第149話 魔獣の腹芸
筋肉達に祭り挙げられ、自分の銅像の前でズボンを下ろされそうになる。
危険地帯からなんとか逃げ出す事に成功したが、あの熱量は尋常じゃない。
「はあ、はあ、はあ。なんとか逃げられた……。なんなんだよ彼奴ら」
空はめちゃくちゃ綺麗に晴れているのに、俺の心は土砂降り状態だよ、エルフ怖いよ。
『イケメン、裸、イケメン、裸』
『なんでアタチの銅像がないのよー! ふざけんなー!』
アナスタシアは壊れた様に、イケメンと裸を繰り返してるし。リュイはリュイで、自分の銅像が無い事に怒ってるし……。
「この街道を真っ直ぐ進んで行けば、アナスタシア様が言っていた川にぶつかります。国は見えなかったから、探さないといけないけど」
蘭の目で見つけられないとなると、真逆の位置かめちゃくちゃ遠いかだなあ。
「おい、アナスタシア川ってどんくらい広いんだよ」
『イケ━━えっ? ああ川の広さ? アメリカ位の大きさじゃない?』
でかっ! アメリカって……まあ此奴の事だから適当に言ってる可能性はあるが、めちゃくちゃ広い事だけはわかった。
「無理ゲーだろ。どうやって見つけるんだよ、アメリカ並みに広い範囲を探索なんて出来ないぞ?」
『えーそんな事言われてもなあ。うーん、あっそうだ。川に着いたら、ゲートを探せばいいのよ!』
閃いた! みたいな顔をしているがゲートがどんなものかもわからないんだが。
『大丈夫よ、蘭や葵やリュイなら絶対に見つけられるわ。アンタには無理だろうけど』
「なんで俺にはできないんだよ」
『アンタ、魔力の可視化なんて高等な事できないでしょ?』
「できるけど? 魔力を見るだけなら、師匠から貰った眼でなんとかなるぞ」
馬鹿め、目に関してはマウントは取らせないぜ!
『ゲッ! なんでアンタにそんな性能が!』
ぎゃーぎゃー言い合う中、頭の片隅で俺は考えていた。蘭も師匠も二人とも俺達がいなければ、簡単に解決できちゃうんじゃないか?
「まあアナスタシア、頑張ろうぜ足手纏い同士さ」
『なんでいきなり、優しい目と言葉で諭してくるのよ!』
「だって俺達、足手纏いコンビだろ? 俺はレベルが低くくて、魔力だけが見えるマンで、お前は鎮魂しかできない鎮魂ウーマンだろ? ほら足手纏いコンビだろ?」
『ぐうう! 悔しいけど事実なだけに……ムムムム!』
頰を膨らして怒るアナスタシア。妹がいるってこんな感じかなー。
『GURURURU』
「ん? リュイとアナスタシアか? 腹の虫が鳴いてるぞ? ドラゴン肉もう消化したのか?」
━━ペロリ
「おいおい、いくら腹が減ったからって俺の頭を舐めるなよ」
『あっアンタ! 前、前見なさいよ! 魔獣、魔獣よ!』
「饅頭? 道に饅頭なんか……あっ……ハロー? 虎かな? 虎の獣人さんが変化してるのかな?」
『馬鹿! アンタふざけてる場合じゃないわよ! 喰われるわよ! 葵、蘭、リュイなんで助けないのよ!』
えっマジで魔獣なの? 虎の獣人さんが変化して、俺に見惚れてペロリ、此奴はイケメンの味がするって感じじゃないの? ってかデカイなあ。3m位あるんじゃないか?
「アナスタシアちゃんは僕の後ろに。舐められたら、服が汚れますから」
師匠が素早くアナスタシアを俺から引き離す。尚俺は、虎型の魔獣の前に置き去りだ。
「らっ蘭? 助けてくれてもいいんだよ?」
「大丈夫よ」
大丈夫なのか? 俺喰われても蘇生出来るチートなんて持ってたか? チートと言えば死に戻りってチートだよな。俺なら一回で狂って引き篭るけど。
━━ペロリ
「おっおい! 虎ちゃん俺を舐めるんじゃねえよ! 俺は餌じゃないぞ」
虎型の魔獣は、犬猫の様に腹を出して甘えるポーズをしてくる。クッ可愛いじゃねえか! 毛並みもモフモフで気持ちいいし。
「よーしよーしよーしよーし! お前は今日から虎次郎だ!」
俺がムツゴロウさん宜しくな感じで、虎次郎を愛でていると、虎次郎の額に鷹の絵が描かれる。
「あれ? これ俺と蘭に描いてある紋章だ」
蘭の方を見ると
「契約できたのよ。まあ最初からこの子は、洋一にテイムされる気で目の前に現れたみたいだけど」
テイムされる気でって、魔獣としての誇りや威厳はないのかよ。
「なんで俺に? お前戦えるのか?」
虎次郎は、首を横にぶんぶんと振る。
無理! やめて! 戦えません! って虎次郎から、伝わってくる。その牙と爪は飾りかよ!
「そんなデカイ姿で戦えないってマジかよ。俺とアナスタシアを乗せたりは?」
アナスタシアの方を爪で指し、次に俺を見て首を横に振る。
「アナスタシアだけなら乗せられるけど、2人は無理って事?」
虎次郎は首を縦にぶんぶんと振る。涎が飛ぶから、あんまり激しく首を振るな!
「虎次郎は戦えないから、庇護下に入りたかったのよ。洋一の側には、私や葵がいるからね」
「おっおう……計算的な甘え方だったのか、それで俺がテイムしたから……虎次郎的には、計画通りって事か」
虎次郎の頭を撫でると、甘えた様に喉を鳴らす。
「はあ。まあそうなるわね。まさか、あんなに簡単にテイム出来るとは、私も思わなかったけど」
蘭が、やれやれだぜって感じを出している。虎次郎のテイムに関しては蘭も予想外だったのかよ……。
結果だけ見ると、足手纏いが増えただけじゃねえか!




