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鷹と一緒に異世界転生!〜相棒任せの異世界大冒険〜  作者: 貝人
第九章 神獣か聖獣か
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第176話 錯乱×喪失×狂気


 大和さんと攻撃が衝突した後、勝利君は動かない。折れた剣から手を離しその場に佇む。勝利君が使った技はフレアイグニッション、かつて俺が使った技。まああくまで、邪神の力ありきだったが……。


「フレアイグニッション。洋一君には話してなかったけどあれは宗二の技なんだよ。本当の勇者である宗二のね」


「師匠が認める本当の勇者……」


 大和さんが倒したって言う昔の教え子の技。だから大和さんはさっき……使い手や武器がって話をしたのか。


 閻魔羅刹剣(えんまらせつけん)と雷呀の関係も気になる、あれって神獣じゃないのか?


「あー、あー」


 勝利君が声を出す、魔眼が酷く痛む。勝利君の中の魔力が膨れ上がっていく。俺は目を押さえながら


「大和さん、師匠、蘭、勝利君の魔力が膨れ上がってる!」


「チッ。柊君には悪いが狩らせてもらう! 破ッ!」


 大和さんが駆け出し、勝利君の首に向けて剣を振るう。


 ズルリと勝利君の首が落ち、勝利君の胴体は力なく後ろに倒れる。


「あっあ……」


 俺は腰が抜けてしまう。助けられなかった事が、勝利君が死んだ事実が飲み込めない。


 リュイを見ると、リュイは顔を背け震えている。俺はリュイをポケットに入れ、その光景を見せないようにしする、それが今の俺がリュイに出来る精一杯だから。


 蘭の方向を見ると、蘭は勝利君とは別の方向を睨みつけ、師匠もまた蘭と同じ方向に剣をむけ警戒している。


 大和さんは、勝利君の遺体に自分のシャツを被せ、勝利君の開いた瞳孔をそっと手で閉じ


「胸糞悪い事させやがって……。宗二の仕業にしちゃあお粗末だな。なあ御使さんよお、あんた誰の差し金で動いてんだ?」


 大和さんが誰かに向けて大声で話しかける。

 

『あはあはあはあはあはあはあ』


 甲高い笑い声が響く


『アタシのアタシの可愛い可愛い坊やを殺した殺した殺した殺した』


 聞いてるだけで不快感を覚える声


『アタシの坊や、坊やあああははは、あんなにい混ぜても、お母さんお母さんって泣いていた坊やあああ、帰りたい帰りたいって泣いていたあ可愛い坊やああ。アタシの寵愛をうけた可愛い坊やの魂いいい』


 声は喚き続けている、勝利君が泣いていた? 帰りたいと言っていた?


「洋一君! 戯言だ聞くんじゃない!」


 師匠がなにか言っているが……


『アタシの言葉を信じて健気に耐えた坊やはもういないいい、アタシが復讐してあげるう、坊やの悲しみい痛みいい、助けてって言ってたのにねえええ。申し子に助けてって言ってたのにねええ! 申し子のお仲間に殺された可哀想な坊やああああああ』


 俺に助けを求めていた?


『中途半端な、きぼおおおおがあああ坊やを苦しめたあああああ。申し子おおおねえ? 今どんな気持ちいいい? 見せてあげるうう』


 空に映し出された映像、それは勝利君が嬲られ弄られ、責め苦を与えられている光景。血反吐が飛び、糞尿を漏らし痛みに呻く勝利君の姿。次々と魔物や魔人を身体の中に無理やり入れられ、容姿が変貌していく。


「助けて」


「やめて」


「痛い」


「苦しい」


「家に帰りたい」


「殺さないで」


「許して」


「ぎゃあああああああああ!」 


 勝利君が大きな悲鳴をあげる。空虚な瞳で口が動く。その口の動きだけで伝わってしまった、わかってしまった。悲痛な叫びが


「助けてお兄ちゃん」


「あああああああ!!! しょうりいいいい!」


 俺が絶叫すると同時に大和さんが跳躍し、空に映し出された勝利君の映像を蹴り砕く。


『あははあはあは』


 蹴り砕かれた空間から、黒い羽を背につけ額に眼がある異形の女が現れた、その容姿は黒いゴシックドレス、頭につけたティアラには鈍色の石がはめられていて、両腕と両足には包帯が巻かれ、血が滲んじでいる。


「殺してやる! 降りてこいクソアマああああ!」


『申し子のおおお命令ならあああ直ぐにでもぁお』


 異形の女が空から降りて来た瞬間、師匠が斬りつける。


「死ね」


 短い言葉に載せられた尋常じゃない殺気、異形の女は両翼で師匠の剣を防ぐ。


『あなたはああああ邪魔ああああ』


 師匠が軽く吹き飛ばされ、地面を転がる。


「おっとこれ以上お前を柊君に近づける訳にはいかねえなあ」


 大和さんが異形の女を蹴り飛ばす。異形の女は木々を薙ぎ倒しながら飛んで行く。


「洋一! 落ち着いて!」


 蘭が俺の側に飛んで戻ってくる。


「早くあいつを殺さないと……! 勝利君を助けないと!」


「洋一! しっかりして! 勝利君はもう死んでいるの!」


 今も(・・)あんなに苦しんでいるじゃないか。今俺が助けてやるからな!


━バチッ


 身体に電撃が走る、攻撃? いや違う異形の女は遥か向こうにいる。じゃあなんだ? いや構うものか早く勝利君を助けないと!


━━バチチチチチチチチ


「ぐあっ!」


 さっきよりも更に強い電撃をくらう。意識が飛びそうになる、身体が痺れて思うように動かない。


『ヨーイチ! しっかりしてよ! 蘭やアタチやアナスタシア様を護るんでしょ!? 護ってくれるんでしょ!? ヨーイチが見ているの生きてる勝利君じゃない! ヨーイチが見てるのは死んだ勝利君の魂なんだよ! 気付いてよおお!』


━━バチチチチチチチ!


 リュイの叫びと共に一際大きい雷が俺を貫く

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