第183話 心を読み 心に触れる
神殿に入ると中は、静まりかえっていた。中に入ると、奥から金と銀の瞳をして、髪が腰まである、鼻筋の通った美女が現れる。
俺に似て目つきは悪いな。お腹も大きく、大和さんが言っていたのはこの人かな?
「お客さんとは珍しいな。ケリュネイが通したんか」
美人さんは大和さん、師匠、俺と見て
「特上、上、下の下やな」
失礼な評価をして来た。
「私見ての通り身重なんや。だから戦いはできんで? おっおおー! アナスタシアやんけ! 珍しいなあ! あんたが来るなんて!」
疾っ! 目で追うのがやっとだったぞ! 大和さんの速さを見てるからなんとか、目がついていけたけど。おお、アナスタシアを軽々持ち上げてるぞ
『ああもう! あんたは! 降ろしてよ! いつも子供扱いして!』
「可愛いなあアナスタシアは。全くもう』
アナスタシアを降ろして、わしゃわしゃと頭を撫でている。完全に子供扱いしてるな。
『私達は神殿に用があるのよ! 邪魔しないでよ!』
「なんの用があるん? なんもないで?」
『あんたには関係ないでしょ!』
「邪魔しちゃおうかなあ……アナスタシアが名前で呼んでくれないと、神殿壊したりしちゃおうかな?」
ニヤニヤと笑いながらアナスタシアを煽る美人さん。
『あーもう、六華六華、六華、六華、六華! これでいい!?』
「そんなんに呼んで……うちの事好きなんやな! だけど堪忍やあ、うちもう結婚してるんや」
体をクネクネと動かしながら笑う六華さん、動きが怪しいと言うか古臭いと言うか。
『きいー! あんたはいつも邪魔ばかりして! 神威無効なだけでもムカつくのに!』
「洋一と同じ称号があるのかな?」
蘭は六華さんを鑑定をしないのかな?
「俺と同じかどうかはわからないが、この人も神威が効かないんだよな」
六華さんが、俺と蘭を値踏みする様に見てくる……正直綺麗な女性に見つめられると恥ずかしいんだが。
「ほー! あんたも神威無効かあ。珍しいなあ、うちと同じ様な人間初めて見たわ! うんうん、面構えも悪くないなあ。辛い事沢山あったんやなあ、よう頑張ったな!」
はっ初めてだ! 容姿を初対面で褒めてくれるなんて! この人は絶対にいい人だ!
「あっありがとうございます」
俺の頭を撫でると、直ぐに師匠の方へ向き
「うん? なんや照れとるんかい! あんた純情なんやなあ。可愛いやんか! そんで、そこのイケメン君、あんたけったいな人生送ってるやろ? 色々な世界の臭いがするで」
師匠を優しく抱きしめ
「あんたはよう頑張っとる! うちが認めたるからな! 誇ってええ!」
師匠は、目を丸くしている。多分めちゃくちゃ驚いてるんだろうな。
「そんであんたや。あんたが一番問題や! この子らの保護者やろ? 保護者やったらなんでこの子らこんなに傷だらけなんや? 厳しくするのも大概にしーや」
「あっはい、すいません……」
大和さんが謝った!?
「全く、バトルジャンキーなんもん大概にしいや。あーそれと、そこの魔王あんたもあんたやで!」
六華さんは、俺の背後を指し叫ぶ。
『うわあ。僕、あの子苦手なんだよなあ』
堺さんの声が聞こえる、俺の口を使っていないから、俺にしか聞こえないはずの声に
「苦手ってなんや! こんな子供に戦わせて、前世は知らんがこっちでは12か3やろ!? そんな子供になにさせとんねん」
『あっははいや、まあ……そのすいません』
堺さんも謝った!? 六華さん無双じゃないか!
「神獣ちゃんあんた名前は?」
「あっ私は蘭って言います。そこの柊洋一の家族です」
蘭を抱きしめ
「ええ子や! めっちゃええ子や! あんた、ええ女や、ずっと護ってきたんやろ? あの子が大好きなんやな。ものすっごく伝わってくるで」
頬ずりをしている。
「あっありがとうございます」
蘭が俺と同じ反応をしている、これは余程テンパってるな。でもさっきから伝わってくるってなんだ? スキルかな?
「ヨーイチやったか? うちのはスキルやない。元々ある力や、色々と見えてしまうんや。見たくないものまでな。だから普段は人に会わんようにこの神殿におるんや」
普段人に会わない様にってそれって辛くないのか?
「そんな顔しとると、男前が台無しや。あんたは優しい子やからなあ、旦那もいるし子供達も会いにきてくれるから私は大丈夫やで。やっと会えた子もいるしな」
俺の頭を優しく撫で笑う。
「あんたは良い男やな。地球でのあんたも見てみたかったわ」
地球での俺か……パーフェクトボディの俺を見たら惚れるぜ?
『あーもう! あんたは脱線ばかりして! とっとと祭壇に連れて来なさいよ!』
「ほんまアナスタシアには叶わんわあ。ほら行くで、足元見て歩きや」
六華さんはひょいひょいと歩いて行く。
「不思議な人だね」
「ああ、なんか懐かしいって言うか。なんだろ上手く言えないんだが、俺あの人好きだわ」
懐かしいって言うかなんだろう。うまく言えないけど……
「私も。なんか洋一に似てるのよね」
「俺に?」
「うん、空気の読めなさとか距離感とか、人の心の動きに敏感だったりとか、後匂いが似てるんだよ。鑑定もこの人にはしちゃいけない気がしたの」
鑑定をしちゃいけない気がした? それと俺と匂いが似てるってなんだろう?




