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鷹と一緒に異世界転生!〜相棒任せの異世界大冒険〜  作者: 貝人
第九章 神獣か聖獣か
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第169話 母と父


 なんなんだよこの記憶、親父が変な言葉を言ったかと思ったら母さんも倒れちゃうし、さらに俺は母さんと親父の子供じゃない? じゃあ俺の親は……


「洋一、見ているんだろ? お前は平和に生きられなかったって事だな。お前の出自について語ってやる事はできない。すまない」


 親父は俺を真っ直ぐ見ながら頭を下げる。


「なっなあ、親父答えろよ! 俺の母さんは母さんじゃなかったのか? 偽りの家族だったのか! 母さんが死んだ時あんた何処にいたんだよ!」


「すまない。語る事はできない、彼奴には済まない事をした。力の影響が強過ぎて、心を壊してしまったんだ、お前が悪いわけではない。悪いのは私だ」


「おっお前が……! ふざけんな糞親父!」


 親父に掴みかかろうとしたがすり抜けてしまう。


「すまない。お前も若い内に死んじまったのか……すまない。俺がお前を護ってやれれば……」


 怒鳴りつけようと思ったが親父の泣き顔を見て声が出なくなってしまう。


「すまない、洋一、すまない……」


「おっ親父……くそ! なんなんだよ、今更! 俺にどうしろって言うんだよ!」


 親父が真っ直ぐ俺の目を見て


「異世界でも何処でもいい、生きてくれ、ただそれだけ……


 親父の言葉が途切れ真っ暗な空間に戻される。


「なんなんだよ、チクショオオオオオオオ!」


『邪魔が入リマシタが次デス』



 ここは母さんがいた病院?


「あはははは、私は母、母なの、洋一、洋一、洋一」


 母さんは俺を見ずに人形に話しかけている。病院に入院してから母さんの具合は、どんどん悪化していった。


「洋一、洋一、洋一」


 母さんがこちらを見た、見えるはずがないこちらを。親父は例外だとしてもなぜ……


「あああ! 洋一! 私を殺しにきてくれたのね! やっと解放される! ありがとう、ありがとう洋一!」


 俺が母さんを殺す? そんな事出来るわけがない。声を出そうとしてもうまく声が出ない。


 母さんの声を聞きつけて、看護婦と医者が入ってくる。


「洋一がいるの! 私を私……」


 看護婦に抑えられ、注射を打たれた母さんはそのまま眠ってしまう。


 その後母さんの容体が悪化し母さんはそのまま息を引きとった。


「洋一ごめんなさい。私は貴方の母親ではないの。母であろうとしたんだけどね、私失敗しちゃった」


 不意に後ろから声がする。


「私頑張ったんだけど、頑張りが足りなくてね。悪いお母さんだったね、こんな姿まで貴方に見せて」


 そんな事はないと否定しようにも声が出ない。


「貴方はただ愛されたかったのよね。だけど私にはできなかった……叔父さんは厳しかったでしょ? 役場での仕事は大変だった? 私は貴方になにもしてあげられなかったわね」


 違う違うんだ……そうじゃないんだ


「かっ母さん……」


「私をまだ母と呼んでくれるのね。ありがとう洋一。貴方親不孝よ? 私の年より若く死んでしまうなんて……。そちらの世界では友達はできた? 貴方色々やらかす割に内気だったから」


「死んじゃったのはごめんなさい……。俺地球では上手くいかなかったけどさ、こっちで友達できたよ、精霊や神様やそっちにはいない人達ばかりだけど……」


 俺の言葉が詰まると母さんに抱き締められる


「私は貴方の母親ではないのよ。血の繋がりもましてや、育ての母とも言えない、愚かな人間。そんな私に謝る必要はないの。ただ貴方には、地球で幸せになって欲しかったの。私が言っても信憑性がないけど、本当の気持ちよ」


「あっああっあ……」


 涙が溢れ、感情が乱れ、言葉がうまく出てこない。初めて聞いた母の優しい言葉。


「泣き虫は小さい頃と変わらないのね。その姿を見ていると、私が見ていなかった貴方の成長を見れるようで嬉しいわ」


 母さんに優しく頭を撫でられる。こんな事をして貰えたのは初めてかもしれない。


「そろそろ時間みたいね。洋一頑張りなさいよ!」


 最後に母さんは、俺の背中を押して消えていく


「母さああああん!!」


 なにもきちんと答えられなかった、伝えられなかった。母さんは精一杯伝えてくれたのに。


「糞親父いいい! 見てるんだろ! 出てこいよ!」


 俺の声が闇に吸い込まれて消えていく。


『次デス』



 景色が変わる。


「ヨーイチちゃん、なんでもっと早く来てくれなかったの?」


 ロザリアさんの声が耳にこびりつく。


「お兄ちゃん、どうして僕を助けてくれなかったの?」


「小僧、なぜ助けてくれなかった?」


「「「どうして、どうして」」」


 俺が助けられなかった人達の悲痛な叫びが聞こえる。


「なんで貴方は生きてるのかしら?」


 己の無力差をマジマジと見せつけられる。助けられずに亡くなってしまった人達が、怨嗟の念を俺にぶつけてくる。


「貴方も痛みを味わいなさい」


 腕が斬り落とされる痛み、足が斬り落とされる痛み、首が斬り落とされる痛み、焼かれた痛み、頭を貫かれた痛み、頭を砕かれた痛み、瓦礫に下敷きにされた痛み、刺された痛み、ありとあらゆる痛みが襲ってくる。頭がおかしく……


「貴方も悲しみ味わいなさい」


 家族を失った悲しみ、大切な人に会えない悲しみ、喪失感、悲壮感、様々な悲しみや苦しみが心に襲いかかる。


「ああああああ!!!」


 余りの痛み、苦しみ、悲しみに俺はたまらず絶叫する。目からは血が流れ、鼻血は垂れ、口から嘔吐が溢れ出す。


━━パチンっ


「趣味が悪いわん、暗殺ギルドの奴等でもこんな事はしないわん、ヨーイチちゃん久しぶりね。関係性が薄い私達の為に随分と傷つけてしまったわん、ごめんね」


 誰かに抱き締められる。俺はその誰かに縋り付いた。

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