第208話 リーさんショック
「龍人じゃない!? えっじゃあ俺なんなの? 尻尾生えたけど……」
まじかよ、俺はってきり龍人だと思っていたんだけど、もしかしてただ尻尾が生えただけの人間って事!?
「正確には龍人じゃないみたいだよ? 精龍人って出てるし。精龍人かなにかわかる? ゲームとか漫画とか洋一好きでしょ?」
「いや、初めて聞くよ。龍人、聖人、星人、廃人、灰人、屍人、焔人、なんての聞いた事あるけどさ」
星龍とか聖龍ならわかるんだがなあ。精の精だもんなあ……。リーさんならわかるかな?
「リーさんに聞いてみるか」
「それがいいかもね。洋一、リーさんを連れてくの? 危ないんじゃない?」
「それなあ。俺も思った」
リーさんも古龍とはいえこの世界の住人なら、神国の話題を出せば、母さんの様に具合が悪くなるんじゃないのか? 誰が聞いてるかわからない状況で、神国のワードを出すのも危険だしな。
とりあえず蘭にリュイ達が近づかない様にして貰おう。
「蘭、この世界の人達が近づかない様にしてほしいんだが、できるかな?」
「大丈夫よ」
蘭がそう言い俺の部屋から出ると、精霊達からブーイングが上がっている。ブーイングするなよ、お前等の為なんだぞ。
『だっ旦那様、人払いまでして妾を呼ぶとは……妾その初めてだから……』
頬を染めてくねくねするな!
「ばっ! なに勘違いしてんだよ! これから俺達が行く国についてだよ。禁忌の国に行くんだが、お前着いてくるの? 危ないんじゃないのか?」
『旦那様が妾を心配してくれる……!』
身体を抱きしめて、色っぽい仕草をするなよ。
「いやまじで、おふざけなしでさ。俺の母さんは具合が悪くなったし」
ふざけるのをやめたのか真剣な顔付きになるリーさん。真面目な顔をしてたら綺麗なのに。
リーさんが指をパチンと鳴らす
『外からも結界を張っているみたいだが、中からも念の為に遮音結界を張らせて貰おう。旦那様に問おう、禁忌の国、神の国、その国に挑むと言う意味がわかっているのか?』
「挑むとかそんな大それたもんじゃねえよ。神殿があるから行かなきゃならないだけだし、残りの神獣の無事も確認しなきゃならないんだ。それに蘭がきちんと創造神の加護を貰う為にも必要な事だしな」
リーさんが目をクワッと開く。
『ふむ……妾の威圧も効かんか』
「あー威圧してたのか? 全然わからなかったけど。急にクワッとやったから、なにかと思ったけど」
『なっ! それじゃあ妾が急に目を開けただけの馬鹿みたいじゃないか!』
めちゃくちゃ怒ってらっしゃる!? 理不尽過ぎるだろ。
「まっまあ急にふざけだしたとしか、思わなかったけど」
『とことん規格外じゃないか。話を戻すが挑む覚悟はあるのか?』
「あるよ。まあこれは俺の責任みたいなもんだしな」
リーさんが、頭を押さえて深いため息を吐いている。
『悟……すまんな約束を違えるやも知れん』
さとる? サトル? サドル? 悟? あれ悟さんって豪爺いの
「さとる? 黒岩悟さんの事か? まさかそんな訳ね……おわ! なんだよ急に!」
俺の呟きに、リーさんが超スピードで近付き俺の肩を掴む。
『旦那様よ、何故、悟を知っているのだ? 元いた世界での知り合いか? 疾く答えよ!』
俺をガクガクと揺さぶるリーさん。
「あぶぶぶぶぶ!」
揺らされ過ぎて喋れねえ! 心が読めるなら、今すぐ揺らすのをやめてくれええ!
『あっああ……すまん……すまん』
「はあ、はあ、はあ。リーさんさ、先ず最初に期待を裏切るようで悪いけど俺は、黒岩悟さんに会った事も無いし、顔も知らない、今いる場所も知らない」
俺の言葉にリーさんが項垂れる。あからさまに落ち込んでるな……。
『それならば、何故、悟の事を』
「それは俺の知り合いが悟さんの親族だから」
『悟の親族が生きている!? 時系列が合わないぞ! 妾を謀っているのか!?』
瞳が獰猛な野生動物みたいだな。
「んーちょっと待ってろ」
『なっ!』
「いいから」
文句を言おうとしてるリーさんを押し除け、俺は蘭を呼びに行く。
「おーい、蘭やーい、出ておいでー」
「変な呼びかけ方しないでよ」
蘭が俺の肩に停まり、耳を噛んでくる。
「痛たたたた!! 痛いよ! 豪爺いを呼ぶか、念話でリーさんと話させてあげて欲しいんだよ。なんかリーさん悟さんの知り合いらしいからさ」
「はあ。それは良いけど、自分の種族については聞いたの?」
「あっ忘れてた……」
「忘れてたって……次からは私も話し合いに参加するから」
それだけ言うと蘭が静かになる。多分豪爺いに連絡してるんだろうな。
「豪さん直ぐ来るって」
「直ぐ来るって近くにいたのか?」
「知らない。魔獣の森の家にいるって言ったら、直ぐ行くって言って念話が切れたんだもん」
━━ドゴン!
馬鹿でかい音が響く。俺と蘭は顔を見合わせる。
「豪爺いかな?」
「多分……」
「早過ぎないか?」
「豪さん転移スキルなんて持ってなかったと思うけど……」
「とりあえず外にいるだろうから、迎えに行くか」
2人で外に出ると、傷だらけの豪爺いが横になっていた。
「豪爺い!! 蘭、回復を!」
「わかってる!」




