第165話 きゃー! 洋一君のエッチ!
水浸しにされムカついたので青いドアを蹴り付ける。青いドアは、めちゃくちゃ硬かった。まさかの蹴った俺にダメージがくるとは……。
「ええい! 次だ次! 黄色だ!」
黄色のドアの前にいく、頭上を警戒しながらドアノブを触っ
「ぎゃあああああああ!」
リュイの電撃並みの威力の雷が俺の身体を貫く。ぐっくそ! 痺れたぞ! だけど、普段からリュイの雷で鍛えられた俺には効かん!
次は赤だ!
「あっちいいいいいい!」
赤いドアの赤いドアノブを触ったら、火傷するほど熱かった……。クソっ! 嫌がらせかよ!
青は水、赤は火傷、黄色は電撃、じゃあ茶色は? 茶色なら安全じゃないか?
茶色のドアノブを触るが、何の反応もない。当たりか!?
━━ズシャアッ
大量の土が降ってきた、痛えよ! 口の中土だらけだし! 攻略法とかヒントとかないのかよ! 次は緑だ!
緑のドアを触った瞬間突風が吹き荒れ、塔の壁まで吹き飛ばされる。
「ぐはっ!」
ここに来て、物理的なダメージもありかよ……。背中痛え、骨が折れなくて良かった……なんとか動けそうだぞ。次はピンクだ! ピンクならダメージがくる事もないはず!
ピンクのドアを開けると、風呂場に続いている。おや? これはラッキースケベ頂きな感じか? 湯気が邪魔だ! なにも見えん!
「あらん? 誰かそこに……きゃー!!」
━━ばチン!
裸のライルに頬を引っ叩かれ、吹き飛ばされる。なにがきゃー! だよ。俺が悲鳴をあげたかったよ! ライルの馬鹿でかい逸物が、脳裏に焼き付いたよ!
ピンクでまさかの精神攻撃をしてくるとは、次は紫だ、紫ならピンクな展開もないし、高貴な色だから当たりだろ!
紫のドアを開けると、焼けたアスベルク王国に出る。こっここは……向こうから俺や蘭達が歩いてくる。やめろ、その先には行くな! 声が出ない、身体も動かない。
いくな、見るな、いくな、見るな、いくなああああああああ!
ロザリアの亡骸の前で泣き喚く俺を見る。
ドアから弾き出され、元いた塔に戻る。
「ああああ! 性質が悪過ぎるぞ糞があああ!」
救えなかった現実を再び見せられた、見てしまった。手足がないロザリアの遺体を。
この試練が終わったら試練を考えた奴をぶん殴ってやる。
その後俺は、どんどんドアを開けていく。俺はまだ膝を折る訳にはいかない。
金盥が降ってきたり、銀の皿が降ってきたり、灰色のネズミが大量に降ってきたりしたが、俺は無視し次々とドアを開ける。
「正解はどれなんだよ……」
思わず口から出た。
『ひ・・ぎ・ん』
ひぎん? ひぎんって聞こえたが、ビギンの聞き間違いか? 耳を澄ましていると
『柊君!』
「堺さん久々じゃないですか!」
『やっとパスが繋がったか……柊君の心の嘆きと怒りが、如何やら塔を一瞬怯ませたみたいだね』
「それはさっき……」
塔が怯む? 塔って生きてるのか? 堺さんは塔を知っているのか?
『なにを見てきたかは知らないし、聞かないし、今回は記憶も見ないよ。このパスは不安定だから、いつ会話が終わるかもわからないからね。邪神の因子が抜けて、君は試練の塔にいるんだよね?』
「あっはい、そうです」
記憶を見てないのに、相変わらず的確な堺さんだ。流石過ぎる。
『今は第一の試練かな?』
「そうなんです、それで色々な色と形のドアを開けてて……」
『ドアの試練か、しょっぱなからエグいな。案内人は誰だった?』
「ソキンさんとアユウ『あー! 柊君それはハズレだ……かと言って、試練のやり直しは出来ないから、頑張るしかないんだけど』えっハズレ?」
ハズレって嫌な予感がする。
『あの二人は面白い事に常に全力を出すからねえ。いきなりドアの試練を選んだのも、柊君が、彼等に気に入られたからだよ』
嬉しくない……。
「そっそうなんですか」
『よし柊君、これからまた僕の加護を限定的に解除する。ステータスが上がるわけじゃないから注意してくれよ? 僕の加護で、柊君の魔眼の力を活性化させる。少しは試練がスムーズに進む筈だ』
「あの前に加護が発動したら、身体がもたないって」
『だから限定的なんだよ。男は度胸なんでもやってみるもんだ! 破ッアアアアアア!』
堺さんが、寺生まれのTさん宜しくな、声を出すと、身体の中が熱くなっていく。
「……身体が熱い!」
『それは熱でもあるんじゃない? 加護は活性化したから、ドアをよーく魔眼で見てごらん。君・ら・・る』
電波が悪くなった様なノイズ音が鳴り、堺さんの声が聞こえなくなる。
「堺さん!?」
『こらー! いきなり不正とはいかしてるね!』
アユウさんの怒鳴り声が響く
『いい度胸だよ、あっアユウそのマーク付きのパン頂戴』
『またかよ、マーク付きばっかり食べやかって。不正できない様にしたから、もう魔王と会話はできないから宜しくう!』
それだけ言うと二人の声は聞こえなくなる。マーク付きのパン俺も食べたい。
意外とシビアなんだな……。だけど元からある加護を活性化させただけで、ルール違反じゃない気もするが。
「よし、切り替えていこう!」
自分の頬を叩き、声を出し気合いを入れ直す。




