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鷹と一緒に異世界転生!〜相棒任せの異世界大冒険〜  作者: 貝人
第七章 闇に堕ちた国
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第115話 安全装置って大事だよね?


 師匠と機械の化け物の激しい戦闘が始まり、爆風と魔力が吹き荒れる。師匠が一撃で倒せない敵を、俺は初めて見た。隙あらば俺が……


「やるねえ」


 師匠は、めちゃくちゃ楽しんでいる。


『ギギギギギ。流石生き残りだなあ!』


 機械の化け物は、笑っている。何故笑ってイル? 人を殺したのに? あんなに沢山殺シたのに?


「だけどもう飽きたよ、終わりにしよう」


『ギギギギギなにを……?』


 師匠の刀に青い力が収束していく。アレならあの化け物を殺せる。


「舞え魔力よ、斬り裂け次元よ、秘儀【亜空狼】」


 空間が捻れ狼の形を型取り、機械の化け物に食らいつき、引きちぎっていく。


『びゃあああ━━』


 機械の化け物が、絶叫する。酷く耳障りだ……。


「さあ、吐いてもらおうか。貴様なにを知っている?」


 あれ? なんで彼奴生きているんダ? なんで直ぐに殺サないんだ? なんで? どうして? 


 そうだ……俺がやろう。俺が手を下そう。


「蘭、レイ先生、俺なラ大丈夫だから。防御結界を外してくれ、ここジャ師匠の声が良く聞こえないから」


 早く殺しにいかないと。


「えっ? あ……うん」


 蘭の防御結界が解かれる、レイ先生の手を振り解き、俺はフラフラしながら、師匠達の元へ歩いていく。


『蘭! なにしてるの! レイも離しちゃだめじゃない!』


「ヨーイチの力が物凄くて、私じゃ抑えられなかった……」


 レイ先生が腕を抑え、なにかを呟いているな……。だけど俺は、向こうに行かなきゃ。敵の元へ行かなきゃ。ハヤク


『ヨーイチを止めなきゃ!』


 リュイが叫んでいるが、もう獲物は目の前だ。チガミタイ


「洋一君、近寄るのはやめてくれるかな? 殺気を出して、なにをする気かは知らないけど」


 師匠……邪魔だよ。そいつは、壊さなきゃイケナい。


「はあ。蘭ちゃん悪いね」


 師匠の刀が迫り、脳天にぶち当たる


「洋一! 葵、なにを!」


 俺は師匠に刀で殴られた、蘭が怒っている、早く立たなければ……


『蘭! 葵が正しいのよ! あのままじゃ機械の化け物をヨーイチは殺してたの! 憎しみのままに殺してしまったの……』


「ヨーイチであって、ヨーイチじゃなかった……」


「そんな、洋一が、殺す? そんな事あるはずがない! 洋一は優しいんだ! 貴方達に洋一のなにがわかるの! 私と洋一は、ずっと二人で暮らしてたんだ! お前が刀で洋一を傷つけた!」


 蘭が悲しんでイル


「蘭ちゃん! 落ち着いて! ヨーイチは気を失ってるだけだから!」


 ごめんよ蘭、今立つから


『蘭! 貴方まで呑まれないで! ちょっと痺れるわよ!』


━━バチン!


 リュイ……蘭に攻撃をしないでくれ……


「えっああ……私、洋一を回復しなきゃ……」


 蘭が俺の側に来て、回復魔法を使ってくれる。早く、早く起きなければ


「葵……説明して」


「ああ、洋一君は、この国に来てから憎しみに染まり切ってたからね。多分気絶させなかったら、コイツを殺してたんじゃない? 僕が、情報聞き出すのに邪魔だから気絶させたんだよ」


 ニクシミに染まる?


「邪神の因子が、彼の中にある。これ以上憎しみを増幅させたら、戻れなくなるよ。意識は、落としたままにしないとね」


 戻る必要がアルノカ


『それはだめだよ。葵君、柊君には事実を見せなければ。彼の目で見て、心で感じて、歩ませなければ』


「さっ堺さん?」


 堺さんが、俺の口を使い喋りだす


『やあ。蘭ちゃん、冷静な君もてんぱっていたのかな? 彼の心から、溢れてくる憎しみに呑まれたのかい? 君なら柊君の異変に気付けたはずだよ? 彼の心と言葉が、一致していなかった事を』


 心と言葉……?


『柊君は、人間として成長しなければならない。彼の身に宿る、古き邪神の力は、彼の身を蝕んでいく。邪神の力に対抗する精神が無ければ、彼は、身を奪われる。そうとしたら、古き邪神の再誕だよ。僕や、葵君が全力を出しても勝てないレベルのね』


 堺さんが、なにを話しているのかわからない。


 ワカラナイ?


 本当にそうか? 俺はわかっているんじゃないのか?


『だから僕は、このタイミングで行くように指示をしたんだよ。もう少し早く教えてもよかったんだけどね。柊君の成長の為には、仕方のない犠牲だね』


 ロザリアさんは俺の為の仕方ない犠牲? 仕方ない? 人が一人死ぬ事が仕方ない犠牲? 堺さんはこの現状を知っていた? ならどうして? なんで?


『蘭ちゃん、君の言いたい事はわかるよ? だからここだけの話って奴だよ。まあ早く教えても、間に合ったかどうかはわからないけどね』


 間に合ったかどうかはわからない。でも間に合ってたかもしれない。


「洋一は、大丈夫なんですか?」


『ん? 今は大丈夫だよ。柊君の中の邪神の因子も、落ち着いているしね。ただ、そうだね……安全装置として、僕が柊君の中にしばらくいよう』


 俺の中に堺さんがいる?


「堺さんは、どうして洋一に……?」


『僕は僕の目的の為に、柊君を護りたいだけだからね』


 堺さんは俺になにを期待しているんだ? 無力な俺になにを……。



 俺は蘭達を見つめている。堺さんが蘭達と喋っている光景を。


『やあ柊君、どうしてうずくまっているんだい?』


 堺さんの優しい手が俺の頭を撫でる。


「堺さん?」


『そう堺さんだよ。君が意識を手放していないのは、まあ気づいていたよ。ただあのまま蘭ちゃんを暴走させる訳にはいかないからね』


 堺さんに聞かなければならない。


「堺さんは、俺になにを期待しているんですか? それにロザリアさんが必要な犠牲だなんて俺には思えない!」


 手を振り払い堺さんに掴みかかる。


『君に死を感じさせる為だよ。君の無作為な英雄願望が、君を殺し、結果新たな邪神になる』


「ロザリアさんは、ロザリアさんは!」


『僕が教えても、教えなくても彼女は間に合わなかったよ。彼女は戦った、民を守る為に。君は彼女の魂を弔うべきなんじゃないのか? 君が邪神に飲まれたら原因となった彼女の魂は救われないんじゃないのか?』


 堺さんの言葉が重くのしかかる。


『僕は、僕達は君の敵じゃない。憎しみに任せるのはやめるんだ。それは誰のためにもならないからね』


 そう言うと堺さんは俺の目の前からいなくなった。


 さっきまで見えていた視界もなくなり、俺は堺さんの言葉を一人噛み締めていた。

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