第181話 糞ビッチが現れた!
家族や友達を傷つけている。俺はこっちに来てから、何度蘭を傷つけたのだろう、蘭はそれでも俺に着いてきてくれているが……。
「そうですよね、俺がちゃんとしないと」
「まあそう言うこった……ん?」
大和さんが小脇に抱えている首が、マナーモードよろしくな感じで震えている。
「気持ちわりっ……魔核も潰したし、生きてはいないはずなんだが?」
大和さんが首を振り回している……血が飛ぶから正直やめてほしいんだけど……。
『振り回すな! ちょっとやめてよ! 映像がブレるじゃない! 誰よあんた! そっと置きなさい!』
大和さんの持っている首から、忌まわしき女の声が聞こえてくる。
蘭もその声を聞いて警戒モードだ。
大和さんは首を適当に放り投げる。
『そっと置けって言ってんじゃない! あーもういいわ。とりあえず私の映像出すから、首に触るんじゃないわよ!』
3つの目が開き、空に映像を映し出す。そこには、俺が恨んでいる糞ビッチの姿が映し出された。
「てめえ! 糞ビッチ! よくもムガッ!」
大和さんに口を抑えられ邪魔される。糞! 彼奴には、彼奴には言ってやりたい事が沢山あるんだよ!
暴れる俺を片手で抑える大和さん。
『あー!!!! 不細工男! それにそこのイケメン! 私の事封印して、良いと思ってんの!?』
糞ビッチの薄布はぼろぼろになっていて、小汚い感じになっている。
「ん? あー地球に帰る時邪魔してきた、馬鹿女だ。なんか薄汚れてるし」
師匠は、アルテミスを指差してケラケラと笑う。
『指差して笑うんじゃないわよ! こっちは今笑えないのよ! 御使もノーデンスに取られちゃうし! あの拐い魔め!』
ノーデンス? 誰だ?
「外なる神か……」
大和さんが、神妙な顔をして呟く。
「ムゴゴムゴ?」
外なる神ってなんだ? 神に内と外があるのか?
『あー! 私の蘭ちゃんが創造神に加護をつけられてる! おい不細工どうなってんのよ! あんたには特別強い力を混ぜて、若くしてあげたのに恩を仇で返しやがって!』
恩だと? あんなもんいるか! しかも若くしてやっただと!?
「ムームームームー!!」
『あーうるさい! それにそこのイケメン! イケメンだからってなにしても良いと思ってんの? 私レベルでも脱出に苦労したのよ!』
「うわーきっしょ。殺しとけばよかった」
師匠が舌打ちをしながら映像に石を投げつけてる。
『ちょっ! なにすんのよ! 石投げるんじゃないわよ!』
映像越しだから当たるはずがないのにびびってやがる。ざまあ!!
「で、お前さんはなにしに現れたんだ?」
大和さんもアルテミスにイライラしているみたいで、抑える手の力が、どんどん強くなってきている。痛い! 大和さんタップタップ!
『まっまあいいわ! 可及的速やかに私を助けなさい! ノーデンスがアンラ・マンユと組んで、世界をぶち壊そうとしてんのよ! 私が死んだら数ある世界の半数が消し飛ぶのよ!』
は? 別にコイツはむしろ死んでくれていいんだが。アンラ・マンユって確か悪神だよな、善悪二元論だったかな? この辺もうろ覚えだが……。
『それと不細工! ノーデンスはあんたの親なんだからきっちり責任取りなさいよ!』
は? 俺がノーデンスの子供だと? 人間じゃないって事なのか?
『なにその間抜けな顔? あんた知らなかったの? ノーデンスもあんたに説明しなかったの? ノーデンスが人間の中に入り、人間との間で出来た子供があんたよ』
外見は人間だけど中身がノーデンスだった? じゃあ人間とのハーフって事なのか? いや中身だけだから……どう言う事だ?
『まあいいわ。この話は終わりよ! とにかく早く助けなさいよ!』
アルテミスの映像が途切れたと同時に、大和さんから解放される。言いたい事だけ言いやがって、なんなんだよ彼奴……。?
蘭が俺の肩に飛び乗る。
「蘭、どうしよう俺人間じゃないかもしれない? イテッ!」
蘭に嘴で耳をかじられた。
「洋一は洋一でしょ? アルテミスがなにを言おうと、洋一は私の家族なんだから! しっかりしてよね」
「力入れすぎ! 耳が千切れるだろ! それに大丈夫だよ、俺はもう迷わないし、揺らがない。まあびっくりはしたけどな、ノーデンスの子供って言われても実感ないしな」
大和さんがニヤニヤしている。
「俺の説教のおかげだな、まー生まれはどうでもいいんだよ。問題は魂のあり方だからな、だが申し子って言うのがどう言う事かはわかって良かったじゃないか。柊君気にしてたんだろ?」
「大和さん鋭いですね。実はめちゃくちゃ気にしてました」
「皆んな気付いてるわよ」
えっ? なんで? 隠してたつもりなんだけどな。蘭は心が読めるからかな?
『ヨーイチはわかりやすから……』
リュイ起きてたのか?
「リュイ、大丈夫か? 無理しなくていいんだぞ。って言うか俺のせいだな、ごめんな。また迷うかもしれないけど、俺頑張るよ」
リュイはポケットから顔を出し、泣き腫らした顔で俺を見ている。
『ヨーイチのくせにカッコつけて……。アタチ達がいないと、なにもできないくせに!』
ウッ確かに間違ってない。俺がカッコつけると必ず落ちをつける。
「俺にもカッコつけさせてくれよ!」




