくれている。ただコイツは変体と変態を勘違いしているな。まあ敢えて言わないでもいいか。
『試験を始めるわよ! 名乗りなさい!』
「柊洋一です……」
『ヒラーキヨーイチ! 気に入ったわ! さあそこに座りなさい!』
朱色のドラゴンに促されるまま、部屋の中央に座る。とりあえず胡座でいいか。
『素直な子ね!』
めちゃくちゃ喜んでるが、とりあえず気になる事を聞いてみよう。
「質問いい? まず人化できないの? ドラゴンの姿にその服はなんか嫌だ。後、なんで試験の間の試験管が貴女しかいないんだ?」
『人化? 出来ないわよ! やり方知らないし。もう一つ答えるなら、試験管をやりたがる人がいないわ! 私には天国的な場所なんだけどね』
そりゃそうか、SMプレイにハマる人はここから出ないし、ハマらない人はキレて帰ってるんだもんなあ。
「男性しか試験受けないの?」
『女性も受けるわよ? 女性はメチルが担当するから、なにをしてるか知らないわ。興味もないけど』
俺が女性ならメチルさんが担当で、まともな試験を受けられたのかあ……男だから仕方ないけど、性別なんて変えられないしなあ。
『先ず目を瞑りなさい! 貴方が目を瞑ったら試験を始めるわよ』
とりあえず言われた通りに目を瞑るか。グダグダ悩んでも、仕方ないしな。
━━バチン!
「痛っ!! なにすんだよ!」
目を瞑った瞬間、いきなり鞭で背中をひっ叩かれた。
『試験開始よ! 行くわよ! 貴方の性の世界へと!』
「はっ? 性ってなん……」
俺の言葉はそこで途切れた。




