第168話 ロッカーに閉じ込めないで!
ひたすらに筋トレをさせられた、しかも俺の意思を無視して強制的に訓練を続行させられる。スタミナポーションで、疲労を瞬時に消されて延々と繰り返される拷問のような時間。
「もっもうやめて……」
『すごっ。こんな無茶苦茶な筋トレに耐え切るなんて……俺なら絶対に無理』
めちゃくちゃハードな筋トレをさせた側が、ドン引きするなんておかしいだろ! ソキンさん眼鏡がずり落ちてるよ!
『ソキン眼鏡落ちるぞ。あーじゃあとりあえず、第二試練も突破おめでとう! 第三試練はこれを着てもらう!』
今度は水泳帽と水着を渡してくる。
「これを着たらまた強制的に……」
『いいから早く早く』
更衣室と書かれた看板がついた、ボロ小屋が現れ、アユウさんにボロ小屋に入れられる。
「これは着替えなきゃいけないパターンだよなあ」
俺は体操着から水着に着替え小屋から出ると、そこにグラウンドは無く、25mプールが建設されていた。
「なんじゃこりゃあああ!」
俺がプールの方へ走ろうとすると
━━ピーッ!
『プールサイドを走るんじゃねえ! 先ずは準備体操からだ!』
確かにプールサイドは走るのはダメだが……ここ異世界だろ? まあ異世界にグラウンドやらプールがある時点で既におかしいんだが。
『えっと飛び込み禁止ね。色々な泳ぎ方するから頑張ってねー』
ソキンさんがプールの監視員席から手を振っている。
『よーい! 始め!』
それから俺は、バタフライ、平泳ぎ、クロール、背泳ぎ、神銃流、小堀流蹴水術、山内術、神伝流、水任流、岩倉流、能島流、小池流、観海流、水府流水術、向井、流水術、向井流水法……様々な泳法を強制的にやらされる。少しでもぎこちないと水着に判断されると延々と繰り返される。
「はあ、はあ、はあ、なんなんだよ……知らない泳ぎ方まで……」
『次はどうしようかなあ。ソキン、なんかない?』
『そもそもなんでヨーイチは試練を受けたいの? 別にこの試練クリアしたって、報酬ないよ? 金銀財宝もないし』
ソキンさんが不思議そうな顔をして質問してくる、理由かあ
「ケリュネイからアルテミスの糞の事を聞き出す事」
『それだけじゃねえんだろ?』
それだけじゃない、俺は……俺は
「強くなりたいから……レベル1にまで戻ってみんなの足手纏いでしかない、自分の状況を変えたいから!」
『そっか。じゃあ肉体訓練も終わったから次は精神訓練しようか、心技体の体はできてきたしね』
「それなら先ずは精神訓練からなんじゃ……」
俺の言葉にアユウさんの顔が凍りつく
『えっ……ソキンそうなの?』
『えってアユウの好きな漫画にも書いてあるじゃん』
『いや……だいたい肉体の修行だけだったような……』
『アユウまさか龍玉を参考にしたの?』
『おう! 次は重力空間にしようと思ってたんだけど、普通に重力空間に送り込んだら死んじゃうから悩んでたんだよね』
俺はサイ○人じゃないんだぞ! だいたいそんな修行あの漫画の地球人もやってないぞ!
「あっあの俺チートとかないし、普通の地球人なんですけど……」
『あちゃー』
あちゃーって! 確かに何人かとか、チートがあるとか聞かれなかったから言わなかったけど!
『まあとりあえず精神修行ね。扉の試練をクリアしてるからやる必要がないかもだけど。まあそこのロッカーに入ってよ』
この掃除用具入れに入れと!?
「なんかちょっと臭いんですが……」
『いいからいいから』
グイグイ押してくるアユウさん。
「やっちょ! 押さないで! マジで臭い!」
『一名様ご案内ー!』
暗い狭い臭い! マジできつい! なっなんでこんな……うわっ! 足が沈んでいく
「たった助けてー!」
♢
見渡す限り真っ暗な空間。心無しか少し寒い。
『ココデは貴方のトラウマが再現サレマス』
機械的な音声……ソキンさんやアユウさんの声じゃないな。
「トラウマが再現って……嫌って程今まで色々経験してきたからな。望むところだ!」
『では先ず一つ目』
♢
小さい子がソファーの影で泣いている。あれは幼少期の俺? なんで泣いているんだ? こんな家見た事ないぞ?
━━ガシャン ガシャン ガシャン
皿が割れる音が連続して聞こえてくる。
「あんたが! あんたが悪いんじゃない!」
女性の叫び声が聞こえる。これは母さん……?
「あんたがこの子を連れてきたんじゃない!」
連れて? えっ?
「私に全部押しつけて! あんたは良いわよね! 修行修行修行って頭おかしいんじゃないの!?」
待てなんだよこれ、俺は知らない、こんな会話も怒り狂う表情をした母さんも。
「あんたのせいよ! この子が変なのも! あんたは見てないからわからないのよ! 気持ち悪いのよ!」
俺が捨て子で、親父が拾ってきて母さんに押し付けた?
「あんたの目当ては鷹匠としての血筋でしょ? 私に愛情なんてないじゃない! 良いわ、この子を殺して私も死んでやるから! 見てなさい!」
母さんが包丁を持ち俺に走り寄る。
「洋一、あんたと一緒に私も死んでやるわよ。それが私にできるあんたへの手向よ!」
包丁を振り上げる母さん
「|सो जाओ और पता है कि तुम अपनी मां हो《眠れ、そして自覚せよ、自分が母だと》」
親父が何かを呟くと、母は糸が切れたようにその場に倒れる。親父は俺の頭に手を添え
「悲しいな。洋一よ願わくば平和に生きてくれ|स्मृति मिथीकरण《記憶改竄》」




