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カレーと白いバラ(美香視点)


 すっかり体調が良くなってから琉依さんは言ってくれた。普段は節約して10月の記念日とか特別な日にはちょっと贅沢しようって。そっか、10月には毎年ディナーを食べに行こうって約束していたんだって思った。毎年約束が守れるように頑張って節約しようって思った。琉依さんはそこまでしなくても良いよって言ってくれたけど頑張って節約して時々贅沢するのは毎日贅沢するより特別感があって嬉しくなるわねって言ったらそれもそうだねって言ってくれた。

 そして今年の琉依さんの誕生日はお休みじゃなかったから当日にお祝いしたけど週末にピクニックをすることにした。ついこの前短大の実習で子供たちと行った野原に遊びに来た。


「ここでねー四つ葉のクローバーを探したり冠を作ったりしたのよー」

「すごいね、一面シロツメクサだ」

「あのね、女の子たちはね、お姫さまみたいって喜んでたの。絵本に出てくるお姫さまだープリンセスだって。絵本で王子さまとダンスをするからシロツメクサの冠をつけてみんなでくるくるって踊ったの」

「うう……なんて可愛い」

「可愛かったわよー。あ、そうだ。琉依さんにも冠つくってあげる。お仕事たくさん頑張ったから」


 琉依さんは毎日20時に帰ってくるようになった。去年の12月に私が保育士にならないって言ってからのことで琉依さんとゆっくりお話できるようになった。私のためだったって言ってくれた琉依さんにありがとうって気持ちを込めて冠を作ろう。


「じゃあ僕も美香に作るよ」

「えー本当?嬉しい!!じゃあ一緒に作ろ」

「うん」


 こうしてこうしてって言いながらシロツメクサの冠を作っていく。


「よし、できた」

「わー琉依さん上手ー!!私も完成」


 琉依さんは初めてなのにすごく上手ですごいすごいって言うと冠を私の頭にそっと乗せてくれて婚約指輪をつけた左手を握って手の甲にキスしてくれる。


「美香、僕だけのプリンセスになってくれますか?」


 本物の王子さまみたいな琉依さんにドキドキする。口をパクパクさせる私に琉依さんがもう一度なってくれる?って聞いて何度も頷く。


「琉依さんだけのお姫さま!!……ん?だけってなに?」

「そこは良いの。どうせ美香は僕だけのじゃないってわかってるから深く考えないで」

「え、琉依さんも私だけの王子さまじゃないの?」

「僕は美香だけの王子さまだよ?」

「えー!!私も琉依さんだけのよ!!琉依さんにはお姫さまが何人もいるのかと思っちゃった!!」

「え、だって美香一番は選べないって……」

「良かったー。私は琉依さんだけのお姫さまー琉依さんも私だけの王子さまー」


 そうだ、お仕事頑張ったからって作ったけどって思いながら琉依さんの頭に冠を乗せる。


「琉依さんかっこいい王子さま!!ドキドキしたー」

「ドキドキした?」

「うん!!」

「良かった」


 ドキドキでキュンキュンってした。琉依さんは本当に王子さまだ。


「ねえ美香」

「なーに?」

「短大を卒業する来年の3月に結婚しよう」

「するー!!」


 結婚!!来年!!3月!!びっくりして嬉しくて琉依さんのおでこにごっつんこしちゃう。


「だ、大丈夫?」

「大丈夫!!結婚!!」

「うん、しよう結婚」

「わーい!!」


 短大を卒業して仕事に慣れてからってなっていたけど仕事をするのをやめてどうなるのかは決まってなかった。琉依さんがすごく働いてたからそれどころじゃなかった。


「ごめんね」

「どうしてー?」

「最初からこうすれば良かった。美香が保育士にならないって聞いてお金を稼ぐんじゃなくてこう言うのが正解だったんだなって」


 琉依さんが辛そうで悲しくなる。もう泣かないようにしなくて良いんだって思って涙が溢れてくる。

 あれからドラマを観て泣いたり桜ちゃんから昇さんが一人暮らしを始めたから前の翠さんみたいに通い妻みたいにして良いか聞いたら良いって言ってもらえたって聞いて嬉しくて泣いたりお部屋に虫が入ってきて捕まえられないし窓を開けても出ていってくれないしどうしようって泣いたりして琉依さんがよしよしって頭を撫でてくれる。

