第213話 如意棒炸裂!
マジでなんなんだよこいつ。話が全然通じないぞ? 師匠や豪爺いは、いつでも剣を抜けるようにしている。
「話も通じない、加護を無理やり渡そうとするは……本当になんなんだよこの神は……」
『我は我、故に我だ!』
すげえ決め顔だけど、意味がわからない言葉のせいで滑稽に見える。
『妾の上でなにが起きてるんだ!?』
リーさんが混乱している、振り落とされたらたまらないので
「リーさんはそのまま目的を目指してくれ! くれぐれも俺を振り落とさないで!」
『任せろ!』
リーさんが一鳴きしてスピードをあげる。
『で、我の加護をいつ受け取るんだ?』
「なあ、アンタはノーデンスやアンラマンユの事は知っているのか?」
『うんむ? 知っている! お前の父親の変態に、いつもアホな事ばかりして、我等に迷惑かけるろくでなしだな!』
そうか、アンラマンユはろくでなしで、俺の父親は変態かあ。って変態!?
『変態だ! 神には女神もいるのに、わざわざ異界で女を孕ましているからな! 注意したら、俺の愛は無限大だとかなんとか抜かしていてな』
俺の親父が想像した斜め上をいく、濃さだった。
『奴は人間から神になったんだが、生前童貞だったらしくな。今では猿の様に性欲に忠実な男になったぞ!』
これさ、俺が童貞のまま死んで神になったら、親父みたいになるのか? 嫌過ぎる、顔も見た事がない親父だが身内の恥が強過ぎて、メンタルブレイクしそうだぜ……。
『邪神を討滅する立場だったのに、邪神だって話せばわかる、と言い神の立場すら超えた事までするからな。ああ、お前にちょっかいだしているのはアンラマンユだぞ? ノーデンスに悪巧みをする知能はない! それに彼奴は彼奴なりに、お前の事を気にしていたからな』
「俺の事を気にしていた?」
『ああ、俺の童貞が息子に感染してしまったと言っていたな。生きてる間は息子の息子が役に立たないと、嘆いていたぞ。息子の息子の意味はわからんがな』
童貞が感染ってなんだよ! 童貞は親父のせいかよ!
『なんて言ったかな、そうだ! ふらぐくらっしゅだったかな? 恋仲になろうとすると、必ず破滅すると言う感じだ! お前の童貞をなんとかしようと、頑張っていたぞ確か』
よし決めた、親父は俺が討伐するぞ。命に変えても、駆逐してやる、例え巨人になってもグールになっても親父だけは必ず駆逐する!
『では我が加護を喰らえ!』
「ちょっ!」
ヴァイシュラヴァナの如意棒が、俺の腹にぶち当たる。
「グエッ!!」
鳩尾に入れるんじゃねえ! 一瞬息が止まったぞ! 他の異世界ファンタジーみたいに厳かに祝福やら加護はくれよ! なんで俺だけいつも酷い目に合うんだよ!
『我は旅立つ! また会おう! 次は銭湯でな!』
ヴァイシュラヴァナがそう言って去っていた。戦闘の発音がおかしかった気がするが、気のせいか?
『あんた、相変わらず誰にでも突撃するわね。早死にするわよ?』
「俺が悪いわけじゃねえ、神側に問題がありすぎだろ! キャラが皆んな濃いんだよ、まともな神様なんていねえだろ!」
『そうね、まともな神様はいないわ。って私はまともよ!』
神の中で一番おかしい奴がなにを言ってるんだが……。
「洋一、危ないから大人しくしててよ。リーさんの上での制御って難しいんだから」
「えっいやいやいや、今のはヴァイシュラヴァナとアナスタシアが悪いだろ! 俺のせいじゃない!」
「洋一……」
うぐっ、蘭が冷たい目を向けてくる。俺が悪いわけじゃないのに、俺は大人しくしてたのにい! 如意棒でどつかれたのも俺のせいじゃないやい!
だが蘭の苦労を考えれば、後ろでわちゃわちゃしていた俺が、遊んでる様に見えただろうな。
「ごめんなさい……」
「お願いだから、大人しくしてね。落ちたら洒落にならない高さだから」
「おっおう。リーさんそろそろ着くのか?」
『後少しで着く。目の前の大きな山脈が見えるか?』
でけえ山だなあ。山は見慣れてるけど、富士山みたいなデカさの山が沢山あるぞ。この高さで見えるくらいだから、相当にでかいんだな。
「見えるよ!」
『妾の国はそこにある!』
はて? そことは一体……どの山だ?
「どの山?」
『見渡す限り全て!』
デカ過ぎだろ、あっあれかドラゴンサイズなのかな? 家とかもめちゃくちゃでかい感じで。
「スケールが違うな!」
『でっかー! 山でっかー!』
はしゃぐ俺とリュイとは対照的に、
「━━龍の巣か。強者がチラホラといるな」
「強い気配があるねえ、戦ってくれないかなあ」
バトルジャンキー達は、笑っていた。
「豪さんも、葵も戦いにいくんじゃないですからね? 仮に2人が戦い始めたら、洋一や、リュイ様や、アナスタシア様が危険に晒されますよ?」
その言葉に師匠は
「いっいやだなあ。僕はリュイちゃんとアナスタシアちゃんの護衛だからね! 無用な戦闘しないさ!」
手のひらを高速で返した。相変わらずリュイやアナスタシアに弱いな師匠、2人が人質に取られたら大変な事になりそうだ……。
「━━クックック。あちらさん次第だがな」
「豪爺い! フラグを立てないで!」




