第12話 褌と筋肉ってベストマッチしてる
『そうそう、ヨーイチ! あんたと蘭に、精霊王様から伝言を『ブシャシャシャ会いに来てやったぞ!』
リュイの言葉を遮り、褌一丁の白髭の2m越えの筋肉隆々な爺いがいきなり現れる。髭に反して、頭頂部はツルツルだが後ろ髪は長い。仙人スタイルだな。
あっ光一が倒れたぞ、大丈夫か?
「おい爺い、褌一丁で、なにをしているんだ? 変態か?」
『ちょちょっとヨーイチ。あんた、見た目はこんなんだけど、精霊王様よ!? 頭を下げなさい!』
何故に俺が爺いに頭を下げるんだ? 不法侵入者だぞ? それとリュイ、ポケットから顔だけ出してその台詞はかっこ悪いぞ?
「ここでは、俺がルールだ。何故ならこの地は神獣蘭と俺、最近ではファーマーまで増えた素敵な土地だからな!」
例え王様だろうとこの家では俺がNo.1だ!
『ブシャシャシャ、粋な小僧だな。ワシの圧に微塵も顔色を変えないとは』
髭褌爺いは、俺を指差しながらゲラゲラ笑ってやがる。
「圧? デカイ身体と褌以外にも圧力までかけてるのか? 良く分からんが皆んな俺の後ろにいろ! 良く分からんが俺に圧は効かないらしい!」
けしからん爺いだ、やったるでえ! 負けへんでええ!
「はあ。洋一こそ隠れてなよ。一番弱いんだから。光一は無理そうだね、気絶してるし。リュイ様は洋一のポケットに隠れてるし」
蘭よ隠れるなんて選択肢は、あり得ないんだぜ!
「皆んなは、俺が護る! 」
なにを言われようと、皆んなは俺が護るんだ! 弱くたって肉壁にはなれるんだからな!
『ブシャシャシャ、ワシ別に闘うつもり0何じゃけど、ヨーイチとか言ったか? 御主何か呪いをかけられる様な心辺りあるか?』
なんだ、精霊爺いは戦わないのか。
ちょっぴり安心したのは皆んなには内緒、かっこ悪いからな。
「呪い? あー変なクソビッチに子供にされたな。うんあれは呪いだ、酷い呪いだ」
逆にあれ以外の呪いまであったら洒落にならん。
『子供にされた? ヨーイチよ大人から子供に変えられたのか? それは災難じゃなブシャシャシャ。それにしても弱いのう、ワシの圧に耐えれる癖に、指先で弾いたら直ぐに死んでしまう』
爺いは髭を撫でながら俺を見て来る。そんなに俺を見つめるな気持ち悪い。
「精霊王様もし本当に、呪いがあるなら解けそうですか?」
蘭は爺いに呪いの解き方を聞いてる、有力な情報があればいいんだが……
『おお、新しき神獣よ。挨拶が遅れてすまなんだ。ワシが精霊「爺い」じゃ! ブシャシャシャヨーイチ何故今爺いと。名前が精霊爺いになってしまうじゃろ。呪いはちと難しそうですな』
はっ、大層な名前はいらんだろ、爺いで充分だ。
「精霊の爺いだから。精霊Gって横文字にしたらゴキブリの精霊みたいだ」
『ゴキブリとはなんじゃ?』
こっちにゴキはいないのか、一安心だな。ゴキが魔物化したら勝てる気がしない。
「害虫」
ポケットでリュイがマナーモード宜しくな震え方をしている。
『ブシャシャシャ、二千年生きて初めてじゃわ害虫呼ばわりされたのは』
精霊爺いにはうけたみたいだな。
「もう! 洋一茶々を入れないで隅っこで、光一の介抱してあげて」
蘭に怒られてしまった。ゴキブリが嫌だったのかな? あれ光一泡吹いてる。泡吹く人間って初めて見たなー大丈夫なのかな? 蘭が爺いに異世界に来た経緯やアルテミスの話をしている。
『ヨーイチ聞きたいのじゃが神獣がいるなら、強さはいらんだろ?「だめだ!」何故じゃ?』
俺は爺いの言葉を遮る。
