第119話 下手人は俺!?
不審者と俺の間で、奇妙な沈黙が生まれる。
「おっお前が、死霊術師だって事はわかっているんだぞ? 抵抗はやめて、大人しくしろ! 桜さんを返せ! 国の人達を操るのはやめろ!」
不審者は、ジーッと俺を見てなにかに気付いたかの様に手を叩き。俺の足元を指差す。
「は? 足元?」
壁の破片の下に紫色の手が見え、緑色の液体が広がっている。明らかに死んでいる、本当にありがとうございました
「なんじゃこりゃあああああ!!!」
「あっ貴方が犯人、貴方が不審者。王城の壁を打ち破って、そこの紫色の魔人ゲルニオスを、殺した」
目を泳がせながら言う不審者。
「げえっ! 俺が下手人!? どどど、どうしよう……ってそんな場合か! お前は一体誰なんだよ!」
「えっと私の事は、スルーして欲しいなあなんて。今は会いたくない人もいるからさー」
ニヤニヤと笑っていやがる。スルーするかぼけえ!
「は? いやスルーなんて出来るわけないだろ!」
「それじゃ! 探し人は無事だよ。城の地下にいるからね!」
不審者が突如俺の目の前から消え、蘭の飛ぶ音が聞こえてくる。
「洋一? 大丈夫?」
『ヨーイチ速過ぎ、城の壁ぶち壊していくし……ってヨーイチその足元に埋まってる死体は?』
「いやー。俺が、壁をぶち壊して入ってきたじゃん? その時に殺した感じなのかな? ちょっとよくわからないんだけど……」
『アタチがわからないから聞いているのに、事を起こした、犯人がわからないってどんな状況なのよ……』
リュイ、ジト目で見られても困るんだぜ。まあ下手人は、俺な訳だが……
「なあ、蘭自首って何処にすればいいんだ? 警察とかないよなあ……この国はもう兵隊すら機能してないし……このゲルニオスさんどうしたら……」
「はあ。洋一、先ず確認だけどゲルニオスさんって言うのは、この魔人?」
蘭が、魔人を羽で指し示す。
「なんで魔人の名前を知ってるの?」
「あっああ、さっき不審者がいて……そいつが、俺が魔人ゲルニオスをさんを殺したって……」
やっぱり俺が犯人だよなあ……。
「それを信じたのかあ。まあ状況的には、洋一が怪しいかもだけど、先ずゲルニオスの死体、斬り刻まれてるけど、洋一の蹴りでこうなるの?」
斬り刻まれてる? 俺のキックにそんな力は無いはずだけど。
「ならないかな? 多分だけど」
「で、面識も無い、スキルの鑑定も無い洋一がなんでゲルニオスの名前を知ってるの?」
「それは不審者が……」
「じゃあゲルニオスを殺したのは、その不審者じゃないの? そこに洋一が飛び込んで、犯人にされた的な感じじゃないの?」
おおう、探偵も真っ青な蘭の名推理だな!
『それで、不審者さんは?』
「あっああ、下に会いたくなッぶべら!!」
なにかが、俺の顔面にぶつかってきやがった!
「あっ洋一君、ごめんごめん。ゾンビ達が動きを急に止めるわ、ここに彼奴の気配がするわで、状況を確認したくて、とりあえず飛び込んで来たんだけど……チッ逃げられたか……」
師匠、良い顔で決めてるところ悪いのですが……重い、そして顔が痛い。ライダーキックされたよ、爆発しなくて良かった。
「師匠! どいてください」
「度々ごめんね。タピオカ飲む? 映えるよ?」
「タピタピって、懐かしいわ! 良いから、降りてください! 首が曲がるうう!」
首が痛い、マジで痛い。
『葵、ここにいた人知り合いなの?』
リュイが師匠に聞いている、確かに知り合いみたいなムーヴを、かもしだしてるしなあ。
「うん? ああ、彼奴は、亜梨沙は僕と同じ、勇者候補生さ。亜梨沙は修行中に、次元の狭間に落ちて、消えたはずなんだけどねえ」
勇者候補生? 勇者候補生ってなんだ? 次元の狭間って? 知らないキーワードが多過ぎる! 誰か解説して!
『地下に、生きている人の波長がある? 外からは感じなかったのに?』
「ああああ!! 師匠が不思議キーワードを沢山出すから忘れてたけど、桜さんが下にいるかもなんだよ! 不審者が言ってたんだ! 探し人が地下にいるって!」
「『それを早く言え!』」
リュイと蘭にWで怒られてしまった、そんな事言われても困るってばよ。
♢
急いで地下へと、歩を進める。ゾンビ達は、不気味な程静かにしている。中空を見て、こちらを一切見ていない。
「全く動かないんだな、ゲルニオスを倒したからかな? アレ神獣の魂は?」
「うーん。亜梨沙がいたなら、多分大丈夫だと思うけどねえ。彼奴ドジだし、余計な事ばかりするからなあ」
亜梨沙さんは、まさかのドジっ子かよ! 顔は帽子で見えなかったけど。可愛い女の子の匂いがしたからな! 不審者だったけど。
新ジャンル不審美少女! 爆誕!
『ヨーイチ、変な事考えてる場合じゃないでしょ! 早く地下に行かなきゃ』
「洋一は、直ぐに脱線するんだから。修行時代の集中力を見せてよ」
修行時代の集中力? 修行時代かあ、あの頃は鷹匠に早くなりたい、早く認められたい、早く師匠より活躍したいとかしか、思ってなかったからなあ。
「うーむ。わかった集中してみる」
桜さん、桜さん、桜さん、桜さんのおっぱい、忍者、コスプレ、桜さんの下着……桜さんのおっぱい!
「はっ! 桜さんを発見! こっちだ!」
見つけた! 桜さんは、まだ動いてる! かなりセクシーな格好になってるけど!
『えっ? 桜見つけたの?』




