第131話 体力の限界を超えた先のジェットコースター
リュイが、バーニアを説得してくれた。なんでも戦闘はしない、寝ててもいい、移動する際はアナスタシアが持つと言う契約で。
「バーニアは神も恐れないのか? いや元神だから良いのか?」
『バーニアの性格的な問題ね。アタチはちゃんと説明したからね! アタチは悪くないんだからね』
リュイはまあ悪くないだろうなあ、バーニアの性格的な問題ならいいか。アナスタシアが持つなら、俺に負担はないしな。
あっレイ先生だ! こっちに走って来てくれるなんて嬉しいな。でもあんなに早く動いて転ばないのかな? あっ転びかけた。おっ持ち直した、すごいバランス感覚だな。
「ふう……。私は、桜の面倒を見るわ。まだ、不安定で心配だしね。王様はもう大丈夫って言ってたけどやっぱりね。ヨーイチ無茶しちゃだめよ? 蘭ちゃん、リュイ様、バーニア様、葵君、ヨーイチ事を宜しくお願いします。危ない事ばかりするから」
怒涛のお願いをしている、危ない事ばかりってのは気になるが、心配してくれるのは素直に嬉しいな。頬が緩んじまう。
「ヨーイチ、ニヤニヤしないで! 貴方の事を皆んなにお願いしてるのよ! 全くもう」
レイ先生に、コツンと指で頭を突かれる。
「へへへ。なんか恋人みたいな雰囲気ですね。ちょっと照れるなべぶらっ!!」
頬を引っ叩かれた。痛い……照れただけなのに。恋人発言がダメだったのかな?
「洋一、レイは真剣に心配してるんだからふざけないの。それとラプダは連れて行けないわよ? 寒いの苦手だからね」
「俺はいいとしても、アナスタシアは大丈夫なのか? それなり歩くんじゃないのか?」
俺の懸念はアナスタシアの体力だ、俺は男だから頑張るしかないとしても、元女神と言っても女の子だしなあ。
『大丈夫よ! 行くわよー!』
アナスタシアの号令で俺達は出発した。
♢
出発し、30分程歩くと小刻みに痙攣しながらアナスタシアが動かなくなる。
『うひっひー! ひー! ひー! もうだめえええじぬう!』
肩を上下させ、荒い呼吸をし、壮絶な顔をして気持ち悪い呻き声を上げるアナスタシア。
『あんた達いいい、なんで、そんなに体力が……』
って言われてもなあ、俺は元々鍛えてたし山歩きは得意だからな。蘭は俺に負担をかけないように飛んでいるし、師匠はアナスタシアの顔を見る為だけにムーンウォークをしている。そこまでして苦しんでる顔をみたいのか? Sなのか?
「葵、背負ってあげなよ。アナスタシアの事助けてあげたいんでしょ? モジモジして焦ったい」
Sじゃなかった! ただのシャイボーイだった! 助けてあげたいのに、声をかけられないでモジモジするって、中学生か!
「あっアヒャスタジアム様! わっワタクシガ背負いますから! どうでしょうか?」
噛み噛みだし、アヒャスタジアム様ってなんだよ。海外にありそうな名前だな……。
『えっ? あんたが? えー』
チラチラと俺を見てくるけど、俺にアナスタシアを背負いながら歩くのは無理だぞ? パーフェクトボディの時なら、お姫様抱っこでもオンブでも肩車でも、なんでもできたんだけどなあ。鷹匠の修行のおかげで、人より鍛えてたし。
『ぶー! 葵君お願いするわよ。私汗かいてるけど大丈夫なの?』
アナスタシアが、口を3みたいに尖らしている。
「ひゃああああ! 大丈夫です! 光栄です! ありがとうございます!」
師匠が凄い勢いで土下座をして、アナスタシアを拝んでいる。ちょっと引く……ってか師匠怖いよ、欲望に忠実過ぎるよ!
『葵って変わってるわねえ』
リュイがニコニコしながら、師匠達を眺めているけど、これは微笑ましい光景じゃないからな! 闇が深い光景だからな!
『さー皆んな行くわよ! 葵、出発よ!』
「はっ!」
アナスタシアを背負った師匠のスピードがめちゃくちゃ速い! 追いつけない!
「蘭、リュイ! 師匠を止めてくれ! 迷子になる!」
情けない理由だが、2人に頼むしか方法がない。だってめちゃくちゃ速いんだもの!
『葵ー!! 待ってー! 置いてかないでー』
リュイが叫ぶと、物すごいスピードで師匠が戻ってきた。師匠に乗っているアナスタシアの顔面は真っ青になっている。
『おえっ……速過ぎる……世界が揺れる……』
アナスタシアの奴スーパーグロッキーだな。体力の限界を超えた時に、ジェットコースターに乗る様な物だしな。俺なら絶対に無理だ、吐かないだけマシだが。
「アナスタシア、お前は凄いよ。吐かないなんてさ! 俺なら絶対に吐くよ」
「体力の限界を超えた後の、超スピードの移動……洋一、修行になるかもよ? 限界まで走った後に風魔法でぶん投げるたら同じ事が……」
「『ひっひええ!』」
蘭め! なんて恐ろしい事を! って今知らない女の子の声がしたんだが、誰だ?
『おっかねえ事を言う神獣だあ! こだなにおっかねえ神獣様を見だのは、ハヌマ様以来だ! おらの事をごぎ使うづもりが? やめでぐださい!』
リュイ位のサイズでショートボブの緑髪、緑色の目をした女の子が、ズーズー弁で蘭に土下座をしている。顔はリュイに似てるな。服はリュイとは違ってロリータって言うのかな? 白と緑の綺麗な服だ。
『許すてぐださい、お願いすます! なんでもすますから! あっ! なんでも無理だ! 常識の範囲内でお願いすます!』
「えっ? えっ?」
蘭が、虚取っている。珍しいな




