第215話 YES女好きNO男色
いきなりなにかに、吹っ飛ばされた俺とゴロウマリさんは2人仲良く地面を、顔面で滑っていった。漫画的な展開なら怪我をしないんだろうが、俺とゴロウマリさんは、蘭が回復してくれるまで、色々な意味でボロボロになったぜ……。
『全くあんたは! 娘に恥をかかせるんじゃないよ!』
現在ゴロウマリさんを説教しているのは、青色で腰まである長い髪、青い瞳、一重で切れ長の目。着物を突き破りそうなロケットおっぱい。肌は色白で、鹿のような青い角が2本生えている。
『あたしは言ったよねえ、粗相がないようにしろって! 婚約だ云々は別として、なまじ力が強くて、身分もあるから友達も出来ずに、引きこもっていた娘が友達や彼氏まで連れて来たんだぞ!?』
『いやちょ……母さんあの』
うわあ、実の母親に引きこもりからボッチまでバラされるとかきついな……。リーさん、顔面蒼白でオロオロしちゃってるじゃないか。
『それをあんたが変質者だからってこの方々が、引いちゃって、リーヴェルトがまた引きこもりなったらどうするんだい? あんた責任取れんのかい!?』
胸ぐらを掴まれガクガク揺さぶられるゴロウマリさん。奥さんに怒られている叔父さんみたいだな。あの時の叔父さんと同じ死んだ目をしている。
『いやでも母さんこいつが』
『こいつ!?』
『いやあのこの方がリーヴェルトの事が気にいらないみたいに言うから……』
ちょっと待て、その言い方じゃ誤解されて、怒りの矛先が……
『ああん? うちのリーヴェルトになんか文句があるって言うのかい? 胸は小さいけどこの美形だよ? 絶世の美女と言っても過言じゃないんだぞ!?』
ぐえっ! 襟で首が締まるううう
『なんとか言ったらどうなんだい!』
苦し、喋れない! ギブギブう!
「あの首が締まって洋一が喋れないんですが」
蘭ナイス! だけど遅いよ!
『おっとすまないね、じゃあ遺言を聞こうじゃないか』
やばい、言葉を間違えたら首に添えられた手で首をへし折られる。
「まっまず、娘さんの魅力について説明をしたいと思います。綺麗な紫色の髪、綺麗な唇、綺麗な瞳、綺麗なボディライン、私の国にいた有名人と遜色なく、絶世の美姫だと思います。加えて龍族でありながら、呪術にも優れ、武に関しては私などが言うまでもなく完璧そのものです」
『おっおう、わかってるじゃない……』
ん? 引いてる? だがここでやめたら殺される!
「更に知力に秀でていて、羞恥心は生娘そのもの。龍になり背に乗った時は天にも勝る思いでした。私は元人間と言う卑しい存在なので、高貴な龍の背に乗る事得も言われぬ幸福感なのです! わかりますか? えーとお名前は……」
『あたしは、キル・ケスディアだが……』
キル!? 殺される!? 名前を聞いただけなのに! 軌道修正しなければ!
「でっでは、ケスディア婦人とお呼びします」
『あっあたしが婦人!?』
やばい婦人呼びが気に食わなかったのか? だがこのままごり押すしかない!
「ケスディア婦人の血を色濃く継いだ美しさ、そして力強さ! この世にこれだけの美と武あっ武と言っても武道の武ですからね? ゴホン、美と武を体現した人は彼女とケスディア婦人しかいません! そこのちんちくりんな元女神を見てください、今もちんちくりんと言われて、醜悪なゴブリンの様な面をしているでしょう? それに比べて娘さんは頬を染め、恥じらいを持っている! 女性としても完璧じゃないですか!」
『ちょっと誰がちんちくりんのゴブリンよ! この粗チン野朗が!』
アナスタシアにディスられたが、気にしている場合じゃない!
「そんな完璧な女性が、人間から精龍人になりたての卑しい性欲だけの虫けらが、伴侶であっていい筈がないのです! もっと高貴で完璧な殿方がいるはずです!」
どうだ、参ったか? おっ手も話してくれたぞ! 俺は生き残ったぞ! 限界突破サバイバーしたぞ!
『旦那様はそんなにも妾の事を……』
ん? 何故リーさんは潤んだ瞳で俺を見ているんだ?
『父上! 母上!』
えっ? なんでリーさんが土下座!? あっあれか、俺の命を取らない様にだな? よし俺も土下座だ!
「ゴロウマリさん、ケスディア婦人!」
『妾と旦那様の結婚を認めてください! お願いします!』
「そうだ! 俺の命を、お願いしまっ? えっ?」
恐る恐る顔を上げて見ると、ケスディア婦人は感極まって涙を流し、ゴロウマリさんは覚悟を決めた様な表情をしている。
『あんた達の心意気伝わったよ! あたしは賛成だ!』
『非常に不愉快だが、認めるよ。だけど君は、龍人になったばかりでは赤子同然、成龍に成るための試験は受けてもらうけどいいね?』
「いや、あのですから」
ぐっどうしたらいいんだ! 断ったら殺されるし! 身体中に力を入れて考えるんだ! 煌めけ俺の脳細胞!
『もちろん! 旦那様の尻も光りやる気に満ち満ちておる!』
エロスうううう!! お前のマーキングのせいで要らぬ誤解が生まれてるぞ! そっそうだ、エロス俺が結婚してもいいのか? ダメだろ? 助けやがれええ!
『ヨーイチ君の正妻の座は渡さないよ!』
現れたエロスは、裸だったがこの際気にする必要はない。エロスの耳を引っ張り
「エロス、余計な事は言わないでいいからな? とりあえずこの状況を打破してくれ!」
『任せてよ! 正妻だからね!』
そう言うと唖然としているケスディア夫妻の前に立ちはだかり
『ヨーイチ君が欲しいなら、神を倒す覚悟をして貰おうか! ヨーイチ君は僕の夫なんだからね!』
ばっ馬鹿やろう! 余計な混乱を招くんじゃない!
『だっ男色だと!? 男色でありながら娘にも手を出す気か!? 娘は妻よりも乳はないが女だぞ!? とらあああああああい!!』
ゴロウマリさんが、ケスディア婦人とリーさんにぶっ飛ばされた。
「洋一君、まさか僕の尻も……」
師匠が尻を隠しながら後ずさる。
「違います! 誤解です! 俺はケスディア婦人の様なロケットおっぱいが好きでぎゃあああ!」
真っ赤な顔をしたケスディア婦人のパンチが腹に突き刺さった……。
「ナイスストレート……」




