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鷹と一緒に異世界転生!〜相棒任せの異世界大冒険〜  作者: 貝人
第九章 神獣か聖獣か
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第180話 死者の言葉 生者の想い


 蘭を俺の手で殺す? アースやリュイや蘭を殺すのか? ジリジリと手の力が強まっていく。堺さんは、本気で殺す気だ。


『やめなさい! あんた最低よ! やっぱり魔王は所詮魔王ね! アースを離しなさいよ! 柊洋一、あんたを助けてあげるわ! 私の残った神力を全部使ってでも!』


 アナスタシアやめろ! 今のお前の力じゃ! 俺の身体は神の力は無効化されちまうんだ、殺されるぞ!


 堺さんはアースを離し、アナスタシアの方へ身体を向ける。


「『いいだろう。先ずはお前からにするか』」


 アースは意識を失っているのか、動かない。やめろ! やめてくれ! 


『懇願するだけで、叶うなら勝利君は死ななかったよね? 祈り願うだけで行動しない、人間の悪い癖だ。止めたないなら、自分の意思で立ち上がり、止めてみなよ。簡単だろ? 自分の身体なんだから』


 堺さんが俺に直接語りかけてくる。


 俺の身体、俺の心、俺は……仲間を殺したくないし、堺さんにも殺させたくない。


「お兄ちゃん、宗二お兄ちゃんも助けてあげてね」


 勝利君の言葉は他人への願い


「貴方は、過去に囚われないで未来を生きなさい」


 ロザリアさんの言葉は俺の未来への願い


「洋一、頑張りなさいよ!!」


 義母さんの強い言葉は俺への期待


 三人に背中を押された気がした。


 俺の身体を返せええ!!! 


 心の中で叫んだ瞬間、身体中に自分自身の意思や力が行き渡る。


『おお、凄い力だ。そろそろ頃合いだったけど、僕を押し除けるとは……』


「はあ、はあ、はあ。取り替えしたぞ……! これで誰も殺させない!」


 手をグーパーと握り、自分の身体が動かせるのを確認する。


『あっあんた大丈夫なの?』


 アナスタシアありがとうな。


「大丈夫だよ、アナスタシア悪い心配かけ」


『目を覚ませえ! くらえええ!!! 土棒(アースロッド)


「アッー!!!」


 土の棒が俺のズボンとパンツを貫き、肛門に突き刺さる。


『痛そ。僕が支配してる時じゃなくて良かった』


 堺さんの呟きが聞こえた気がした。


『アース! だめよ! もう魔王の支配は解けたんだから! どうしよ、この棒抜いた方がいいよね? よっよし!』


 待てアナスタシア、やめろ! 棒に触れるな! デリケートなんだ! それを触っちゃ……!


『いくわよ! せーの!』


━━ズボッ


「ぎゃああああああ!」


 アナスタシアに力任せに引き抜かれた……。酷い、私汚されちゃった……もうお嫁に行けない。


「蘭ちゃんは、なに落ち込んでんだ?」


 大和さんは蘭の横にドカリと座る。蘭、落ち込んでいるよな、でも今の俺じゃなんて声をかけていいかわからない。


「大和さん……私、無力ですよね。洋一が堺さんに支配されて、でもそれは洋一の為にはっぱをかけたってわかっていても……」


「納得できないわな。まーあれだ、魔王がハッパかけなかったら、柊君は潰れてたぞ? だから俺も葵も手を出さなかったんだしな。それに攻撃なんてできる訳ないだろ? 蘭ちゃんと柊君は家族なんだろ? そう簡単に割り切れるもんじゃねえさ。逆に割り切れちゃったらまずいぜ?」


「でも助けられなかった……助けたかったんです!」


 蘭、思い詰めさせちまってごめんな……。


「なら次は助けてやれば良い。鷹匠は人間と鷹二人が揃わなきゃ出来ないだろ? 二人で強くなって進めば良い。今回の件はまあ勉強だと思いな」


 大和さんは、蘭を撫でながら笑っている。俺以外で蘭を撫でれた人って大和さんが初じゃないか?


 それに大和さんや師匠が手を出さなかった理由は、堺さんの意図を読んでいたからなのか。


 堺さんは、俺が折れないように、あんな事を?


『君に託された思いは、亡くなった人達意外にも沢山あるんだよ。君はこれからもっと失うかもしれない、それでも君は立ち止まれない、いや立ち止まってはいけない。それを覚えておいてね』


 それだけ言うと堺さんの気配が消える。


 大和さんが、いつの間にか俺の隣にいた。動きはやっ! 全然見えなかったぞ。


「蘭ちゃんの次は柊君の番だ。そもそも身体の支配圏を奪われるなんて、敵だったら全滅してたぞ。魔王にやる気があったら、直ぐに全員血祭りにあげられてたんだからな? きつい場面だったとは思うが、ここは地球じゃない世界なんだ、これから先もこんな場面は必ず増える」


 大和さんの視線は鋭く冷たい。


「だが俺達は、背負って歩いていくしかないんだよ。戦いの螺旋に加わったんだ、死ぬまで降りる事はできない。だから自分が死なず、仲間を死なさいようにしなきゃならねえ。死者に頼らず、生者を見て生者を頼れ。じゃないと死者も浮かばれねえだろ?」


 死者に頼らずか……ロザリアさんや母さんや勝利君に助けられるようじゃダメって事だよな。


「後な、これが一番大事だ。心を揺らがせて家族や友達を泣かすんじゃねえ」


 大和さんに拳骨を落とされる。頭の痛みよりも心の痛みの方が痛かった……。


「創造神や、バステトや麻友、ソキンやアユウだってお前に期待してるんだからよ。そろそろカッコ良くなろーや! いつまでも魔王や女に助けて貰ってちゃカッコつかねえだろ?」


「そうですよね、どうにも人の死に慣れなくて」


 大和さんに再び拳骨を落とされる。


「馬鹿野朗、人の死に慣れろって話じゃねえよ。もっと良い男になれって話だよ」

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