表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鷹と一緒に異世界転生!〜相棒任せの異世界大冒険〜  作者: 貝人
第五章 怪異が統べる妖の国
100/291

第88話 縁に恵まれた男


 アーレイが扉を開くと、そこには黒い煙を立ち上らせながら、濁った目をした猪の化け物がいる。身体はライオン位だが……地球にいた猪より迫力がある。


「祟り神かよ……」


「グウウウオオオオオオオオオ!!!」


 耳をつんざくばかりの叫び声、大気も叫びに応じて空気も振動している。


「うるせ! クッソこうなりゃ焼けだ!」


 猪に向けて、魔銃を乱射する。雷を纏った弾丸が猪に直撃する瞬間、弾が逸れてしまう。


「なっ! 弾が逸れた!?」


「洋一君! 魔法無効の耐性持ちだよ! 物理で攻めるんだ!」


 師匠の有り難いような、有り難くないようなアドバイスが聞こえる。


「チックショー! こうなりゃ自棄だ! おりゃああああ!」


 俺は猪に向けて走り出す、猪の濁った目と俺の視線が合う。猪はニヤリと笑いこちらに突撃してくる。


「ゲェッ! なんでだよ!」


 刀の切っ先を猪に向け、俺は走る。止まるわけにはいかない。


 猪も俺に向け走る。


 瞬間、猪と俺がぶつかる。負けるかあああ!


「どりゃああ!! げふええええ」


 猪に直撃され、俺は無様に5m程吹き飛び壁に叩きつけられる。口から血が出て、呼吸が荒くなる。


「洋一! 防御魔法 結界法陣(けっかいほうじん)


 蘭が結界で猪を抑え込んでいる。何とか紅夜叉を支えにし、自分の身体を起こし猪の方を見ると、蘭が魔法で猪を抑えている。


 ━━ダメだ、蘭、戦っちゃだめだ、お前と同じ神獣なんだ……。


 瘴気だってどんな影響があるかわからないんだぞ━━。


 師匠の声が、静かに部屋に響く。


「魔法無効、雷の精霊様はお休み中、蘭ちゃんは魔法特化だから、抑え込む位しかできない。洋一君の身体はボロボロ、……これはピンチだね」


 師匠は剣を抜いている、無骨だが力を感じさせる剣。


「洋一君、戦いと言うのは命がけだ。逃げ腰になってはいけない。護るべき対象を、戦場に立たせてはいけない」


 師匠の言葉が、心に響く


「いつも誰かが、助けてくれる訳じゃない。だけど護りたい人、特に大切な人がいるなら、倒れるな、折れるな」


 俺は立ち上がろうとするが、足に力が入らなく無様に倒れてしまう。


「何故君は倒れている? 何故大切な人に護られている? 違うだろ? 君はまだ、戦いのリングを降りていないんだろ? なら刀を支えにせずに自分の足で立ち上がれ。刀は、支える為の物じゃない。敵を斬り、道を切り開く為の道具だ」


 歯を食い縛り、口から血を流したまま、よろよろと立ち上がり、紅夜叉を猪に向ける。俺は倒れちゃいけない、蘭が後ろにいるんだ、蘭を護らなければ、もう失うのは嫌だ━━


 意識が途切れそうになる、だけど俺が護らないと、歯を食い縛り耐える。


「良く頑張ったね。洋一君って……あらあ、その状態じゃ動く事はできないね。仕方ない。洋一君、見ていると言い僕の力の一旦を。さてと、蘭ちゃん魔法解除して良いよ、お疲れ様。洋一君を回復させてあげて」


「はっはい!」


 蘭が俺に回復魔法をかけてくれている……。ありがたい、これで意識を失わずに済む。


「そんな姿になっても、敵の強さはわかるんだね。だけど、洋一君を舐めてかかった時点で、君の負けだよ。終わりにしようか、長き時を護ってきた神獣イヌイよ。安らかに逝くと良い。君の名は、僕と僕の剣である、不知火(しらぬい)が覚えておくよ」


 鈴の音が響くと猪の首がずるりと落ち、悲鳴を上げる間もなく、黒い煙となり、イヌイは消え去る。


『異界の勇ある者よ。感謝する』


 どこからかファンキー爺いの声が聞こえる。霞んだ視界では何処にいるのかわからない。


「へえ、今頃出てくるんだね。神様の癖に。子供にあんな危険な事をやらせるなんて、正直いかれてるね。力ある大人や天使でもいいだろ? それなのに神獣とペアってだけでやらせるのは鬼畜過ぎない?」


『気付いていたのか』


「もちろん。って言うかバレバレだよ」


『人を超えた者か━━』


「あまり、舐めないでくれるかな? 本気で隠す気があるなら、神界から見てれば良いのにさ。神殿に入る直前に、顕現していたら、僕じゃなくても気付くよ。さっそろそろバトろうよ!」


 師匠がファンキー爺いに剣を向けている。


『そんなに殺気を向けられても、御主とは戦わないぞ。それより、イヌイに祈りを捧げさせてくれ』


 ははは。師匠すげえな……元気ありまくりかよ。


「アーレイちゃんは、気絶しちゃったのか。実質一人で戦ったのか〜。うーん面白い。洋一君は、鍛えたら強くなるだろうなあ。楽しみだ」


 師匠の笑顔が怖い。


「蘭ちゃん、外にも敵がいるから、魔力を温存しときなよ?」


「えっ? 敵ですか?」


「まだかなり遠いけどね。必ず戦いになるから、気を引き締めてね。さっきの洋一君に対して言った言葉の意味は、君もわかるだろう?」


「━━はい!」


 外にも敵がいる? 確かに師匠はそう言った。これはますます寝ている場合じゃなくなった、だけど蘭の回復魔法でも中々治らない……俺はその場で動けないでいた。意識は飛び飛びでなんとか堪えているが、正直かなりきつい。身体中が痛みに縛りつけられているようだ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