第214話 お父さんはめんどくさい
龍の国は、国と言うよりも埼玉県にある吉見百穴の様に山に無数の穴が開いており、その山から龍達が顔を覗かせている。
俺達は山の中心部分に降りたった。リーさんは直ぐに人化し、前を歩いて行く。
「すげえ事はすげえんだけど、なんだか閉まらない絵面だな」
龍達が皆んな、こちらを見ながら口をパカッと空けている。ブレスとか撃ってこないよな? 囲まれた状況でブレス撃たれたら死ぬぞ?
『皆、妾が人間を連れて来たから驚いているんだ。先ずは国長である妾の父の元へ行こう。旦那様が、せっ精龍人である事も話さないとならんし……』
精龍人って言う単語だけで、顔を赤くしモジモジするリーさん。穴にいた龍達も、リーさんが精龍人って言った瞬間に穴に引っ込んでいった。穴の中でグオグオ言ってる……言葉がわからなくて良かったかもしれない。
彼奴、性欲モンスターだ! 絶倫の化け物だ、孕まされる! みたいな感じに言われてんだろうなあ……。
「とりあえず、リーさん案内お願いします」
蘭が、リーさんを促し再度案内が始まる。案内って言っても山に穴が空いてるだけの景色だから、代わり映えがない。
「リュイ、堺さん印のアイテムはどうだ? 体調に不調はないか?」
『アタチは元気! 特に変わった感じもないよ!』
堺さん印だから壊れる事はないだろうけど、アイテムを外したら意味ないから、注意しとかないとな。
「外さないようにな?」
『もちろん!』
『ここだ、父さん! 妾が帰ったぞ! 客人もいるから、人化してくれー!』
リーさんが一際でかい穴に向かって声をかけると
『グウオオオオオオオオオオオオ!!!』
野太い雄叫びが響く。鼓膜が痛い! 蘭は大丈夫か?
「蘭大丈夫か?」
「?」
蘭が不思議そうな顔をして俺を見ている。
「(あっ洋一ごめん。龍の声が煩くて遮音してるんだ)」
蘭から念話が来たが、確かに龍達の声は大きいから、人より聴覚が良い蘭にはきついだろうしな。
『父さん、叫ぶんじゃなくて人化だよ』
リーさんがため息まじりにツッコミを入れている。えっ? リーさんのお父さん、人化と雄叫びを間違えたの? ボケてるのか?
『おーすまんすまん。ちょっと待ってくれー久々に人化するから戸惑ってなあ、母さんちょっと術式を見てくれ、あってるか? あれ? 違う?』
『すっすまない……父さんはあのおちょっこちょいなんだ……最近は少しボケてきているし』
「あっいや大丈夫。ちょっと龍達の声が、大き過ぎて、蘭は遮音してるけど、許してね? 人より聴覚が良いからキツいんだ」
『それは問題ない、妾達の声はでかいからな。そこの葵と悟の祖父が普通にしているのが、おかしいだけだからな』
豪爺いに師匠か、2人は規格外だからなあ。多分ドラゴン狩りじゃー! って言って嬉々として狩りに行きそうだし。今は、俺とアナスタシアと言う枷があるから行かないだけで。
「━━クックック洋一、失礼な事を考える時はもう少しポーカーフェイスを身につけろ」
うげ、豪爺いにバレたって事は……
「洋一君、後で覚えておくといいよ」
笑顔の中に死神が見える! はい、死んだ! 俺ゲームオーバー!
俺が焦っていると、紫色の髪、短髪で、白髭を蓄え、角を生やした、細身の着物を着た男が現れた。
『やっと人化できた……あっどうもリーヴェルトの父、ゴロウマリ・ケスディアです。宜しくお願いします』
「えっ? あの名前って……」
『ゴロウマリ・ケスディアですけど? ちゃんと共通語で話してるはずなんだが……』
聞き間違いじゃなかった……! ガチでゴロウマルだった、イケメンでゴロウマリって色々ダメだろ。
「洋一君、洋一君、ゴロウマリって日本人みたいな名前だね、具体的に言うとスポー「それ以上はだめです!」あっそう?」
危なかった、師匠がヤバイネタをぶち込んでくるところだった、ナイス俺。
『私の名前になにか……?』
「大丈夫です! お気になさらず!」
『父さん、こちは妾の旦那で精龍人のヨーイチ・ヒーラギと言う。宜しく頼む』
うおっ! リーさんなにぶっ込んでんだよ! ゴロウマリさん、さっきまでニコニコしてたのに、顔の半分だけ阿修羅みたいになってるよ!
『せっ精龍人? 本当なのかい? 証拠の尻尾を見せて欲しいんだが……』
ゴロウマリさんが、俺の肩を掴む手が痛い! めちゃくちゃ力入ってるうう! 肩が爆散するう!
「ほっほんとうですうう!」
師匠が俺のズボンをいきなり降ろした。
「ご覧下さい、こちらが精龍人の尻です」
ご覧くださいじゃなあああい! なんで初対面の人の前で尻を出さなきゃいけないんだよ!
『本当に尻尾がある……だが旦那と言うのはどう言う事かな?』
「それは、リーさんが言ってるだけで俺は了承してなくてその……!」
『うちの娘に不満があると!?』
「ちがあああああう!!」
『あんたああああ! リーヴェルトが恥かかないようにしろって言っただろおおがあああ!』
「『ぎゃああああああ!!』」
俺とゴロウマリさんは、なにかにぶっ飛ばされた。
「おわーすごい。洋一君が吹き飛んだ」




