第10話 イケメンはお断り
「何でここにに**風の一軒家が? まさか同郷の人が? あの! すいませーん、誰かいませんか? お話を聞きたいんですが」
外を覗くと家の玄関にやたらと派手な装備のイケメンが居る。ガチャガチャやかましいな。知らない人だし居留守、居留守。
「洋一、開けてあげないの?」
蘭が止まり木から、俺に声をかけてくる。
「リュイとかレイ先生クラスの可愛い女の子なら直ぐに開けるよ、だけど男だよ? イケメンなんて爆発して死んで欲しいし」
蘭と話していると外から
「話し声がするぞ! いるじゃないか! おーいすいませーん開けてくださいー」
ゲッあのイケメン地獄耳かよ。あーうるせえシカトシカト。早くレイ先生とリュイ、帰って来ないかな。
「あのーもしもしー! 怪しい者じゃありませんよー同郷かもしれないんだ! 僕は諦めないぞ!」
自分で怪しい者じゃないとか、めちゃくちゃ怪しい奴だな。窓から見てみると、イケメンの奴半泣きだし、ん待てよ? 同郷?
「あのー。そんなにドアを、ガチャガチャやらないで下さい。今開けますから」
そこには黒髪黒目身長は170センチ位の白銀の騎士の顔は目もデカいし、垂れた眉が自信が無さそうな感じを出している、愛され系って奴か? アイドルグループに一人はいそうな奴だな……。イケメンは爆発しろ。
「黒髪黒目! やっぱり! 君は日本の人だよね? よかった、同郷の人だ、あああ……よかった。この世界にも、日本人がいて」
俺に抱き着き泣き崩れたイケメン、装備が当たって痛いんだが……最低最悪な気分だぜ。
「あっあのー?」
とりあえず声をかけるか。早く離してほしいし。
「もう、二度と同郷の人に会えないと思った。英雄だとか勇者の再来だとか言われて、魔物や盗賊と闘わされてばかりでうっうっ……」
凄くうざい、まじでうざい。イライラしてきたぞ。
「五月蝿え! 男だろ泣くんじゃねえ」
メソメソうるさいから、イケメンの頭を引っ叩いてやったら予想外の反応をしやがった……!
「痛っ、痛くない? あっああ、ごめん、ごめんよ」
男の涙なんて誰得だよ……しかも痛くないのかよ!
「んで? 同郷がどうとか言ってたけど、日本から来たの?」
「失礼しました! 僕の名前は日比谷光一、歳は16歳。東京で交通事故に遭い死ぬ直前に女神アナスタシア様に助けられて、この世界に転移して来たんです」
死ぬ直前だから転移か? 俺は死んでからだから転生だけど
「事故の直前に助けられたのか。そのアナル、いやアナスタシアって、金髪の痴女か?」
「痴女!? いや僕が会った女神様は赤髪だし、痴女では無いと思うけど……いや実は痴女だったのか?」
痴女じゃないのか、あいつまじで無名だな。イケメンを助けたのは赤髪か、神って沢山いるのか?
