番外編 大和のスタートライン 壱
これから話すのは俺の昔話だ。
俺は正義感に溢れた大学生だった。顔がワイルドで身長が190センチ、筋肉質のナイスガイ。
周りからはリアルターミネー○ーと呼ばれていたが、優しさは人の100倍持っていたぜ。
見た目のせいで誤解したり疎まれる事もあったが俺は全く気にしていなかった。俺のハートはフルメタル装甲だからな。
俺は、強盗事件に巻き込まれるて死ぬまで、大学生活を謳歌していたんだよ。意外か? 俺だって大学生だった事があるんだぞ?
バイト代を下ろしに、銀行に行くまでだけどな。
銀行の中では、まさに強盗事件の真っ最中。
子供が犯人に人質に取られて、助けを求めていたんだよ。
黒い覆面を被った男に銃を突きつけられ、怯えていた。
俺は、なにも考えずに子供を助けようと駆け出した、泣いてる子供を護る為に。
だが次の瞬間、不覚にも強盗に胸を撃たれちまった。
俺は銃で撃たれた痛みに、不覚にも目を閉じてしまう。この頃はまだ銃に勝てなかったからな。
♢
目を開けると、薄暗い場所にいる。ここは何処だ? 俺は死んだのか? 子供は?
「あれ? ここ何処だ? 子供は?」
『天都 大和さん、貴方は子供を庇い凶弾に心臓を貫かれ、死にました。ですが、貴方は生前に多くの善行を行なって「長い! 三行で!」えっいやあの大事な話で」
謎の声が、なにやら長い話をしている。
「力及ばず死んだのはわかった! 多分あんたは、神様だろ? んで良くあるフィクションの中だと、俺を何処か別の世界に飛ばして生かしてやるから、代わりに魔王を倒してくださいとかなんとかだろ? すげえ……めんどくせえ」
めんどくせえが、めんどくせえが楽しめそうだな。
『はい、そうなんですけどやっぱりダメでしょうか?』
「やる!!」
『まさかの即決!?』
なんで驚いてんだ? 確かにめんどくせえとは思ったが、助けを求める人がいるんだろ?
「困ってる人がいて、助けを求める人がいる。俺にしかできないなら俺が助ける! 何故なら俺は、ヒーローになりたい男だからだ!」
『あっあの、とりあえずやってくれるんですよね?』
神の癖に心も読めないのか? 怪しいな。怪人か?
「俺。通信空手しかやって来なかったから、正直強いかはわからんぞ? 大概の奴が、喧嘩とかする前に俺のガタイと顔を見て、逃げていったからな」
『そっそうなんですね……』
「神様! 顔を見せろ! 天の声だけで事務的に済ますなんて、ヒーロー的には許せないぜ?」
不敵に笑う俺の前に、神は現れる。羽が生えていて顔は鳥そのもの、人間の身体をした、ショッ○ー宜しくな怪人だ。
「出たな! 怪人鳥女!」
俺は直ぐに、空手の構えを取る
『出たなって……貴方が顔を出せって言うから来たんですけど……』
怪人鳥女は困惑している。
「怪人鳥女! 俺をヒーローに改造するのを許可する!」
ビシッと効果音がつきそうな勢いで、怪人鳥女を指差す。
『かっ怪人じゃなくて、私神で、名前はホルスなんですけど……そっそれに改造ってそんな事したり「ハキハキ喋れ! 怪人鳥女!」すっすいません』
怪人鳥女の癖に覇気が無さ過ぎる。
「改造しろ! 無敵のヒーローにしろ! はやーく!」
とりあえず、先ずは改造が先だな。最低でも銃に負けない、強さは欲しい。
『あの改造って一体どんな風に、それに無敵って』
「じゃあ、こう言うのはどうだ! 限界値が無くて鍛えれば鍛えるだけ強くなってく感じだ! 状態異常にかかるヒーローはいないから全部無効な! ヒーローに言葉の壁は無い! だから誰とでも話せるようにしてくれ!」
グイグイと怪人鳥女に詰め寄る
「限界突破と、状態異常無効、翻訳スキル? あれこう考えると対して無敵じゃないような……」
「はやーく! 助けを待っている人がいるんだろ!? さては怪人鳥女! 貴様俺を引き止めて被害を拡大するつもりだな! ふざけやがって!」
