第188話 精霊を探せ
大和さんの作戦ナンバープランBにより、神国の場所はわかった。ケリュネイが驚愕の瞳でこちらを見ているが、突っ込むとややこしくなりそうだからスルーしよう。
神国に行く人も考えなきゃだし、ケリュネイに構っている暇はない。
「師匠と大和さんには来てほしいし……後は俺と蘭とアナスタシアか?」
「柊君、俺は別件で調べたい事があるから一緒には行けないぞ?」
おうふ、いきなり大和さんの離脱宣言、味方から出鼻をいきなり挫かれるとは思わなかった。大和さんは、頭をポリポリと掻きながら
「そんな顔をすんな。宗二の野朗を探さなきゃならんからな。葵でも勝てない相手が出てきたら、前にやった笛を鳴らせ。10分以内で助けに行くからよ」
鳴らしてから10分は持ち堪えなきゃならないのか……鳴らす場面になってからの10分って、かなりしんどい気がするが、仕方ない。
「まあ葵がいりゃなんとかなるだろーよ。葵多分神国ってところなら、全力でやっても大丈夫だぞ。外せ」
あれ? 前に師匠が全力をだしたら、世界がやばいみたいな話してなかったか? 大丈夫なんだろうか?
「えっいいの? マジ? いやーこれ付けながら動くの大変だったんだよね」
師匠がサルエルの裾をまくると、アンクルウエイトが付いている。あれかなり重いんじゃないか?
師匠が両手のパワーリストと両足のアンクルウエイトを外して地面に放り投げると
━━ズン
岩肌の地面に重りがめり込み、消えて行った。
「いやー軽くなった。でも本当にいいの? これ無理やり付けたの大和さんじゃん。お前はやり過ぎるからなんとかって言いながら」
大和さんは眉間にシワを寄せている。
「本来なら外す気はなかったんだがな。御使相手となると制限かけたままじゃ、遅れを取りかねない。お前、柊君達を護りたいんだろ? 護りたい者が出来たお前なら、正しく力をつかえんだろーよ」
師匠はそっぽを向いて大和さんの言葉に返事をしない。
「かー! 相変わらず素直じゃねえな! 柊君、蘭ちゃん、葵はまだ子供だ。道を間違える時もあるが、見守ってくれ。コイツは個人より世界を尊重して生きてきた、まあ俺のせいなんだが……だけど君達に出会って多少考えに変化が起きた、これは葵にとって素晴らしい事なんだ。だから頼むな、俺はもう行くからよっ」
大和さんはそう言って消えた。師匠を見ると、地団駄を踏んでいる。地面が揺れる……! 地震かよ!
「全くなんなんだよもう。で洋一君と蘭ちゃんと僕とアナスタシアちゃんだけで良いのかな? アナスタシアちゃん精霊が行くには厳しいんでしょ?」
『ひょわ! いきなり話しかけないでよ! そっそうよ、神国に光の精霊以外が入ったら、最悪存在が消えちゃうわ。だからお留守番よ!』
アナスタシア、いきなりって言うがお前が話を聞いていなかっただけだぞ?
「お留守番かあ、じゃあリュイ達は魔獣の森にいた方がいいのか? それともこっちにいた方がいいのか?」
『なんなら精霊界にいた方が良いわよ。邪神側の狙いに精霊の確保もあったんでしょ? なら隠すべきよ』
じゃあ母さんに保護して貰うって言うより、精霊爺いに保護して貰った方がいいのか。精霊爺いの呼び出し方なんて知らんけど
『ちょっちょっと待て! 貴方達話を進めるな! 何故神国の場所がわかった!? さっきの男は何処に消えた!?』
あーずっとスルーしてたからか、ケリュネイが大ハッスルしだした。ちょっと涙目になってるな。アナスタシアはケリュネイのデカイ声にびびって虎次郎の影に隠れちまうし。
「えーと大和さんの揺さぶりで、神国の記憶を思い出しただろ? その記憶を蘭が読んだんだよ。だから神国の場所がわかったんだよ。大和さんは、助けなきゃいけない弟子? 子供がいるから助けに行った」
掻い摘んで説明したが伝わるだろうか
『記憶を読んだだと!?』
あープルプルしながら怒ってるな。そりゃいきなり記憶読まれたら嫌だよなあ。まあかと言って他にあてがないからやるしかないんだけど。
「不躾がと思いましたが、私達も創造神様の依頼を遂行しなければならないので……すいません」
蘭がケリュネイに謝ると、ケリュネイは苦虫を噛み潰したような顔をしている。
『ぐっ……同じ創造神様の加護を持つ貴女だから、今回は特別に許します。あの男についてもわかりました、納得はできないが、我慢するとしよう。ヒイラギヨーイチ貴方は試練を乗り越え、私とアルテミス様の関係を問いただしたかったのではないのか?』
「あーまあさっき本人が出てきたしなあ」
ケリュネイとアルテミスの関係は気になるが、多分ケリュネイはアルテミスを売らないだろうな。だから大和さんと蘭も強引に記憶を見たんだし。
『アルテミス様が降臨されたのか!?』
ケリュネイの鼻息が凄い、吹き飛ばされそうになる。
「降臨はしてねえよ、映像のみだ。なんか私を助けないと世界が終わるみたいな事言って消えたよ」
『アルテミス様が助けを求めている!?』
ケリュネイの鼻息が更に強くなる。
「興奮しているところ悪いんだけど、アルテミスが今いる場所を言わなかったから探せないぞ! そもそも何処にいるかわからんし、わかってたらとっくに俺が乗り込んでたよ!」
最初から居場所がわかっていたら、確実に復讐しに行ってたからな。
『そっそうか……アルテミス様は無事なのか?』
「なんか薄汚れてたけど、めちゃくちゃ元気だったよ。こっちを煽る位にな」
『うすっ……! そっそうか生きておられるんだな……良かった。私は神国には行けないが、アルテミス様の居場所が分かり次第教えてほしい。私があの方を助けに行く』
そんなにアルテミスが好きなのか。
「ああわかったよ。居場所がわかったら教える、約束だ」
『絶対だからな。約束を違えたらお前の魂をすり潰すからな。私は貴方を認めよう、曲がりなりにもあの二人が認めたんだからな』
俺の玉がケリュネイに狙われてる。ケイナちゃん以来だぜ、玉を狙いに来た奴は! まあ救う前にぶん殴るがな。
「おっおう! 大丈夫だ、約束だからな!」
『何故内股なのかは分からないが、約束したからな』
ケリュネイがいなくなり、俺はリュイになんて説明するか悩む。リュイの事だからまた泣くよなあ……どうしたもんか。
俺が頭を抱えて悩んでいると
『あんた、他の精霊は大丈夫なの? 神国に行く前に水と闇の精霊の現在地だけでも知っておいた方がいいんじゃない? 光の精霊は神国にいるだろうけど。精霊は邪神側に狙われてるなら、精霊界に帰るように言うなり、あんたが魔獣の森で匿うなりにしないと危ないんじゃない?』
他の精霊がいる事なんてすっかり忘れてたあああ!
「アナスタシア、ありがとう! とりあえず他の精霊を探そう! ……でもどうやって?」




