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やっと言えた(琉依視点)


 今日は七夕で美香ちゃんとプラネタリウムを見に行く。お昼ご飯を食べてから出掛けようってことにしたからお昼ご飯を作る美香ちゃんを手伝ってる。


「琉依さん琉依さん、それでですねー」

「うん」


 美香ちゃんはいつもご飯を作りながら学校で習ったことを教えてくれる。ご飯を作ってるときだけじゃないけど。こんなことを教わりましたーって。高校生の時の美香ちゃんはテストのための暗記ばかりでテストが終わったらあんまり覚えてないってなってたけど短大で学んでることはちゃんと頭に入ってて、しかも実習でしっかり生かせてるらしい。本当に頑張ってて偉いなって思う。美香ちゃんはとっても良い保育士さんになるんだろうな。


「あ、そうそう琉依さん、ピアノの授業で先生に怒られちゃったんです。ちゃんと教えた通りに弾きなさいって。でも琴音ちゃんと聡子ちゃんが練習に付き合ってくれるって放課後に練習することにしたんです」

「そっか。優しい友達で良かったね」


 短大ではピアノの授業もあるそうだ。怒られても一生懸命頑張る美香ちゃんは偉いなー。両手が塞がっててよしよしって頭を撫でられないのが残念だ。


「そうなんです。でも商店街のお店の時間に間に合わなくなっちゃうんです。どうしたら良いですか?」

「ああ、そっか。じゃあ前の日に買っておけば良いんじゃない?遅くなるなら僕が早く帰ってこようか」


 そういう話だったのか。美香ちゃんは真面目だな。


「琉依さんお仕事忙しいから大丈夫です。19時半くらい……そこまでかからないかもしれないですけど、それくらいで帰ってきますね」

「わかった。ありがとう。でもそれじゃなくてもお友達と遊んで帰ってきても良いんだよ?毎日急いで帰ってきて遊べないでしょ」


 美香ちゃんの通ってる短大は近いからそんなにキツキツなわけじゃないけど美味しい食材をじっくり選んで買ったり話したりするから急いで帰ってる。お友達と帰りにどこか寄っていきたい時もあるんじゃないかと思って言う。


「琴音ちゃんも聡子ちゃんもサークルに入っているので忙しいそうです」

「やっぱり短大生は忙しいんだねー。僕たちは仕事してたけど他のみんなはかなり遊んでたよ」

「でも楽しいから良いんです。充実です」

「そっかそっか。それなら良いけど」


 短大は四大と違うんだな。でも好きなことが学べて充実してるなんて良いことだ。本当に高校生の時の勉強したくなーいって嘆いてた美香ちゃんとは大違いで偉いな。嘆いてる美香ちゃんは可愛かったけど。

 お料理が出来上がって美香ちゃんが僕が拭いたテーブルの上にお皿を並べてると美香ちゃんの携帯が鳴った。


「メールがきたみたいです」

「これ僕がやるよ」

「ありがとうございます」


 美香ちゃんが持ってたお皿を受け取ってテーブルに置いてフォークも準備する。


「あ、琉依さん、月末の土曜日にお茶会しませんかって」

「良いんじゃない?行っておいで」

「あれ?琉依さんは?」


 美香ちゃんは遥さんにお茶会に誘われててその日程の連絡だったみたい。仲良くなれて良かったな。


「女の人たちで集まるんだよ。きっと旦那さんの愚痴とかおしゃれの話とかするんだ」

「そうなんですか?」

「うん、僕はそうだな、昇とキャンプの買い出しにでも行ってくるよ」

「んーわかりました」


 キャンプは再来週に行くことになった。美香ちゃんが翠さんたちを一緒に行きましょって誘って、行くわけないだろうなって思ってたらまさかの3人とも行くって返事されて昇と村岡くんと木村くんがなんで来るんだよみたいに言ったら翠さんに何か問題でも?って感じに言われて何も言えなくなった。しかも優菜も来るっていうから騒がしいことになりそうで今から胃が痛い。でも美香ちゃんが楽しそうにしてるから可愛い。竜二さんは来れないけど竜二さんがいたらさらに佳代子さんとぶつかって恐ろしい騒ぎになっていただろう。


「誰が来れるって?」

「えっと、翠さんとかこさんが来れるそうです」

「気を付けてね」

「何にですかー?」

「いろいろだよ。あとは誰が来るの?」


 加代子さんがいなくても翠さんも佳代子さんも意地が悪すぎるから美香ちゃんに悪影響を及ぼしかねない。僕がそばにいてあげられないから自分でどうにかして注意してくれないと。