 今も優しく頭を撫でてくれる琉依さん。


「琉依さん辛い?痛い?」

「美香が泣いてくれるから大丈夫だよ」


 それを聞いてほっとして涙を拭う。


「良かったー。あ、結婚は3月のいつ?1日?2日?」

「卒業式が終わってからだよ。25日とかどう?縁起が良い日だよ」

「えー遅いー……」

「嫌?」

「琉依さんが25日が良いなら良いわよー」

「じゃあ3月25日だね。たくさん決めることがあるよ。美香はどんな結婚式にしたい?」

「んーみんなでパーって賑やかなのが良いなー」

「うん、そうだね」

「翠さんたちも遥さんや楓さんや七菜子さんや」

「仲良くなったみんなを呼んで楽しい結婚式にしよう」

「うん!!」

「結婚式そのもののこともたくさん決めないといけないし新婚旅行とか新居も決めなくちゃね」

「新婚旅行……新居……」


 どうしよう。新居は優菜と住むから優菜と決めなくちゃ。でも優菜はまだ結婚しそうにない。5才年上の彼氏とはこの前別れちゃったし。


「うん。あ、ここでは贅沢しないようにって考えなくて良いからね。美香が高校3年生の時に話した通りそのために貯めてたんだから」

「えっと、あ、うん。えっと……」

「新婚旅行はどこが良いかな。どこ行きたい?」

「う、うーん……」

「迷っちゃうよね。一緒に考えよう。新居はマンションより戸建てが良いかなー」

「あ、あのね!!」

「ん?」

「お、おうちはまだ良いんじゃないかなーなんて」

「え、どうして?今のままじゃさすがに狭くない?お料理好きでしょ。広いキッチンが良くない?」

「それはまあたくさんお料理を作るにはその方が良いからそうしたいけど……でもほら、結婚式に新婚旅行にっていっぺんにたくさん決めるの大変じゃない?おうちは落ち着いたらにしたら?」

「そっか、それもそうだね」


 うー……琉依さんになんでも話す約束したのに。でも優菜との秘密だし……。今日の夜ご飯はカレーにしよう。

 琉依さんはさっそく結婚式場を調べたりしようって言ってくれてその話をしながらランチを食べた。それからお散歩しながらまたいろんな話をして、おうちに帰った私は琉依さんにはテレビでも観て休んでてって言ってカレーを作る。白い食べ物って何にしようって思って半熟卵を添えてみた。それをテーブルに乗せてみると琉依さんが卵なんて珍しいねって言う。


「う、うん、そうだね」

「ん?……あ、白……え、なにか僕に話せないことあった?」


 あったあった。すごくあった。でもそれを言えないと思って何も言わずに頷く。


「そっか、そもそもそれが言えないのか……」

「ごめんねー。優菜と約束が……あ」

「なに?優菜と?」

「ひゃー……な、なんでもないの!!」

「これやってると秘密にしたいのに美香が口を滑らせそうだね」

「うんうん……」

「じゃあこれ以上は止めとくよ。けど優菜はろくなことしないから気を付けてね。本当に困った妹なんだから……」

「そんなことないわよー。優菜は良い子よ」

「美香にとってはね。まったく……」


 優菜は琉依さんともお義父さんとも時間が経つうちに喧嘩してたのがどうでも良くなってきちゃったみたい。5才年上の人と別れちゃってからはおうちに帰ってるし。仲直りしたわけじゃないからって言ってるけど普通にお話ししてる。

