第16話 此処に住む? 宜しくな!
悲しいすごーく、悲しい現実に気付いてしまった。俺は神より強いのに、人間と魔物以下。神ってなんなの? 村人以下なの? いや村人が実は最強説でもあるのか?
「いつか俺は、村人より強くなってやる!」
「洋一は、相変わらず目標がかなり低いよね。世界一強い奴になるとかじゃないの? こういう時は」
蘭が呆れている。だが俺には俺のやり方がある。着実にいかなければ!
「世界一強いのは、蘭に任せる。俺は先ず、村人を超え、次に農夫を超えて、次に狩人を超えて、次に冒険者ってな具合にステップアップしてくんだ」
「ふーん。そう言えばレイから念話があって、戻って来るって。光一の分の布団も頼んどいたよ」
蘭め、さらりと流しやがったな。ってか念話!
「えええ! 念話、俺もしたかったのに!」
「今度ね」
今度俺にも念話させてくれるのか! 楽しみだ!
♢
次の日光一といつもの様に畑仕事をしていると、外から野太いオッさんの不快な声が響いてくる
「なっなんじゃこりゃあああああああ!! 」
「うるせっ、なんだよ一体」
「洋一君、見に行こうよ」
2人で外に出ると、大風呂敷を背中に背負った身長160位で、筋肉ムキムキで髪を縛った髭モジャのオッさんとレイ先生がいた。
「レイ先生、お久しぶりです! 会いたかったです!」
光一がギョッとした顔で俺を見ている。なんだよ、なんか文句あるのか? おおん?
「レイ久しぶり。光一、洋一は基本女性に対しては、猫被りだから気にしないで」
蘭、ばらすんじゃないよ。それに猫被りって今日日聞かないよな。
「ヨーイチ久しぶりだね、蘭ちゃんも元気してた? そちらの方は初めましてかな?」
レイ先生の素敵な笑顔が、眩しい! 君は太陽か!
「あわわわわわわ、いっいせかいじん、また戦わされりゅ」
あちゃー。光一が、異世界人アレルギーを発症し出したか。
「光一、レイ先生は危険じゃない。俺の先生だから大丈夫だからな? 怖くない怖くない」
「ヨーイチちょっと私に対して、失礼よ。私は戦いが嫌いな人に戦わせるなんて事は無いはよ?」
「あわわわ、ぼきゅ光一です、洋一君と同じ国からきっきました」
それだけ言うとダッシュで部屋に帰って行く。あいつ俺に会った時は人見知りしなかった癖に、異世界人見たらこれじゃ、暫くだめだな。
「ヨーイチ私、なにかまずかったかな?」
「ああ、大丈夫ですよ。あいつ俺と同郷なんだけど、ちょっと無理やり戦わされ過ぎて、異世界人アレルギーになっちゃったんだ。俺達の国は戦いと無縁だしね。それで精神的に参って逃げ込んだ先が此処って訳」
光一はまだ子供だし、魔物や人間と命のやり取りを無理にする必要は無い。そんなんさせられたらストレスで死ぬわ。
「戦いと無縁の生活してたのね……。それなのにいきなり殺し合いの生活をしろって言われたら辛いよね。でも私は無理に戦わせる気は無いんだけどなあ」
ちょっとシュンとしているレイ先生、可愛いな。抱きしめたら怒られるかな?
「それもこれも女神が悪いんで、しこたま文句言ったら探さないでって言って、消えってたよ」
レイ先生が顎が外れそうな位驚いているが、なんだ? どうしたんだ?
「えー!!! 女神様が来てたの!? 女神様が降臨するなんて歴史的一大事よ!」
そんなに大事なのか? 普通に遊びに来たぞ?
「精霊王の爺いも来てたけど、まあ普通だよ。皆んな暇だから遊びに来ただけだし」
「洋一違うでしょ。精霊王様は気をつけなさいって警告と、女神様は勘違いで降臨してきたんでしょ。洋一と違って暇人じゃないの」
蘭め、人を暇人扱いするんじゃない!
