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鷹と一緒に異世界転生!〜相棒任せの異世界大冒険〜  作者: 貝人
第七章 闇に堕ちた国
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第114話 ロザリア


 かつて栄えていた面影はなく、見渡す限り瓦礫の山、所々に血痕があり、焼けた臭いがする。


 戦闘の後も色々な場所に点在している。異世界情緒が溢れていた、以前のアスベルク王国はそこにはなかった。


「あれ? ここ廃墟? アスベルクの城とか見当たらないけど……」


 いったいなにが起きたんだ? 桜さんや王様やロザリアはどうしたんだ?


「強い気配が沢山あるねえ」


 師匠は、剣に手をかけいつでも抜けるようにしている。


「蘭、桜さんは?」


 蘭は首を振る。嫌な予感がする……。


「念話石をここに落としてるって事はもしか「まだ決まってない!」そうね、まだわからないよね」


 蘭の声のトーンが落ちている。まだ決まってないうちから、口に出したらダメだ……だめなんだ! 諦めない、俺は絶対に諦めない。手が届くなら、絶対に助ける!


「ロザリアが向こうにいるみたい……」


 蘭は酷く弱々しい声で、瓦礫の山を羽根で指し示す。


「「洋一君(ヨーイチ)、ここで待ってて」」


 師匠とレイ先生が、揃って俺を静止する。


「なんで? 俺が助けに!」


「ダメだ。見ちゃいけない」


 師匠に強い威圧をかけられ、その場から動けなくなる。蘭と師匠は、瓦礫の山に向かう。


「ヨーイチ、ここは葵と蘭ちゃんに任せて……ギルドマスターは強いからきっと、大丈夫、大丈夫だから……」


 レイ先生の声が、身体が震えている。


『ヨーイチ、ロザリアの魂は彼処にいるよ』


 リュイ? なに言ってるんだ? ロザリアさんの魂? 魂ってなんだよ、そこにいるんだろ? 生きてるんだろ? なあ? 魂ってまるで……


「リュイ、なんの冗談だ? ははは、ロザリアさん強キャラムーヴしてたじゃん? だからきっとなあ……」


 リュイは俺の言葉に答えず、師匠と蘭を見つめていた。


 血と肉が焼けた臭いがする。


 師匠は瓦礫から、黒ずんだなにか(・・・)を抱き抱えている。ゆっくりとした足取りで、歩いてくる。


 黒ずんだなにかは、手や足が見当たらない。そう見当たらないのだ……。


「あっあっあっ……あ」


 喉が渇き、上手く声が出ない


「残念だけど、間に合わなかったみたいだね。何処かに埋葬しよう。このままじゃ、可哀想だからね」


 師匠のコトバがリカイ出来ない


 あんなに綺麗だった紫色の髪も、煤で汚れて、見る影もない。


「うああああああ!!!!」


 俺の叫びが虚しく響き渡る。蘭が、羽根で俺の顔を包む。蘭に縋り付き俺は、泣き喚く。


「洋一、沢山の人が死んでいるわ。ここから先、見たくもない光景が続くわ。レイとここにいてもいいのよ? 敵は私と葵で……始末するから」


 敵? てき? テキ? 殺さないと……コロサナイト……ころさないと


「ダメダよ、蘭、オレもイクヨ」


「……そう。洋一、私やリュイやレイや葵がいる事を忘れないでね」



 城へと続く道は、更に酷い光景になっていた。人の身体と、思わしき物がところどころに落ちている。俺は、歯を強く噛みしめながら歩く。


「酷い光景ね……。アスベルク王国には、冒険者も沢山いたし、兵の練度だって、決して低くなかったはずなのに」


 師匠は無表情で歩いている。


『ライルのお店も、おばちゃんの店も壊れちゃったね……』


 ライルの店を見ながら、リュイがポツリと呟く。


「ライルさんは!」


 走り出そうとして、師匠に肩を掴まれ止められる。


「師匠! ライルさんが生きているかも!」


 師匠は、無言で首を振る。


 クソオオオ!! また間に合わなかったのか! 俺はまた……!


 それは、地面から現れた。機械の身体、単眼、身体の所々からコードが出ていて、機械の尾と角を持つ化け物。


『勇者、申し子、神獣━━ミツケタ』


 そいつは、俺たちを見るなりそう言った。


「君が、アスベルク王国を潰したのかい? 君はそれ程強くないと思うんだけど?」


 師匠は、笑いながら機械の化け物に語りかける。


『ググググ━━勇者よ。国を潰したのは確かに我とは別だ、だが我にも同じ事はカノウ』


 独特な笑い声で師匠に話しかけ


『━━知りたくば、我を殺してみる事だな、神獣を喰らった我にカテルのならな━』


 化け物はそう言い、機械の尾を地面に叩きつける。


「へえ……。神獣を食べたんだ、なるほどねえ」


 師匠の殺気と魔力が、爆発的に高まる。


 蘭は、俺の肩で防御結界を張っている。


「洋一、下手に飛び出さないでね。レイも洋一の側にいて。洋一が飛び出さないように抑えてて」


「……わかったわ」


 レイ先生の声は、緊張しているようだ。レイ先生と蘭は、二人がかりで俺の事を押さえつけている。


『あの化け物の中に、神獣の魂が囚われてる! 許せない!』


 リュイは機械の化け物を睨み付けている。俺は、ただ見ているしかないのか? 


 機械の化け物の首を引きちぎりたい、手足をもいでやりたい、ロザリアさんにした事を全て、やり返してやりたい


 アア……コワシタイナア……


『ヨーイチ? だめだよ? 葵の邪魔になるから。心を落ち着けて?』


 リュイに指を握られる。リュイの暖かさが、伝わってくる。


 心は、落ち着いてるはずなんだがな。


「それと君、僕を勇者と呼ばないでくれるかな?」


『ギギギギギ━あの世界で、魔王を倒し、魔の者を全て殺し尽くした貴様が、勇者デハナイと?』


 機械の化け物は、師匠の事を知っているのか?


「君……なにを知っているのか、吐いて貰うよ?」



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