第163話 試練の前準備
試練を受けるのは構わないんだが、俺レベル1だぞ? 誰のサポートも無くクリアできるのか? いつまでも足手纏いも嫌だし、もし強くなれる可能性があるんなら頑張るしけど。
「強くなれるのか?」
俺は、ケリュネイに質問をしてみる。
『強く? レベルがそれなりにあるのにか? 求める物がどれ程の頂きかは、わからないがきっかけの一つにはなるはずだ』
ケリュネイは俺を見つめながら、強くなれる可能性があると言った、出会って間もない神獣を信じるのは、リスキーかもしれないが、だがやらないよりはやった方がいいだろう。
レベル1だぞ?
『一つ忠告だ、ヒイラギヨーイチ。塔では汝の魂が試される。嘘偽り無く進め』
「ああ、ありがと。なあケリュネイ、アルテミスとなにか関係があったりしたりするか? なきゃないで良いんだが……地球でケリュネイアって聖獣がアルテミスの眷属って話がッ」
がっ苦し……息が!
『ここでする話ではない。全ては試練が終わってからだ。アルテミス様を慣れ親しく、呼び捨てにするな』
はあっ、はあっ、はあっ。なっなんだ? いきなり呼吸が出来なくなったぞ!? 意識も飛びかけたし、空気を操ったのか!? しかもアルテミス様だあ!?
「絶対に試練をクリアして、聞き出してやるからな! アルテミスとお前の関係をな!」
やるならやってみやがれ! 息を止めて対抗してやる! 俺の肺活量を舐めんなよ!
『ッ……早く試練を受けろ』
それだけ言うとケリュネイは神殿へ戻っていく。あれ? 俺が呼吸止めたの無意味か!?
「はあ、はあ……なんなんだよ」
「よーよーケリュネイの前でアルテミス神の名前を出すとは、命知らずだなあ。気に入ったぞ、試練のアドバイスをしてやる。絶対に自分の信念を貫け」
それだけ言うと霧雨も神殿に戻って行った。なんなんだ? 信念を貫けって言われても……ッ痛ああああ!
「洋一! なんで勝手に話を進めてるのよ! それに危ない挑発までして!」
蘭が鳩尾にダイレクトアタックかましてきやがった、心配なのはわかるが勘弁してくれ、めちゃくちゃ痛かったぞ!
『ヨーイチ! なんであんな挑発したの! 危ないじゃない! ヨーイチは弱いんだよ!?』
おおう、リュイにまで怒られた……。
「いや、彼奴がアルテミスの事を庇うからイラついちゃってさ。ごめん、謝るよ。俺の予想が正しかったのは証明できたが」
「予想?」
「ああ。さっきも言ったが、地球の神話にアルテミスの逸話があってさ。その中にケリュネイアって言う聖獣がいたんだよ。確かギリシャ神話でさ、ケリュネイと同じ様に黄金の角をしていて、戦車を引かせてたって話しだけど」
ギリシャ神話は、うろ覚えなんだよな。こんな神様がいたなー位の知識しかないんだよな。
「補足するなら、アルテミスが捕まえて聖獣にしたんじゃなかったかな?」
「師匠それです!」
「まあアルテミスの事より、洋一君試練って大丈夫なの? 僕達いけないんだよ?」
そう師匠が言う通り、今回は誰のサポートも受けられない。蘭もリュイも師匠も、ついてこれない。異世界に来て、本格的に1人きりの戦いになる。
「まあなんとかしますよ! 足手纏いのままじゃいられないし。アナスタシア、皆んなを頼むな」
『なっなんで私が……』
「ケリュネイや霧雨と会話が出来るのって、お前しかいないだろ? だから頼むよ。蘭やリュイや師匠や虎次郎を護ってください。お願いします」
俺は頭を下げ、アナスタシアに初めてきちんとお願いをした。
『わっわかったから! 頭上げてよ! ここまで来たら一連托生なんだから! 私が皆んなを護るから、アンタは試練を軽くこなしてきなさいよ!』
アナスタシアの小さな拳を俺の胸にあてる。
『絶対に、生きて戻ってきなさいよ。女神との約束なんだからね』
アナスタシアは笑顔で俺を応援してくれた、やっぱりコイツは女神なんだな。
「洋一君、こっちの戦闘面の護りは僕に任せてよ」
師匠が剣を天に掲げる
「この剣にかけて、皆んなを護るよ」
「洋一、ほんとは行かせたくないけど……洋一に任せるしかないなら、私は信じてるから。負けないでよ」
蘭が不安を振り払い、強い言葉で俺を激励してくれる。
『ヨーイチ、頑張りなさいよ! 雷砲と弾にはありったけ雷を入れといたから!』
リュイ、備えてくれたんだな。
「ありがとう! 皆んな試練なんて楽に突破してくるぜ!」
俺は皆んなに御礼を良い、塔に向けて歩き出す。塔の手前まで、皆んなついて来てくれるみたいだ。ちょっとホッとした……正直脚が震えてる。
『ヨーイチ、怖いんでしょ?』
「こっ怖くないから! 大丈夫、大丈夫、俺はできる、俺はできる」
やばい某パイロットみたいな心境になってきた。こんな気持ちになったのは、バンジージャンプする時以来だぞ。バンジージャンプの時もめちゃくちゃ怖かったけど。
「洋一君、これを貸してあげるよ」
師匠から小太刀を渡される。
「これは護り刀だよ。きっと役に立つから」
「ありがとうございます! お借りします!」
蘭がずっと不安そうな顔をしている。俺は蘭の頭を撫で
「俺に任せとけよ、たまにはカッコ良く決めるよ」