「チッ、痴女とは関係ないのか。どうしてこんなところに?」
「この女神様から頂いた装備が原因で祭り上げられてしまい、戦いを強要されてそれで…………」
それから光一はポツリポツリと身の上話をしてくれた。
召喚されて直ぐ盗賊に襲われてる人がいて、何とかスキルを使って助けたら、襲われていた人が国のお偉いさんだった。
それから強引に国に連れてかれてステータスや装備を鑑定され、魔物退治やら盗賊退治に連日駆り出されるようになり、終いには人間同士の戦争に行けと言われて、怖くなりその国から逃げ出したらしい。
おまけに装備はこれ以外付けられないらしい。
最後以外は王道テンプレじゃねえか。
「要はヘタレて逃げたら、日本家屋があって、日本人がいたから感極まって泣いたのか」
「うっまあその通りなんだけど、洋一君はどうやって来たの? 」
この位で狼狽るなイケメンよ。
俺は実年齢、前の職業、召喚された経緯や如何に女神アルテミスが糞かを話した。蘭が神獣である事も含めて。
「そんな酷い女神様もいるんだね。ちなみに、僕がいた国ではアナスタシア様が信仰されてたよ。確か僕が、向こうで読んだ英雄譚に出てくる邪神に似たような名前があったような気がする……」
「邪神あー痴女だしな。うん、邪神だろう猥褻物陳列罪的な意味で」
「猥褻物陳列罪で討伐される邪神って嫌だな…………」
「光一君、アナスタシア様に魔王とか居るとか言われたか?」
おお、蘭ナイス質問
「いや、僕は顔がタイプだし好きに生きなさいって。それにチートや装備もあげるから人生楽しんでこーいって送り出されたよ」
「軽っ! めちゃくちゃ軽いなアナスタシア」
あいつとは違うタイプだが、とんでもねえ女神だ、頭が軽すぎる。パーリピーポー系だな。
「ねえ、光一スキルとか称号見てもいいかな?」
「おっ蘭、英雄と言われるような奴のステータスってやっぱ気になるよな! 光一見せてよ」
「構わないけど、でもどうやって」
蘭は壁にステータスを映し出す。
日比谷光一
16歳
職業ーー
称号 チキンハート 祭り上げられた男 転移者
レベル15
体力500
魔力300
攻撃力650
防御400
素早さ700
運10
スキル
剣神 (剣技全てが扱える)・アイテムボックス ・鑑定・鼓舞(味方の攻撃力と防御を30アップ)・精霊眼(精霊を見たり、言葉を交わしたり、精霊を瞳に宿し力を借りる事が出来る)
「強っ! 何だよめちゃくちゃチートじゃん」
すっげえ、情けない称号以外チートのオンパレードだ。
「こんな力いらないよ、魔物は怖いし……人を殺すなんて無理だし。僕は平和に暮らしたいだけなんだよ。戦いたくないんだ」
優しいんだな光一は。
「自衛の手段があるだけましだろうが。俺なんて村人以下だぞ。同年代でギリギリ勝てるかどうかってレベルだ」
「洋一は弱いからね、だから私がいるんだけど」
自虐発言にもフォローしてくれる蘭優しすぎだろ! 惚れてまうやろ!
「2人は良いコンビなんだね、羨ましいよ。2人は人里に行かないのかい?」
当然気になるよなあ。
「行かないって言うかステータスが貧弱! 貧弱う! 過ぎて行けない的な? それに特に今は不便無いしな。いっそここに永住しようかなって考えてる」
「そんなんだから洋一は、職業引きこもりなんだよ」
蘭め、バラしやがった! 歳上の貫禄的なの出したかったから触れなかったのに、まあこの幼い見た目じゃ無理か。
「そっそんな職業がこの世界にはあるのか」
光一の野郎、調子乗りやがって。絶対勝てないから喧嘩売らないけど、スキル無しでも勝てる気がしないし。
「なんなら光一も、ここに住むか? 魔王もいないし、好きにしていいんだろ?」
「えっいいの?」
「狩りが嫌なら、畑作って畑仕事でもするか? 狩りは俺と蘭がやるし」
同郷の子供が軍事利用されんのとか、正直心が痛いし。蘭頼りになっちゃうけど、家と畑を用意してやれば、俺は野菜が食える、彼は肉が食える。WIN WINの関係だな。
「戦わなくていいの?」
怯えてんなあ、まあ普通の子供が、犯罪者とは言え殺せとか、戦争に行けとかなあ。
「16の子供が無理に戦う必要はないぞ? 幸いここは立ち入り禁止の魔獣の森らしいから、来たとしてもレイ先生くらいなもんだからな」
俺がそう言うと、光一はまた泣き出した。余程辛かったんだろう。狩りをした事の無い人間がいきなり、生き物を殺せだ、刃物や悪意剥き出しな大人と、真正面から戦えなんて、チートステータス持ってても無理だよな。
「ああ、好きなだけいたらいいよ。なっ蘭?」
「使命も無いんだし、無理に戦う必要は無いと私も思うよ。洋一は強くなりたいみたいだけど、光一はそうじゃないんでしょ? そのステータスあれば生きていけるしね」
そのステータスが俺には羨ましいんだけどな。努力でいつか超えてやるぜ!