第199話 次代の精霊王に俺はならない!
すっ凄くまともな挨拶だ、異世界に来てから、はちゃめちゃな挨拶ばかりだったからなあ。あっやばい名刺がない!
「すいません、今名刺がなくて」
『メイシ? ええ大丈夫ですよ。私になにか御用でしょうか? ステージの建設日が決まったのでしょうか? まっまさかもうステージが!?』
おっおう、後半ステージの事しか聞いてないぞ。
「あっあのステージはまだなんですが、邪神の勢力が活発になっていて、今精霊の方々に避難して貰っていまして」
クワッとメアさんの目が開かれる、美人だけど怖いよ! ホラー映画に出そうだよ!
『邪神、邪神、邪神、邪神、邪神、邪神、邪神、またあのドグサレ外道共が……私の邪魔を邪魔おおおお! 許さない、許さない、絶対に許さなああああい!』
絶叫と共にメアさんから闇の力が溢れ出す。怖いよ、めちゃくちゃ怖いよ!
『いつも、いつも、いつもおおお! 私の幸せを阻害してええ! なんの権利があああ! ちょっと聞いてるの!?』
「ひゃい! 聞いてます!」
『私は平穏に生きたいの。なのにあの蛆虫達と来たら、闇の力を寄越せだとか、闇の精霊なんだから力を貸せとか煩くて……! レイラと知り合ってから、お笑いを知ったのよ! お笑いは素晴らしいのよ! 漫才、コント、ギャグ、漫談、全てが素晴らしいのよ! それを邪魔するなら私が自ら邪神のアレを引き千切ってやる!』
お股がヒュンッてなったぞ……!
「それでその邪神を倒すまでは、魔獣の森か精霊界に避難して貰えたらなあ」
『嫌っ!』
食い気味に拒否されてしまった……。リュイ、アースなんとかしてくれええ!
『メア、魔獣の森にもステージを建てたら良いんじゃないの? 練習用舞台とかさ『行きましょう!』うっうん、行ってくれるって』
すげえ、一瞬で説得したよ。なんかめちゃくちゃ簡単にいっちゃってて、なんか負に落ちないんだけど。
「アース、凄いな。でもこれで光の精霊以外、皆んな揃ったな。全部集めたら願いを叶えたりしてくれるのかな?」
全属性耐性スキルとか実質、魔法攻撃に無敵じゃね? まあ師匠とか、大和さんとか物理で殴ってくるから意味ないけど。
『なんでヨーイチの願いを叶えるの?』
「いっいや、物語とかだとなんかあるんじゃないかなあって、ちょっと思っただけなんだけど」
空から馬鹿でかい光の球が落ちてくる。あっあの褌と筋肉は精霊爺いだな。
『ブシャシャシャ! ヨーイチ久々じゃな! 元気してたか!』
あっリュイとメアが俺のポケットに隠れて、アースは師匠のフードに潜り込んだな。やっぱり嫌われてるんだな。
「元気だよ、って言うか精霊爺い嫌われてるのか? 皆んな隠れたぞ?」
『ブシャシャシャ、まあ精霊の王じゃからな』
「なにしに来たんだ?」
『精霊の加護を沢山集めて、なにしとるんじゃ? 精霊王になりたいのか?』
「なりたくないけど、だって褌履かなきゃいけないんだろ? それに禿げてるし」
常に褌一丁で、頭頂部は禿げてるし、リュイ達に嫌われてるし。良い事が一つも無い。
『ブシャシャシャ! はっきり言う奴じゃの』
「精霊王様久しぶりです。精霊様を集めているのは、保護の為です。洋一が、精霊様達の言葉を聞けずに不便なので、加護を頂いているのです」
精霊爺いは自分の髭を撫でながら
『なるほどなるほど。だがのー光の精霊の加護だけは貰えんぞ? あれゃ特別な誓約があるからの』
光の精霊と言えば勇者だよな? 勇者じゃないから貰えないのかな?
「俺が勇者じゃないから?」
『正解じゃ。光の精霊の加護は勇者となるべく人間に送られる、この世界にはもういないのじゃよ』
そう言い師匠の方を見る精霊爺い。
「なんだよ、僕は爺いに興味はないよ。戦ってくれんならやるけど」
「待て待て! 亮は? 確か勇者だって名乗ってたはずだけど」
「彼は称号だけのカスだよ。力もなかったでしょ? 僕に簡単に負けてたし」
亮じゃだめなのか、まああの時の亮は力に酔ってただけろうしな。ガッツリ強制されたけど。
『指名されただけ、称号を与えられただけじゃダメなんじゃ。勇者と言う名は安くないんじゃよ。アナスタシア様が今まで転移、転生させた勇者は7人、どれも武勇、人望に優れた方々じゃった』
その中に豪爺いの息子さんもいるのか。アナスタシアは静かに精霊爺いの話を聞いている。
『ブシャシャシャまあ難しい話は終わりじゃ。でワシが来た理由じゃが、ヨーイチが次代の精霊王になりたいのかなって思ったから様子を見に来たんじゃ!』
「あー俺は次代の精霊王にはならないよ?」
『ブシャシャシャ、じゃあ用事はないな! まあならん方が良い、色々しがらみも多いからのう!』
「なあ精霊爺い、光の精霊に避難する様に言えないかな? 精霊界でも魔獣の森でも良いんだけどさ。邪神達が精霊を狙ってる節があるからさ」
精霊爺いは少し考えるような顔をして
『無理じゃなあ。今禁忌の国にいるから、ワシの力が届かん。ワシからの依頼じゃ、光の精霊を探しに行ってくれんか?』
「ああ、そりゃやるけど。あそこの国にはリュイ達連れて行けないから、師匠と俺と蘭とアナスタシアだけなんだよなあ。あっ精霊爺い、魔獣の森で精霊達を護ってよ! 俺達が光の精霊を連れてくるまでさ」
『ブシャシャシャ。相変わらず他者が優先なんじゃな、ならワシからのプレゼントじゃ』
精霊爺いの指先から淡い虹色の光が伸び、俺の頭に当たる。
『これで、一時的に光の精霊とも話せるようになるぞ。スキルと言う訳じゃないから、今回限りだがな』




