第11話 罪悪感が限界突破
蘭が、光一の家を隣に作ってくれた。渡り廊下で俺の部屋と行き来出来る、真心サービス付き。寝具とかは無いから、レイ先生に頼まなきゃいけないな。
光一は、涙を流しながら感動していた。
光一の装備を脱いだ姿が、ガリガリクソンだったのはめちゃくちゃ驚いた。筋肉のかけらもない。骨と皮だけの身体。
「光一、貧弱過ぎだろ。こんなに重い装備つけてたら普通、鍛えられそうなもんだけど」
「確か女神様が私の装備以外は使えない身体にしたって言ってました。他の人が作った装備なんて……ありえないって」
馬鹿なのか? 栄養失調手前の様な姿にせんでも……
「はあ? 女神ってさクソビッチもそうだけどアホなのかな? 普通相手や状況に応じて装備なんて変えるもんだろ。ゲームやらなくてもわかるぞ普通」
「助けて貰った手前僕からはなんとも」
光一は女神に恩を感じている様だ、優しい奴だな。文句言ってもいいのに。
「律儀だねえ。蘭、畑って作れそうなの?」
「畑? 土魔法で直ぐに作れるよ」
「なら頼むわ。光一もさ、狩りは嫌でも農作業は出来るだろ?」
「お願いします! 畑仕事なら僕にもきっと出来ます!」
「はあ。わかったよ」
蘭がため息をついた後、家の裏へ飛んでいく。蘭は、相変わらず飛ぶスピードが速いな。
蘭を眺めていたら、メインブラッ○宜しくの、光りがピカッとし、目を開けると何という事でしょう、匠もビックリの大規模リフォーム。家の周りには大きな土の壁が出来上がり、テニスコートくらいの畑が四面出来上がっていました。
「これ、光一が管理するのか。大変だな、思わず某リフォーム番組の真似しちゃったよ」
光一が驚いた顔をしている。
「僕が、1人でこの規模を!?」
頑張れファーマー光一、俺は陰ながら応援しているぞ。
「バカ、洋一も一緒にやるんだよ。二人が食べるんだから当たり前でしょ。洋一は、まだ一人で狩りが出来る程強くないんだから」
「ゲェッ!? まーじまじかよ」
蘭の厳しいお言葉に、凄くげんなりする。
「当たり前でしょ。なんで光一に押し付けようとしてんのさ。私をこれだけ働かせたんだから、2人とも当然働くよね?」
「「もっもちろんであります!」」
蘭め、家族である俺を威圧してきやがった! 横を見ると光一も姿勢を正して敬礼をしている。蘭には今後逆らわない様にしよう、怖いし。
「私達、誠心誠意を持って畑仕事をする事を誓います!」
「誓います! 」
運動会の様に選手宣誓を済ませてから、俺達は畑仕事に精を出した。蘭が作ったからかはたまた異世界産だからなのかは謎だが、野菜の成長速度が異常に早い。種を撒いて水をあげたら直ぐに芽が出る。某映画のワンシーンの再現だ。
♢
「蘭は、強いよなあ。ドラゴンより強いし、この世界で蘭に勝てる奴いないんじゃない? 」
「どうかなあ。もしかしたらいるかもしれないよ? 慢心や油断を私は絶対にしないよ。地球にも私が勝てない、強い人はいたしね……」
蘭は、何か決意を秘めた目をしている。
「俺がもうちょっとマシなステータスだったら一緒に冒険とかもしてみたいよなあ。拠点はここにするとしてもさ」
「なら洋一は、もっと頑張らないとね」
「そういえば、リュイやレイ先生は大丈夫なのかね。あれから音沙汰無いけど」
「リュイ様の心配は全く無いでしょ、精霊だし。レイも何かあったら連絡してくるでしょ」
そんなもんかなあ。寂しいなあ、レイ先生のおっぱいが恋しいなあ。
「洋一、また変な事考えてるでしょ」
「そっそんな事もないよ? なあ蘭、光一はさ、多分帰りたいんだろうな。平和な日本にさ」
「それは洋一だって……そうなんじゃないの?」
平和な日本かあ。正直そんなに未練がないんだよな。
「俺はさ、蘭と一緒なら正直何処でも良いんだよ。それに何よりこの世界なら蘭と話せる訳だしな。魔物は確かに怖いけどさ、向こうでの狩猟も同じだから蘭がいればどの世界でも俺は大歓迎さ」
ナイスガイな笑顔でサムズアップして見せる。
「子供にされても?」
「ウグッそれはかなーり嫌だ。いつか強くなって俺の力であのクソビッチを凹ませてやる!」
あのクソビッチの奥歯をいつかガタガタ言わせてやる。
「私達の力ででしょ? 洋一だけじゃ色仕掛けに引っかかるからね」
「身もふたもない事を言うんじゃありましぇーん!」
蘭とたわいも無い会話をしていると、隣の家から紫色の光と共にリュイのデカイ声が聞こえてくる。
『洋一ただいまー!! ってあんた誰よ! 泥棒⁉︎ 死ねええええええ』
「えっちょアババババアババババ」
叫び声が聞こえて来たので急いで隣の家に行くと、ヤムチ○状態の光一が横たわっている。これは死んだかな?
「光一いいいい!」
『あっあれ? 知り合いだったの?』
冷や汗を滝の様に流すリュイ。視線が、めちゃくちゃ泳いでいる。
『あっああのね、帰ってきたら、家が2つあってどっちも似ててそのね、とりあえず入ってみたらこいつが居て、泥棒かと思ってつい』
「光一は優しい奴だった、貧弱な身体に貧弱な精神、女神に好きに生きろクズって言われてこの世界に来た被害者だったんだ、頼むリュイ……自首してくれ」
俺はリュイの手をそっと握る。
『わっ私は悪くない! これは事故よ、そう不幸な事故だわ!』
いやいやと首を振るリュイ。
「光一はなあ、光一はなあ、畑仕事をする仲間なんだ! 光一が居ないとあの畑全部俺がやらなきゃいけないんだ! それを事故で済ますなんて、お前の血は何色だああああ」
『それでも私はやってないの! 免罪よ!』
俺は抵抗をする、容疑者リュイに向けてびしりと指を指す。
「犯人はお前だあ!」
『アタチだって……何が何だかわからないッ! アタチだって自分がなにをしたのかわからない! もう分からないのよお〜おろろ〜ん』
ヨヨヨっと訳のわからない事を言いながらリュイが項垂れる。俺はリュイの肩を叩く。
「刑期が終わったら美味い飯でも食いに行こう」
蘭に凍り付くような視線を向けられる。
「2人共、恐ろしい位の大根役者ね。どいて光一を治さないと死んじゃうよ」
「『あっお願いしまーす』」
いやーリュイと犯人はお前だごっこ楽しかったなあ。また何かの機会にやろう。
「まっまだ……痺れが取れない、精霊様ですよね。僕、なにか失礼な事をしたみたいですいません」
光一が良いやつ過ぎて、俺の心が痛くなる
「ほっほら、リュイ一緒に謝ろう」
『そっそうね、光一だったかしら? いきなり雷撃かましてごめね? 怒ってるよね? 』
リュイと二人で謝罪をしよう、そう誠心誠意を込めて
「いえ特には、気にしてないですよ」
菩薩のように優しい光一に俺とリュイの罪悪感メーターは限界突破していた。
俺達は素早く土下座をし、誠心誠意謝罪をするしかないのだ。
「『本当にすみませんでしたあああ! 』」