第20話 新たな始まり
♢
沢山の人の声がする。此処は暗い狭い怖い誰か助けて出……して、此処から出して。声は遠下がり又消えて行く。
貴方達の……を叶えるから…………だから私をここから出して。
また長い長い私の孤独。
私がなにをしたの?
私が悪いの?
誰か私に気づいて。
声にならない叫びを世界に私は叫び続ける。
ドシン
私以外誰もいない、誰も入れない筈の場所に誰かが上から落ちて来た。でもきっと私には気づかない。
期待はしない。
希望は抱かない。
私はもう疲れた。
♢
早見春流君に描いて貰った紗香です!
オーラバージョン!
エレン爺いを工房に寝かしてから、俺達は忘れ茸を探しに出ている。
レイ先生が前に忘れ茸を見た場所が川の上流にあるとの事で、皆んなでキノコ狩りに来ている。
「あるっこーあるっこー私は便器ー」
『べんきー!』
「洋一その歌やめて、気持ち悪い。リュイ様も真似しないでください」
蘭に怒られた、キノコ狩りにはぴったりだと思うんだがな。
「テテッテッテテ! いやっふー!」
『いやっふー!』
リュイはノリが良い、元ネタがわからないのにのってくれるし。
「2人は元気で微笑ましいじゃない、蘭ちゃん」
レイ先生が保護者目線で見つめてくる、ちょっと恥ずかしい。
「レイ、甘やかしたら洋一は際限無く調子乗るからだめよ」
蘭は相変わらず手厳しいな。甘やかしてくれてもいいんやで? 甘やかしたら伸びるんやで?
「あそこよ」
どうやらあの大樹の根本辺りが、レイ先生が忘れ茸を見かけたポイントらしい。レイ先生って良く木の見分けがつくな
、俺には木なんて全部同じに見えるのに。
「ダッシュだとう!」
俺は両手を広げ走り出す、5分もしないうちに足を滑らせてしまい、見事に転ぶ。
転んだ場所が運悪く斜面になっていて、ゴロゴロと転がる。
「うあああああ、助けてえええ!! とまらなああああい!」
ドシン
転んだ先にあった縦穴に俺は見事に落ちた。
「いててて。あちゃー結構深い穴だなー。これ出れんのかな? らーん! リュイー! レイ先生ー!」
声が反響するだけで、返事が聞こえてこない。穴はとてもよじ登れるものではなかった。広さもかなりある、奥には鳥居が視える? 暗いのになんでだろ?
ガキにされたのが完全に仇になっている。大人の身体なら、脱出できたかもしれないが。
「登れないよなー。野生のトラップとは、つくづく嫌な世界だぜ。蘭が気付くまで待機だな」
しかっし暗いなー。太陽の光も、ほんの僅かにしか入らない。
「とりあえず暗いし寝るかな」
遭難した時は慌てず騒がず、救助を待つのが吉だ。
━ジャリ
鎖が擦れる音が聞こえる。何処だ? 上!? 神社の名前が書いてある部分になんかあるぞ? なんだ? 吊るされてるのか?
目を凝らして見ると巫女の様な服を着た女性が鎖で両手両足を縛られている。
顔ははっきり見えないな……。とりあえず声かけてみるか
「おい」
あれ聞こえないのか?
「おーい?」
女性の身体が少し揺れた、反応があるって事は生きてるんだな。
「鳥居に吊るされてるって、お前なにしたんだ?」
悪い人じゃない気はするんだけどなあ。
「返事はなしか。とりあえずあの鎖が邪魔だな、小石でも投げてみるか」
小石で外れるかはわからないが、これも人助けだな。
「せーの!」
あっやべ! 顔に当たっちまった……。
「あっわりい……。次は鎖に当てるからっ!」
俺が投げた小石が全弾顔に命中する。まるで、顔に吸い寄せられるように。ブラックホールかな?
「中々鎖に当たらねえな、うーん剣は危ないしな。もうちょっとデカい石にするか」
さっきより大きい石にチェンジだ! どんどん投げよう!
「どりゃああああ!」
━━ガキン
右腕の鎖が砕け散る。
「やったぜ! この鎖でラストおおお!」
左腕の鎖が砕け散り、鎖の支えがなくなった人が地面に落下する。
━━ドシン
あちゃあ……受け止める事まで考えてなかったな。
あっ可愛い。暗くてよく見えなかったけど、美人さんだ。ちょっと顔に痣があるな、ごめんなさい。
「上手く助けられなくてごめんね? わざとじゃないんだよ?」
「ーーー/#○+¥☆<%^+○」
へっ何語だ?
「は?」
「ーーー/#¥%〒<○+¥☆<!!」
多分抗議の声を荒げているんだろうけど、全くわからん。服は日本の巫女服だけど……あっ目が紅い。充血かカラコンかな? 肌めっちゃ白いなあ、歳は16歳くらいかな? 真っ白い髪してるが地毛かな? 顔は可愛い、でも16歳にしては少し大人びた雰囲気だな。もっと上なのかな? 女性の歳はわからないぜ……
んー見れば見るほど鎖の跡が痛痛いしなあ。早く蘭に治して貰わないと。
「蘭の言語理解すら通じないなんて、うーん困った実に困ったなあ。 あっ! アレがあった!」
俺はアイテムボックスに手を入れる。レイ先生に貰った下級回復薬を探す。
女の人が警戒し後ずさる。どうしたんだろ? とりあえずこれを飲ますか。
「ポーション、ポーション飲みましょねー。怪我させちゃったお詫びだからこれ飲みなよ」
瓶に入った下級回復薬を渡す。中身が緑色だからか、警戒していて女の子に受け取って貰えない。
「とりあえず毒じゃないよ」
目の前で下級回復薬を飲んで見せると、安心したのか飲み始める。
「飲んで飲んで飲んで飲んでっ!」
とりあえずこう言う時はコールが一番! おお! 蘭の治癒魔法程じゃないけど治ってきたな。
「ふーこれでOKだ。よかったよかった。俺の名前は柊洋一! 宜しくな!」
女の子は呆気にとられている。回復した事にびっくりしたのかな? でもこれから先どうしよう、会話もできないしなあ。助けたは良いけど、俺も遭難してるようなもんだしな。




