第193話 チェリーボーイ
魔大陸、魔族、魔族なあ。ん? 魔族って言えば堺さんも魔族だよな? じゃああのニュータイプのアリメリアも魔族って事か?
「なあ蘭、アリメリアって魔族だよな? ニュータイプだけどさ。アリメリアなら、その場所がわかるんじゃないか?」
「そうだろうけど、洋一のお母さん達のところに置いて来たよね? 堺さんに聞いた方が早いんじゃない?」
堺さん直ぐに連絡つかなくなるんだよなあ。なにしてんだろ?
「それが堺さん応答してくれないんだよ。多分だけど、リア充だから合コンしてるんじゃないか? 羨ましいけど」
「うっうーん? じゃあとりあえず、アリメリアを螺貝で呼んでみたら?」
蘭の言う通りだな。とりあえず螺貝を吹くか。
━━ブオオオオン!!
空からホワイトホースが見える。ニュータイプは相変わらず行動が早いな。
ホワイトホースが俺を見つめている。多分また涎つけられるんだろうなあ、着替えたばっかりなのに。臭いからやだなあ……
「ちょっと! 不細工ボーイ! なんで私を置いてったのよ! あんたは魔王様との通信係でしょ? なんで私を置いて行くのよ!」
通信係ってなんだよ。俺は電話かよ、そんな係拝命してないぞ。仮に就任しているなら、給料よこせ!
「あっあはは。すいません、色々立て込んでて」
「すいませんじゃないのよ! 全く。今度はなんなの? ピンチの時に使いなさいって言ったでしょ?」
普通に怒られた、ボンテージ姿の人に怒られるって中々シュールだよな。
「あのー魔大陸の闇の洞穴って知ってますか? 知ってたら教えて欲しいんですけど」
少し考える仕草をしている……綺麗だな。ニュータイプじゃなけなればお付き合いしたいのに。
「もちろん知ってるわよ。ただあそこは崩落の危険があるから今は立ち入り禁止よ?」
えっ立ち入り禁止の理由って崩落なの!?
「危険って崩落だけ!?」
「不細工ボーイ! 子供や老人や力の無い人達が、間違えて入ったらどうすんのよ! 馬鹿じゃないの? 人間には常識がないの!?」
ごもっともだけど、異世界で、しかも魔法がある世界でこんな風に怒られるなんて思わなかった。
「子供達は好奇心旺盛だから、ちゃんと危ないって教えないといけないのよ。ねえそこの女神、あんた達魔族を野蛮だとか迫害してきたけど、私が見る限り魔族以外の人間の方が、よっぽど野蛮よ!」
うわー魔族から野蛮扱いされてるよ。アナスタシアどんまい過ぎる。涙目でプルプルしてるし
『そっそんな事ないわよ! 人族には愛があるわよ! 他者を思いやる気持ちがあるのよ!』
アナスタシアが言い返しているが、それは逆効果だろ。完全に論破されるパターンだぞ。
「それが魔族にはないって言うの? じゃあいいわ。あんた達を魔族の国に連れて行ってあげるわよ。闇の洞穴にも連れて行くわよ? どうする? それとも貴女はここで私に吠えるだけ?」
ほらな。アリメリアのあの自信満々な顔に発言、アナスタシア完全敗北だな。
『ふんぐぐぐぐ!!!』
すげえ顔してんな、般若みたいだ。師匠もアナスタシアを見ないように、視線を宙に逸らしるし。
「行くの? 行かないの? まあ貴女からしたら面白くないかもしれないわよお? 魔大陸の方が文明も進んでいるからね! オホホホホ!」
オホホホって笑い方初めて聞いたぞ。リアルでやる人いるんだな。
『ぐぎゃ! ぐぎゃ!』
アナスタシアがゴブリンみたいな顔をしながら、地団駄を踏んでいる。こいつ本当は女神じゃなくて、ゴブリンなんじゃないか? 女ゴブリン的な。
「不細工ボーイどうするの? 行くなら私が連れてくけど?」
「じゃあお願いします」
「だめー!」
なんでだよ! 連れて行ってくれんじゃねえのかよ!
「頼む時はそこの女神と二人で、くると回ってお願いパーリナイって言わなきゃだめよ? 常識でしょ?」
お願いパーリナイってなんだよ。まあ別に俺は構わないが、アナスタシアがやるかどうかだな。
『やるわよ!』
おお珍しくやる気だな。俺達は二人で華麗にターンを決め
「『お願いパーリナイ!!』」
「はいオッケー。じゃあいくわよー」
おい! なんで全力スルーなんだよ!
『やりきったわね!』
なんでアナスタシアは喜んでんだよ! めちゃくちゃ恥ずかしったぞ!
「洋一君、もうちょっと画学考えてよ! 撮影する側の気持ちにもなってくれないと困るよ! これだから汁ばかり飛ばす素人男優は!」
男優じゃねえ! 俺は断じてAV男優じゃない! AVの会社に履歴書送っただけだ! 好きな女優やら性癖やら書かされたけどな! 無駄に暴露させられて終わっただけだよ!
「あっ童貞には無理か」
「師匠だって童貞だろ!」
「やれやれだぜ」
肩を竦めてニヤニヤする師匠。イケメンだから様になるけど、師匠も俺と同じ童貞だからな。
俺は絶対師匠より先に、童貞を捨ててやる。
「ほらーそこのチェリー君達行くわよー」
『ねえねえチェリーってなに? ヨーイチや葵はチェリーって名前じゃないよ?』
あのニュータイプ余計な事を! 絶対に堺さんが教えた知識だ、間違いない。チェリーボーイがこっちの世界に、浸透している筈がないしな。
「はあ。アリメリアも洋一も葵もふざけてないで、早くしてよ。闇の洞穴にも行かなきゃいけないんだから」