「なっなにい! 蘭、俺だって畑仕事や訓練してるんだぞ! ニートではないぞ!」
「はいはい、森の中の引きこもり乙。それでレイ、そっちのドワーフの人は? 何か家をベタベタ触ってるんだけど」
蘭の毒舌のマシンガン……ハートが砕け散りそうだぜ……。
そう言えばあの爺いさん、さっきから人の家触りまくってなにしてんだ?
「あーこの人は」
「儂か? 神級鍛治師のエレンじゃ。レイが珍しい素材を持ってての、こいつの狩りの腕に余る素材だったから、儂が問い詰めて付いてきたんじゃ」
爺いさんは、鼻息荒くしながら家を触っている。因みに自己紹介の時にこちらを一切見ずに答えやがった。
「ごっごめんなさい、勝手に。私の狩の師匠でもあるからその、逆らえなくて」
レイ先生は凄く申し訳なさそうにしてるがそこじゃない。
「爺い! ベタベタ触るな。こっち向けよ失礼だろーが」
「なんじゃ小僧」
いかつい顔してんな。だが俺は怯まんぞ!
「俺は家主だ。そして蘭の家族だ。今は光一とリュイも入れてチーム地球の生活を取り戻せだ! よろしくな」
どうだ爺い恐れいったか!
「チキュウ? なんの事かわからんが、小僧が家主か。儂も此処に住むからよろしくな! エレンと呼んでくれ」
「ああよろしく!」
俺とエレン爺いは、固い握手を交わす。友好的な爺いじゃないか。
「「えっ!?」」
蘭とレイ先生が、びっくりしてるけどどうしたのかな?
「ん? なんか変だった?」
「なんじゃ? なんかおかしな事があったか?」
「「いやいやいやいや」」
蘭とレイ先生がハモってる。可愛いな
「エレン爺いは、此処に住みたいんだろ? なにが出来るか知らないが、住みたいなら住めばいいだろ? 光一のリハビリにもなるし」
当面は地球に帰るあてもないし、光一のリハビリはしなきゃならんしな。
「儂は鍛治師じゃ、しかも神級鍛治師! 鍛治師の中で1番じゃ!」
「エレン爺いは1番らしいから、まあなんだ適当に頑張ってもらえばいいだろ?」
神級がなにか知らないが、1番なら頑張って貰えばいいだろう。あっ俺の装備を作って貰おっと。
「師匠!? あっあの国から来ていた、士官の話やら仕事やら、どうするつもりなんですか!?」
士官の話? 士官って国の重鎮とかじゃないのか? 実は偉いのかエレン爺いさんは?
「もう仕事は受けん、儂は此処に住む。小僧が気に入ったし、この建築物や壁の素材も気になる。それにいい素材も沢山あるんだろ? なら儂は此処から動かん」
動かないらしいから、お国には諦めて貰おう。
「蘭、工房的なの作れる? 防音対策マシマシで」
「はあ。ラーメンみたいに言わないでよ。まあ出来るよ、エレン要望書を書いて。素材もあるんでしょ? あるなら使うから」
流石蘭! できるクマタカNo. 1だな!
「話がわかるの! 馬鹿弟子とは大違いだわい。そういや小僧達名は無いのか?」
大風呂敷から次から次へと訳の分からない物を並べる爺さん。生き生きしてやがる。
「あるわ! 俺は柊洋一、こっちは蘭。洋一って呼んでくれ。さっき逃げ出したのが光一な。あいつの装備はかなりレアだから、後で見せて貰えよ。女神が造ったらしいぞ」
「ヨーイチ! 女神が造った装備もあるのか! ひゃっはー!! 此処は天国じゃ! 良き弟子を持ったわい」
やはり鍛治師はレア装備に目がないようだ。これで光一とも仲良くなれるだろう。
「エレン爺いさん、あんまり興奮すると血圧あがるぞ」
「蘭ちゃん、ごめんね。師匠言い出したら聞かないから」
「レイこっちこそ、ごめん。洋一も一回決めたらテコでも動かない頑固者だから」
なにやら蘭とレイ先生が、2人でため息をついている。エレン爺いは、ハイテンションで小躍りしているし。
鍛治師なら俺専用装備とかも作れるのかなあ。ドラゴン1式とか、モンハ○みたいな感じで。賑やかになってきたな。後は光一をどうするかだなあ。