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鷹と一緒に異世界転生!〜相棒任せの異世界大冒険〜  作者: 貝人
第九章 神獣か聖獣か
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第177話 螺貝の音が呼ぶ者は


 俺が見ているのは勝利君の魂? もがき苦しみ血の涙を流している彼が魂だって? 今正に俺に助けを求めているのに?


「ちっあう……あれは」


 アナスタシアが俺の前に来て、服の襟を掴み俺の顔を近くに寄せ


━━パンッ


 頬を叩いた。


『ちゃんと見なさい! 痛かったでしょ? 蘭は優しいから手を出さないけど、私は叩くわよ。あの気持ち悪い堕天使があんたを狙ってんのよ! だからあいつもあいつも戦ってるの! リュイちゃんがあんたに電撃した意味をわかりなさい!』


 ジンジンとした痛みよりも、アナスタシアが初めて悔しそうな顔をして、顔をしかめている。


『その護り刀はなに? 貴方のポケットや背にいるのは誰? 目の前であんたが錯乱して傷ついたのは誰? あんたには護るべき人がいるのよ! 私だって悔しい! あんな風に魂を歪められて、混ぜられて! その元凶がいても私は戦えない……戦えないのよ!』


 アナスタシアの手の力が抜け、俺に縋るようにして泣く。泣きながら俺の胸を叩く。


『あんたは、あんたは弱くても戦えるじゃない……なのに、なのに……』


「ごめん、皆んな。蘭……一緒に行ってくれるか?」


 涙を拭い、敵を警戒している蘭に声をかける。


「全く世話がかかるんだから。女の子三人に励まされないと動けないなんて……もう行くよ! 勝利君の魂を助けたいんでしょ?」


 今ここで出来る事はない。大和さんの加勢に行ってあの女を倒さなければ


「ああ! 行くぞ!」


 俺の紋章と蘭の紋章と虎次郎の紋章が紅く光る。悪い感じはしないから、今は置いておくしかない。考えてもわからんしな。


「洋一……?」


 蘭が不思議な顔をしているが、虎次郎にアナスタシアを護る様に頼む。


「虎次郎、アナスタシアを頼んだぞ!」


「ガウッ!」


 虎次郎がアナスタシアを背に乗せる。虎次郎の癖になんかカッコいいな、無駄に頼もしいし。


 蘭を肩に乗せ、薙ぎ倒された木々の方へ走る。吹き飛ばされた筈の師匠が剣を杖代わりにして立っていた。師匠の足元には血溜まりができている。


「こっから先は大和さんの戦闘区域だ。下手に入らない方が身のためだよ? 俺のこの腹見てよ? ガードしたのに傷だらけだよ」


 師匠の腹の右部分がえぐれていて、血が垂れている。


「葵! 今浄化と回復するから!」


 蘭が師匠の側に行き回復魔法と浄化魔法をかけている。なんで浄化魔法を? バイキンでも入ったのか?


「蘭ちゃんありがとう、手持ちの回復薬を全部使ったけど、この傷呪いも不可されてるから中々治らなくてね。僕のレベルでこれだよ? 洋一君なら一撃で消し飛ぶよ」


 一撃で師匠を呪い状態にして傷をつくる相手。今まで師匠が、大怪我をしているところなんて見た事がない。


 蘭の回復魔法と浄化魔法で傷が塞ったかに見えたが


「呪いが強過ぎて……!」


 蘭が悔しそうな声を漏らすと、治った場所から血が噴きだす。


「やっぱりかー魔人系の呪いは専門外だしなあ。多分術師のあの女を大和さんが殺しても、解けないだろうなあ」


 ぽりぽりと状況を分析しながら話す師匠。


『あーあーもしもーし柊君聞こえるかなー? 試練終わったんでしょー? もしもーし』


 堺さんの声が頭に響く。


「堺さん! 師匠がピンチで回復しても血が出て、やばいんです!」


『あーうん。全然わからないけど、とりあえず回復してもダメなら呪いの筈だけど……そうすると神を呼んでも無駄だろうし「そう呪い! それなんです!」人の話をちゃんと聞こうね? 焦ってるのはわかるからさ』


 堺さん悠長にしている場合じゃないんですよ! 明らかに致死量だよあの血は!


『アリメリアを呼んでごらん。彼いや彼女はニュータイプだから』


「アリメリア? そんな奴いたっけ?」

 

 いや待てニュータイプ? ニュータイプってまさか。


 俺が混乱していると、蘭が俺に向けて螺貝を投げてくる。


「洋一! 早く吹いて! 螺貝使った事あるでしょ!」


 いや確かにイベントで螺貝を使ったことはあるんだが、まだアリメリア? って人がいまいち思い出せないんだが、ええい!


━━ブォオオオオン!


 螺貝の音が響くと、空に魔法陣が描かれ、魔法陣から白い角が生えた馬が飛び出してくる。競走馬の様な力強い体躯に、白く美しい毛並み。


 白馬の背には、見た事がある赤いボンテージ姿の魔族が乗っている。


「この状態で敵かあ……ちょっと厳しいけど」


 師匠が臨戦態勢に入ろうとする、やばい止めなければ


「師匠! このオカマさんは味方! 師匠の呪いを多分解ける人!」


『私は魔王軍四天王! ホワイトホースに乗るニュータイプ、アリメリア! 貴方ピンチなの!?』


「あっあのピンチと言うか『やだ! イケメンちゃん! 貴方呪われてるじゃない! 今解呪してあげるわ! ほら不細工! 貴方は私のホワイトホースを見てなさい! 鳥ちゃんは浄化魔法をやめて、ひたすら回復魔法をかけて! 精霊ちゃん! 鳥ちゃんに魔力を渡して!』あっはい……」


 アリメリアのキビキビとした指示が飛ぶ。リュイは文句も言わずに蘭の背に乗り魔力を渡しているし、蘭はリュイの魔力を使いながら回復を続けている。


 俺はホワイトホースと見つめ合う、ホワイトホースに鼻で笑われてしまう。何故だ!


『アリメリアのホワイトホースは可愛い女の子が好きだから仕方ないさ。僕にも平気で唾を吐きかけてきたしね』


 魔王にすら唾を吐きかけるってどんな馬だよ!


「ほっホワイトホースとりあえず治療が終わるまで仲良くしようぜ?」


━━ペッ


 この馬あああああああ!!

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