「蘭に頼りきりじゃ、蘭を護れない。今は弱くても強くなる! 蘭と一緒に冒険もしたいしな」
『ヨーイチ、冒険はアタチも行くからね』
すげー小さい声だなリュイ、聞き逃しかけたぞ。でも嬉しいなリュイありがとう。恥ずかしいから言わないけど。
『ブシャシャシャ、なら先ず呪いをどうにかせんとなあ。だがワシは専門じゃないからなあ、その話はまた次回じゃ。蘭よアルテミス神の眷属と言う認識でまちがいないか?』
「違うわ。眷属契約される前に、洋一がピンチになったから逃げ出してきたし」
そう、蘭は俺を見捨てずに助けてくれた。蘭がクソビッチの眷属になっていたら、俺は生きていないだろう
『ブシャシャシャそれは幸いじゃ。この世界にはアルテミスと言う名前の神はおらん。間違いなく異界の神じゃろう。異界の神の眷属では色々と問題があるしな』
何やら難しい話だな。とりあえずクソビッチはこの世界で認知されてないって事だな。
『しかし、神獣よ、御主は神の名を冠する獣じゃ。何処の神にも属さないと言う訳にもいかん。それはわかっているな?』
話の雲行きが怪しくなってきたな。
「それは、はいわかっています……」
「おい、爺い! 蘭をどうにかしようって話なら俺が許さないぞ! 俺と蘭は家族なんだ!」
蘭の前に立ち塞がり爺いを威嚇する。
『ブシャシャシャ、ヨーイチは実に、面白い男だな。大丈夫じゃ、そのアルテミスと言う神はどうか知らんがこの世界の神は基本的には、穏健派じゃからな』
「穏健派? ってーと過激派な神もいるのか?」
『ああ、邪神と言う堕ちた神達が、ヨーイチの言う過激派じゃな。邪神に関してはワシも良く分からぬ。文献にもあまり残っておらんからな』
邪神ねえ、ファンタジー世界ならではだな。
「ふーん。まあ関わる気ないから良いや」
そもそも邪神とかこえーし。神の名がつく奴にマジでロクなのがいない。ソースはアルテミスとアナスタシア。
『ブシャシャシャ、気をつけろと言う事じゃよ。最近この地に何故か、ドラゴンやグリフォンが湧いてるのも邪神のせいかもしれんからな』
邪神うぜえええ!! でもドラゴンとグリフォンって言うファンタジーの代名詞を選んだのは良い仕事だな。蘭にかかればあんなの雑魚だし。またドラゴン来ないかなあ、ドラゴンステーキ美味いんだよなあ。
「洋一よだれ。どうせ、ドラゴンステーキ食べたいなあとか思ってたんでしょ」
蘭が白い眼を向けてくる。
「ばばば馬鹿な事言うんじゃありましぇーん!」
ドラゴンステーキ、マジで恐ろしいな。想像しただけで涎が出る。
『ブシャシャシャ、そこで気絶しているのは神に選ばれた者か。まあ心根も闘いに向いとらんから、ヨーイチ匿ってやれ』
「匿うも何も、大事な畑仕事仲間だ! 本当は地球に帰してやりたいけど、帰し方もわからんし。戦いたくないみたいだから、農夫として住み込みで働いてもらう予定だ」
戦いを好まない光一に戦闘はさせない。俺の持論だが、子供は食って寝て笑って夢を見て、生きなきゃだめだ。子供が戦って死ぬなんて間違ってる。
『ブシャシャシャ農夫か、成る程のう。平和な時代で良かったな』
「爺いも住むか? 入居者は誰でも歓迎だ」
『ブシャシャシャワシは帰るわい。神獣にも会えたしな。それにヨーイチの呪いの解き方も探ってやるわい』
「おお! 俺のマイサンに毛が戻るなら有難い! 俺を大人に戻す方法を是非見つけてくれ」
『ん? まいさん? 毛? まあええわい。じゃあの』
爺いに地球の言葉は通じなかったか。あれ? 爺いは帰る時、普通にドアから出てくんだな。シュバっと消えるかと思ったのに、実に残念な爺いだ。