第112話 エルフのお尻を独占だ!
因子を全て取り除いた後、ファンキー爺いさんが、汗を拭いながら
『こりゃ……きついわい』
と呟いた。だが、待って欲しい。スキルを使ったのは俺、尻を触ったのも俺、オナラをかけられ続けたのも俺。エルフ達は、何故か因子を取り除く瞬間に、必ずオナラをする。
しかもとんでもない悪臭、なに食ったらこんなに臭くなるんだよ。
リュイや師匠は、全力で距離を取っている。レイ先生は、涙目になりながら他の人の看病をしていた。
蘭は、城と神殿を建て直すからと、戦線離脱している。
残った俺と、ファンキー爺いはエルフのオナラ臭に犯されている。
「きついのは俺だよ……」
『いやいや、儂じゃよ! 神が臭いとかアリエンティーじゃろが!』
なにが、アリエンティーだ! ふざけんじゃねえ!
「お前が、尻からしか消せないとか嫌がらせをしたからだろ! もっと別の場所にしてれば、こんな思いしなくてすんだんだよ! しかもなんでエルフが美形じゃないんだよ! ガチムチの筋肉エルフなんて嫌だよ! これがゲームなら、糞ゲー確定だね!」
ありったけの不満をぶつけてやったぜ!
『はあ? エルフが美形なんて、誰が決めたんですかあ? エルフにだって個体差はありますう。貧乳もいれば巨乳もいますう! 軍隊に配属されてる奴等なんだから、ムキムキで当たり前ですう! はい論破ー!』
ぐぬぬぬ! すげームカつく、この爺い! だが、手を出したら負けだ。手を出す訳にはいかない。
「あ痛っ!」
ファンキー爺いに頭をぶん殴られた! ふざけんな! 俺が我慢してるのに!
「てめえ! やりやがったな!」
ファンキー爺いは、舌を出しながら爆笑して
『バーカ、バーカ』
俺を煽りながら消えていった。
「あああああ!!! 糞爺い! 覚えてろよ!!」
俺の慟哭は虚しく空に響き渡った。
♢
エルフの人達が、目を覚ました。一部フルチンのままで、エルフの女性から悲鳴が上がったのは言うまでもない。
エルフの人達は、亮と師匠を崇めた。亮は、勇者で神獣を救った契約者的な位置で、師匠は悪政を行っていた将軍を倒したからだそうだ……。俺? 俺は特になにもないよ? 尻を触っただけだし、戦ってもいないしね。
「君が私達を、邪神の魔の手から救ってくれたのか。皇国の軍人として、男として君を尊敬する! 皆ヨーイチ殿に敬礼!」
なんと俺のところにも御礼が……! 全員男だけど、嬉しくなんてないんだからね! ほんとなんだからね!
「つきましては、私達の尻を如何様にでも使って頂きたく! お願いにあがりました!」
尻を使う? えっ? 他人の尻は、使うものじゃないですよ? 女性にならまだしも、何故俺にこのガチムチ達さ尻を突きつけてくるんだ?
「えっいや、あの遠慮したいなーなんて」
俺が遠慮をすると、エルフの男達が一斉に涙を流し
「私達の尻では不満でありますか! ああ、私達の鍛え方が足りないばかりに……! くっ! 犯せ!」
犯せじゃないよ、犯さないよ。ヤバイよ、なんでエルフの男達にモテモテになるんだよ。ウホッ良い男っ! って言う訳ないだろ!
「おっおお、俺達は、まだ邪神を倒さなければいけなくて、道半ばだから、あのその」
男達の視線が、俺の股間に集中している。なんでだよ! 見るなよ!
「わかりました! 我等皇国軍は、尻を鍛え上げ必ずや、貴方に見合う尻になりましょう! 皆、再度ヨーイチ尻王に敬礼っ!」
洋一尻王ってなんだよ……。
「「「「「ヨーイチ尻王万歳!」」」」」
涙を流しながら、万歳三唱してるよ……。女性のエルフの方々が、漏れなく皆んな引いてるよ……。ケモ耳パラダイスも、エロエロフパラダイスも、この異世界にはないんだな……。ああ、蘭と一緒に違う世界に行きたい。
「あはは。ヨーイチ、すっかり人気者ね」
レイ先生が、涙を流しながら笑っている。そんなに面白かったのか? 俺は悲しんでるよ? むしろ恐怖してるよ? 貞操的な意味で。
彼奴らに組み伏せられたら叶わないよ? 逃げられないんだよ?
「レイ先生、酷いよ……」
「あはは、拗ねないで。ヨーイチ、叔父さんを助けてくれてありがとね!」
レイ先生にハグされ、頬に柔らかい感触があたる。レイ先生の息遣いが、直ぐ近くで聞こえる。
そう俺は、レイ先生にキスをされたのだ! 頬だけど!
なにを言っているかわからない? 俺にだってわからない! チューして貰えた! ほっぺだけど! 産まれて初めて、女性にチューして貰えた! ハッハッハ! これで俺は、童貞の諸君より百歩は前身したぜ! これからは、俺を童貞のカリスマと呼んでもいいんだぜ?
「きゃっ! ヨーイチ顔が真っ赤よ! それに鼻血が! 大丈夫!?」
鼻血が止まらないぜ!
「レイ、洋一は大丈夫よ。リュイ様、きついのをお願いします」
お願いします? 蘭はなにをお願いするんだ? まさかリュイからもチューのご褒美か? いやいや、リュイはまだ幼いんだ、そんな事をさせる訳にはいかな……
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
『ヨーイチの馬鹿! スケベ! アッアタチにもチューさせようなんて! 100万年早いんだからね!』
そんな、何故心が……いやご褒美貰えるって期待しただけなのに……いつもより、電撃の威力が、高すぎるんだぜ……