「沙織ちゃんと沙織ちゃんのお母さんと初めてのパーティーで仲良くなった七菜子さんと2回目のパーティーで仲良くなった夏実さんと芽衣さんです。沙織ちゃんと夏実さんと芽衣さんに匂袋を作る約束をしましたけどみんなに作ろうかなーどう思いますか?」

「うん、良いと思うよ」

「じゃあ作りまーす」


 美香ちゃんの手作り匂袋を喜ばない人なんていない。良いなー羨ましいな。僕は毎日美香ちゃんが育ててるお花に囲まれてるし美香ちゃんが時間がある時に作ってくれる匂袋をいつも持ち歩いてるけど。

 そしてお昼ご飯を食べてからプラネタリウムがあるショッピングモールに行って可愛い美香ちゃんと綺麗なプラネタリウムを見て幸せに浸っていた。


「すごく綺麗でしたねー!!」

「うん、綺麗だったね」


 プラネタリウムを見終わって美香ちゃんとショッピングモール内を歩く。繋いでる手を大きく振って嬉しそうにする美香ちゃんが可愛い。幸せだな。


「織姫さまと彦星さまは可哀想ですね」

「雨だもんね」


 美香ちゃんは優しくて良い子だ。どうにか織姫さまと彦星さまに幸せになってほしいけど天気は僕にはどうにもできない。


「琉依さんと離ればなれになっちゃったら嫌です」

「僕もだよ。いろんな人に阻まれるけど」

「ほえー?」

「来年は会えると良いね」

「はい!!」


 誰にでも好かれるのが美香ちゃんの魅力なんだから良いんだけどね。でもだからって僕に見せつけるように美香ちゃんを取らなくても良いじゃないかあの意地悪3人娘。あと桜さんも。桜さんとも連絡先を交換したらしくて久しぶりに再会して話したいことがたくさんあるんだそうだ。お母さんは元気なの、お父さんは、お兄ちゃんがいたよね、えー結婚したんだーみたいに。電話で話したあと必ず美香ちゃん伝いに美香ちゃん取ってごめんって言ってくるんだけどあれはわざとなんだろうかそれともおっちょこちょいだそうだから素なんだろうか。わからない。わからないけど怖い。

 とりあえず美香ちゃんが嬉しそうで楽しそうだから良いけど。僕だって美香ちゃんともっと仲良くしたいのに。そう思ってたらイベントスペースに短冊があるのを見つける。そうだ、これだ。


「美香ちゃん短冊があるよ。書いていこうか」

「わー!!本当ですね!!書きましょ!!」


 短冊を取って机の上で書こうとして、ふと思う。美香ちゃんを取られませんように?いや、そうじゃないな。美香ちゃんとずっとにいられますように、うん、これだね。せっかく短冊に願い事を書くんだからこれから先ずっとのことだ。あ、ちょっと待った、ここに美香ちゃんじゃなくて美香って書くのはどうだろう。これなら呼び捨てをするきっかけができる。


「琉依さんなんて書きますか?」

「んー?書いたら見せるよ」

「そうですよねー。んー……たくさんあって迷っちゃうんです」


 我ながら良いアイディアだって思いながらペンを動かす。


「はい、僕は書けたよ」

「えー!?じゃあ、じゃあ、やっぱりこれ!!」


 美香ちゃんがそう言って短冊に書くのを見ないようにして言う。


「じゃあせーので見せあおうか」

「はい!!」


 2人でせーのって言って書いた短冊を出して書いたことを言う。


「美香とずっと一緒にいられますように」


 やっと言えた。顔を赤くして口をぽかんと開けてる美香ちゃん、いや、美香が可愛い。


「美香は?」

「はう……えっと、私は琉依さんとずっと一緒にいられますようにです!!」

「一緒だね」


 美香は思いっきり僕に抱きついてくれた。うう……可愛すぎる。


「愛してるよ、美香」

「私もです!!」


 でもここは公共の場。これ以上は家に帰ってから楽しもう。

 そして買い出し短冊を笹に吊るして家に帰る。これはきっと七夕の奇跡だ。織姫さまと彦星さまがいろんな人に邪魔される僕にきっかけをくれたんだ。これはもう1つのこともできそうだ。


