第164話 2人はおっさん
塔に付けられたドアを開けら塔に入ると、奥に上へ続く階段がある以外、特に変わった様子がない。強いて言えば、空気が違う?
━━バタン
「うおっ!」
怖いからドアは開けっ放しにしていた筈なんだが……なんでいきなり閉まるんだよ。これホラーゲームとかである様な、入ったら出れられないパターンか!?
「ちょっま! なんで閉まるんだよ!」
急いでドアに行き、ドアを押す。
『ヨーイチ? もう試練終わったの?』
普通にドアが開き、ドアの前にいたリュイが不思議そうな顔をしながら俺を見ている。
「ふえ? なんで? こういう時ってドアが開かなくなるパターンじゃ……ドアだって勝手に閉まったし」
『ドア? 開いてたから葵に閉めて貰ったよ?』
開いてたから閉めて貰った? リュイの指示で師匠が閉めたのかよ!
「はっはあ……リュイ、怖いからドアは開けといてくれ」
『オッケー!』
オッケーって……一気に気が抜けたぞ。
「とりあえず絶対に閉めないでね! じゃあ行ってくる」
階段の方に歩き出すと
━━バタン
またドアが閉まる。俺はダッシュでドアまで戻り、ドアを押すが、今度はびくともしない。
「おーい! 開けてくれ! 悪戯はやめろ! 2回めは悪趣味だぞ!」
ドアを叩くが反応がない!? やばいやばい! パニックになる! ドアが閉まったから、真っ暗でなにも見えないし!
俺があたふたしていると
『あーあーあー! 試練を受ける勇敢な挑戦者の僕ちゃん! いやおっさん? 司会進行のアユウです! 宜しくね』
アユウさん? やたら渋くていい声してるな。絶対同い年だろ! おっさんって言うな、こちとら身体は子供だ!
『同じく司会進行のソキンです。早く家に帰りたい、まだ歌の途中だったのに、いきなりくるんだもんなあ』
ソキンさん? めちゃくちゃ綺麗な声だな。女の子か?
『あれソキン、お客様の反応がないぞ? 死んでるのかな?』
『死んでるなら、歌の続きができる! いやー死んでるなら死んでるって言ってくださいよー』
死んでるなら喋れねえだろ! なんなんだこの2人のテンションは、俺のテンションが喰われるなんて!
「あのー! 生きてます! 生きてますよー!」
とりあえず生きてるアピールをしないと、ガチで死人扱いされかねない……!
『ソキン、生きてるって。あのおっさん少年』
『ゲェッ! マジかよー』
おい! ソキンさん! なんでテンションだだ下がりなんだよ! マジだよ! 生きてるよ!
『アユウ説明宜しく』
「ちょっと! ソキンさんにアユウさんで、いいんですよね? 暗過ぎてお二人がどこにいるか、こちらにはわからんのですが……」
俺の呟きに2人がヒソヒソと話し出す。近いのかわからないが、丸聞こえなんだが。
『おい! アユウが暗くした方がいいって言ったから、照明設備外したんだぞ!』
『なっなんだよ! ソキン、お前だってドア閉めてびびらそうって言ったじゃないか! ドア閉めたら暗くなるの位わかるだろ!』
なぜ、俺がいるのに喧嘩を始めるんだろう。俺がいる事を忘れちゃったのかな? アピールしてみようかな。
「ごほん!」
『彼奴、風邪か? 風邪なら近寄りたくないんだが……ソキンどう思うよ』
『いやあれは多分、会話の輪に入れないボッチの叫びって奴だ』
『あれがボッチの叫びか! ごほん! って言うんだな。今度俺も使おうかな』
こっこいつら! なにがボッチの叫びだよ! 地味にあってるからムカつく! 役場でずっとボッチだったんだぞ! 業務連絡も俺だけメールだったし……。
『なんか彼奴から、ドンよりとした空気が流れてくるんだが……ソキン、そろそろ試練始めないか?』
『そっそうだなアユウ。これ以上暗い空気もいやだしな。おっおーい試練始めるぞ』
試練って今の精神攻撃は試練じゃないのかよ……! いやな思い出までフラッシュバックしたぞ!
「試練の前に灯りを……」
『あっそれもそうか、ルー○ス光よ! なんっつて』
とんでもないネタと共に辺りに光が溢れっ溢れっ……って眩しいわ!
『『バルす!』』
「バルスじゃねえよ! 地球ネタ知りすぎだろ! 今度は眩しくてなんも見えねえよ! 光量考えろよ!」
『『サングラスいる?』』
「ハモるな! サングラスはください! お願いします。お願いだから、普通に試練をしてくれえええ!」
俺が絶叫すると
『えーじゃあ第1回チキチキ、ヨーイチの魂はどこまで壊れないかゲームをはじめまーす。ノリワルッ』
ノリ悪って聞こえてるからな! 渋い声で暴言吐くな!
『この階では、正解のドアを探してくださーい』
無数のドアが現れる。ドアの色は赤青黄色緑と様々で、ドアの形もバラバラ。配置も規則性がない。
「ちょっちょっと! もっとちゃんと説明してくれ!」
『『アディオース! 2人はクールに去るぜ! 次の階で会おう!』』
あの2人の気配が消える。姿も見せないし、ネタを散々ぶちまけていなくなりやがった!
このドアをひたすら開ければ良いのか? だが気になる事が3つある。地球ネタに詳しい事と、魂が壊れるゲーム、俺の名前だ。俺の名前は外の仲間達との会話を聞いたのかもしれないが、地球ネタと魂が壊れるに関しては、謎過ぎる。
とりあえずドアを開けるしかないか
俺は青いドアの前に行き、ドアノブを回す。回す、回す、回す、回す、ドアノブはずっと回転し続ける。
━━ザバーン!
大量の水が頭の上から降り注ぐ。
「チックショオオオ!」