 いただきますって言ってカレーに卵も合うねって話をしながら夜ご飯を食べた。










 それから結婚式の準備で忙しくなったけど琉依さんと一緒にたくさんいれて大変だけど楽しい毎日を過ごす。7月には2人で海に行って8月にはキャンプにも行った。みんな休みが合わなくて琉依さんと昇さんと桜ちゃんと小林さんと加代子さんと木村さん7人だけだったけど。

 そして私の誕生日になった。20才の誕生日。私の誕生日も平日で琉依さんが仕事終わりにケーキを買ってきてくれた。節約しながら琉依さんの誕生日みたいなご馳走を作って待っていた。そしてドキドキなのはお酒を飲んでみること。せっかく20才になったんだから飲んでみようって甘いカクテルを試しに飲んでみることになった。琉依さんみたいにお酒に強いのかどうなのか全然予想できないけど食べてからケーキと一緒に飲もうと先にご飯を食べた。


「じゃあ……って、今日何回も言ってるけど、二十歳の誕生日おめでとう」

「ありがとう琉依さん!!」


 朝起きた時も夜ご飯のご馳走を食べる前も言ってくれたけど何回言ってもらえても嬉しい。琉依さんも一緒にオレンジの甘いカクテルを入れたグラスを持って乾杯して初めてのお酒を飲む。


「わあ、オレンジジュースだわー」


 甘くて普段飲んでるオレンジジュースみたいだと思いながらもう一口飲む。


「ほんとだ、アルコール低いもんね」

「琉依さんチュー!!」

「へ?」

「チューチュー」

「え、み、美香?」


 なんだかふわふわして楽しい気分の私は琉依さんにキスをする。


「琉依さん好き好きーチューしてー」

「うそ……まさかこれで酔った?」

「よったってなーにー?」

「えっと、なんでもないよ」

「チューしてー」

「うん」


 琉依さんが唇にキスしてくれて嬉しくなった私は今度は琉依さんのほっぺにキスをする。


「琉依さんもー」

「うん、好きだよ」

「えへへ、嬉しいー。もっとー」


 琉依さんがほっぺにキスしてくれて私が今度は琉依さんの目の横にキスすると琉依さんも同じところにキスしてくれて嬉しくなった。








「う、うーん……」

「美香、起きた?」


 あれ?いつの間に眠ってたんだろう。なんだかふらふらすると思いながら起き上がる。


「頭痛い?」

「んーん、ふわふわする」

「トマトジュース作ってみようか。教えてくれる?」

「琉依さん作れる?」

「うん、多分大丈夫」


 私はベッドから降りて琉依さんにトマトジュースの作り方を教えて作ってくれたトマトジュースを飲む。


「美香、良い?美香は絶対お酒を飲んじゃ駄目だよ」

「ほえー……どうして?」

「どうしてもだよ。オレンジジュースかアップルジュースで良いでしょ」

「うん、わかったー」


 よくわからなかったけど琉依さんが優しく頭を撫でてくれるから嬉しい。オレンジジュースと似てたし今まで飲んでなかったんだからお酒を飲まなくったって今までと変わらない。琉依さんが好きなお酒を飲めないのは残念だけど琉依さんが飲んじゃ駄目って言うんだから飲まなくて良いや。そういえばケーキは食べたっけって言ったら食べたよって言われた。お酒がオレンジジュースみたいだと思った記憶しかないからケーキの味は覚えてないけど美味しかったそうだ。覚えてないって言うと今度翠さんが二十歳のお祝いしたいって言ってたからケーキ食べさせてもらったら良いよって言われた。朝ご飯を作って食べてお仕事に行く琉依さんと一緒に出て短大に行った。

 そして帰って夜ご飯を作ってると琉依さんが帰ってきた。


「どうして白いバラ?」


 いつものように出迎えると琉依さんが白いバラを持っていた。


「えっと、い、言えないけど」

「そっか、私に話せないことね」

「うん。ただいま美香」

「おかえり琉依さん」


 いつものように抱きしめてもらってキスをして白いバラを受け取った。




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