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鷹と一緒に異世界転生!〜相棒任せの異世界大冒険〜  作者: 貝人
第六章 エルフの国へさあ行こう!
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第101話 皇国の秘密 乙女の涙


 憎い人だとしても、人が死んでパーティーか。レイ先生、主催のパーティーを俺は……。


 パーティーが終わり部屋に籠り膝を抱え、地球との死生観の違いに思い悩む。


『ヨーイチ?』


 リュイが、心配そうに俺の顔を見ている。


「いや、なんでもない。なんでもないよ」


 蘭が梁の上から降り、俺の膝の上に着地する。俺は、蘭をそっと抱きしめ心の内を話す。


「異世界だから、仕方ないのかなあ。人が死んで、葬式ならわかるけど……パーティーはなあ。いくら悪い人でもさ……なんだかなあ」


「洋一、気にし過ぎちゃダメよ。いくら考えても、育ってきた世界も、価値観も違うんだからさ。レイが、皇国でどんな扱いをされていたのか、皇国の将軍がどんな悪政をしていたのか、私達は知らないしね」


 地球にもないわけじゃない、悪政者が死んでお祭り騒ぎになる事が……。


「うーむ」


 難しい問題だなあ。皇国の人は、レイ先生しかいないし。


『皇国に行って、自分の目と耳で見たり聴いたりしたら、わかる事もあるんじゃない?』


 リュイの言う通りだ、俺はなんにも知らないんだしな。


「それしかないか。師匠は……ダメって言っても来るよなあ。まあなんとかなるか」


━━━コンコン


 ドアをノックされる。


「どうぞー」


「ヨーイチ? どうしたの? ご飯、美味しくなかった?」


 ドアが開くと、心配そうな顔をした、レイ先生が立っていた。


「うーん、あのさレイ先生、皇国の将軍ってどんな人なの?」


 レイ先生は、顎に手をあて一息つく。


「難しいし、長い話になるわよ?」


「いいよ、ちゃんと聞きたいし」


「そう、じゃあ座るわね」


 レイ先生が、俺の横に座る。……良い匂いがする。


「先ずあの人は、私の父様を殺して、今の地位に着いのよ。先代将軍である、ジオ・コーラルを殺してね」


 いきなり、衝撃の展開だ。レイ先生のお父様が、先代の将軍様で、師匠が刈り取った人が親の仇だったなんて……。


「えっ……じゃあ……親の仇だったんですか?」


「仇かあ、仇と言えばそうね。皇国は、少し特殊なのよ。武功が第一なの。強ければなにをしても許される。新しい将軍になるには、現将軍を倒すしかないの。だから父様も、倒される覚悟はあった筈よ。勝負事態は、正々堂々とした者だったしね」


 おおう、リアル戦国時代だ。弱肉強食かあ……。強ければ生き、弱ければ死ぬって感じかあ。


「だから、父様が負けた時もああ、負けちゃったのかあ。みたいな感じだったのよ。元々忙しい人で、私も式典でしか会った事がないしね」


 随分と特殊な親子関係だな。


「その……寂しくなかったの?」


「うーん、母様や姉様や兄様がいたから、寂しい気持ちはなかったよ。皇国では、当たり前の事だしね」


 ドライと言えば、ドライな関係だなあ。地球でもそう言う家庭はあるけど……。


「父様の政治は、上手くいっていたわ。父様が政治をしていた頃は、差別主義も少なかったわ。今の皇国の将軍、ゲイン・ジグラールに変わるまでね」


 レイ先生のお父様は、きちんと政治をしてたのか。流石、レイ先生のお父様。生きてる間にお会いしたかったぜ。


「そのゲインって、どんな人だったの?」


「ゲインは、他種族を嫌っていたわ。ゲインの母が、人間に殺されてから特にね。ゲインは、母が殺されてから、どんどん荒んでいったわ。人間も獣族も魔族も、エルフ以外の種族は全て殺すって、口癖の様に言ってたわね」


 母親を殺した種族以外も殺す? 母親を殺した種族を殺したいならまだわかるが、逆恨みにしては苛烈だな。


「邪神の因子に囚われていたのかもね」


 蘭の言葉で気付く、多分母親が亡くなった悲しみで、因子が作動したのかな? 最後に戦った相手が悪かったとかしか言いようがないけど。


「邪神? 邪神ってど言う事?」


 レイ先生に、邪神の説明はしていなかったか。一から説明しないとだな。皇国の神殿にも行かなきゃならんし。


 俺達は、レイ先生に邪神について、邪神の神殿を回らなきゃ行けない事を伝えた。


「ヨーイチ、歯を食いしばりなさい」


「え? ふぎゃっ!」


 えっ? なんでビンタ? どうして? 何故何故WHY!?


「ヨーイチ! 危ない事をしないって、私と約束したよね? 命の危険が、ある話ばかりじゃない! どうして帰って直ぐに、ちゃんと話さなかったの!?」


 レイ先生の瞳から、大粒の涙が流れる。


「私は、蘭ちゃんよりリュイ様より弱いわ。だから私には言えなかったの? 私は、そんなに頼りない?」


「レイ、洋一は、巻き込みたくなかっただけだから」


「━━蘭ちゃんごめんなさい。少し感情的になったわ。頭を冷やしてくる……」


 泣きながら部屋を出て行くレイ先生を、俺は止められなかった。なんて声をかけて良いかわからなかったから。女の人の涙は、母親がフラッシュバックするからどうにも苦手だな。


「蘭、俺……」


『ヨーイチ! 追いかけなよ! レイが泣いてるんだよ? ヨーイチを心配して、ヨーイチに頼りにして貰えない、自分の弱さが辛くて!』


 リュイに叱咤される。リュイに言われた事を、頭では理解出来ているんだけどさ。


「でも、俺なんて言えば……」


『ヨーイチ! 男でしょ! 泣いてる女の子を抱き締めるくらいできないの!?』


「だっ抱き締める!?  そっそんな事」


『早く行け!』


 リュイに喝を入れられた、情けないな俺。


「洋一、男を見せてきなよ!」


 蘭にまで、後押しされちまった。もう行くしかないか! 男ヨーイチ、突撃します!

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