当時俺は、完全にヒーローの世界に浸っていた。多分側からみたら頭のおかしな奴だったろうな。
『そこのゲートをくぐったら行けます。ご武運を!』
「うるせっ! 急に耳元でデカイ声出すな!」
そうして最初に転移したのはエデン。お前達がいた世界の平均して2倍は強い魔物が沢山いる世界だ。
修行期間はひたすら、筋トレ、魔物を倒す地味な作業をしつつ、たまに野盗やらを狩りまくってたな。
魔王の被害がやばいのに、エデンの世界の奴ら人間同士で戦争はじめやがったんだよ。
だから俺が、両方の大将と王族の首を取り言ってやったんだよ。
「戦争! ダメ絶対!」
ってな! あいつら感激して声も出さなかったぜ。その後何故か、毎回の様に騎士や傭兵や冒険者やらが、俺を討伐しに来たんだよ。
うけるだろ? 魔王や魔族を討伐しろよって話だよな。順当に返り討ちにしていたら、いつのまに世界最強の男とか、災厄の化身とか言われてたな。
修行にも飽きてきたから、魔王城にカチコミかけたんだけど四天王が弱すぎてさ、鉄の棒で殴ったら速攻で死んじまったよ。そしたら、魔王が激怒しながら突撃してきたんだよ。
魔王の見た目は、筋肉むきむきの角が生えた半裸のおっさんだったな。
「貴様! 良くも我の手下を喰らえ! ファイナルデザイスター!」
とかなんとか叫びながら、大量の石を投げてきやがったんだよ。
「おい! 人に向けて石を投げるな! 危ないだろ! 怪我したら責任取れんのか!」
って説教してやった訳よ。
「愚弄しやがって! デスペナルティ!」
キレて叫びながら、今度は魔法を人に向けて、使ってきやがったんだよ。だから、イラっとして鉄の棒で頭を引っ叩いてやったんだ。
「ぐぺっ! 貴様! やべっ! いだい! やめて!」
俺は棒ライダーの様に飛び上がって、軽く蹴りを放ってやったんだよ。あくまで、牽制のつもりでな。
「人に痛い事しようとするからだ! どりゃあああああああああああああ」
俺の蹴りの衝撃で、魔王と魔王城がぶっ壊れてさ、流石に生き埋めになるかと焦ったよ。
「手抜き建築かよ!」
思わずでかい声で叫んだら、更に城が壊れたからびびった。
俺がびびっていたら、意味有りげにへんな靄みたいな爺いが、空から出てきやがってさ。
『魔王を殺してくれて、ありがとう我が名は邪神イルっあべ』
気持ち悪いから、一撃で消しとばしてやったよ。隙だらけだったしな。
爺いを消し飛ばしたら、いきなりホルスが現れたんだよ。
「よう! 魔王と変な邪神のパチモンみたいなの殺したから一回地球に帰るぜ!」
『はっ!? へっ!? えっうそ!?』
「嘘なんて着くかよ。まあ帰るなって言っても次元を殴り飛ばして帰るけど」
『次元を殴るってなに!? それよりこんなに早く倒すなんて! 私は貴方を止めに来たのに!?』
「やっぱりてめえは魔王の仲間か! 怪人鳥女め!ぶっ殺してやる!」
俺は、躊躇せずにホルスに鉄の棒を振り下ろしたんだよ。
突如現れた、他の神に止められたよ。まだ弱かったとは言え、俺の攻撃を受け止めたからびっくりしたぜ。
『貴様! 神に手を挙げるとは!』
「うるせえ! バーカ! バーカ! ヒゲモグラー!」
攻撃を止められて、悔しかったから名前の知らない神を煽りまくってやったのさ。まあ仕返しだな。
「短足ー! メタボー! 鳥女の付き人ー!」
『ぐぬぬぬ! ぶち殺す!』
そっからはまあガチの喧嘩よ、殴り合いよ。あの神、爺いの癖に強かったなあ。
最後は俺が勝ったけどな、ボコボコにしてやったぜ。
『あっあの、元の世界に帰しますからその穏便に、殺さないでくれたら、嬉しいなあーなんて』
「良いぜ! 日本食食いたいから、早く帰らせろ!」
そんでまあ、それから色々沢山あったけどこれが俺の始まりだ。
これが、天都大和俺のスタートラインだ!