「短冊には書かなかった美香にしてほしい願い事があるんだ」

「なんですかー?」


 嬉しそうに笑う美香が可愛すぎる。僕に美香って呼ばれるのがそんなに嬉しいんだね。可愛いなー。


「美香にタメ口で話してほしい」

「タメ口ですかー?」

「うん。その方がもっと仲良くなれる感じがするでしょ」

「わー!!そうですね!!」

「じゃあそうしてくれる?」

「うん!!琉依さん夜ご飯は何が良いー?」

「そうだねー、カレーかな」

「琉依さんはカレー好きなのねー。何にしようって迷って聞くといつもカレーって答えるもの」

「美香が作ってくれるご飯はなんでも好きだよ」

「そうなのー?じゃあ迷ったらカレーにしよー」

「あ、待って、聞いて」

「ほえー?」

「晩ご飯何が良いって聞かれるの好き」

「そうなのー?毎回カレーって言うのにー?」

「じゃあ今度は違うものにするよ」

「どっちでも良いわよー」

「明日の夜ご飯は魚料理が良いな」

「じゃあアクアパッツァで良いー?」

「うん、良いよ」


 さすが順応性の高い美香。すぐに昔からタメ口で話してたみたいに自然に話してくれる。ありがとう織姫さま彦星さま。僕は来年からてるてる坊主を作ることにするよ。






「それでね、美香が可愛すぎるんだよー。美香がね、美香がねー!!」

「あーもう!!うっせえ!!」

「煩い煩い!!だいたいなんで僕まで付き合わされるんですか!!」

「それは荷物が多いからだ。木村はカート押す係な」

「えー面倒ですねー」

「ねえ、美香がさー」

「あー琉依さん煩いってばー!!」

「琉依、店入るんだから静かにしろよ」

「昇の怒鳴り声の方が煩いのにー」


 美香がお茶会に行ってる間僕は昇と暇だっていうから呼んだ木村くんとキャンプ用品を買いに来た。小林くんは加代子さんと加代子さんの実家の集まりに参加だからいない。関さんはアメリカにいていなくて村岡くんは学生時代から働いてるお店でそのまま働いてて、土日は基本忙しい。キャンプの日はずいぶん前から予定を決めてて休んでって頼んでた。絶対休めないってことはないから、みんなで記念なんだよ、これからみんななかなか会えなくなっちゃうかもしれないんだよ、学生時代のあの楽しかった日々を思い出してごらん遊びたいでしょって言い続けてたらしつこいからって休みを取ってくれた。やったね。


「琉依さんしつこいんですけどー。七夕当日連絡してきてから何回も何回も同じこと言ってるじゃないですか」

「だってやっと言えたんだよ。嬉しくて嬉しくて」


 僕は七夕の日、美香がお風呂に入ってる間にみんなに、やっと美香って呼べたよタメ口してって言えたよって連絡しまくった。電話に出てくれなかった村岡くんと竜二さんにはメールした。それから翠さんたちに言うとまた悪知恵を働かせて僕になにかしら意地悪なことを考えかねないから言わないように口止めした。


「やっと言えたんだよ、やっとだよ、僕頑張った……って言ってましたね!!」

「関さんがなんで琉依あんなに疲れてたんだろうって言ってたぞ。全員に連絡しまくってたからだな」

「なんかめんどくさそうだったからって村岡と竜二さんは電話でないしさーずるいですよね!!」

「え!?居留守だったの!?酷いよー!!」

「お前が面倒だからだろ」

「そんなことないのにー!!でもね、美香が可愛いんだよ。なんにもないけど美香って呼ぶとね、なーに?って言うんだよ。今までは美香ちゃんって呼んでる途中に抱きついてくれたりだったからそれはそれで可愛かったんだけど」

「あーもうわかりましたってば。のろけはもう良いですって」

「でもさ、やっぱり邪魔が入るんだよ。昼間からイチャイチャしようと思ってたら電話がかかってきちゃってさ、美香が桜ちゃんからだって電話でてさ、30分くらい話してるんだよ。放っておかれて寂しいよ」

「そうかそうか」

「その人って正体不明の四天王の1人ですよね」

「四天王ってなに?」

「翠さんが隠してる秘蔵っ子だろ。恐ろしい軍団の最後の1人だ。最悪最恐に悪い女に違いない」

「えーそんなこと……あるね、怖い」

「だろ」

「でも2人とも桜さんに興味あったんだね、知らなかった」

「興味じゃなくていつ悪のシークレットキャラが出てきても対処できるように考えてるだけですよ!!」

「なにそれ」

「翠さんは自己中で偉そうで傲慢な絶対的な女王様で加代子さんはぐうの音も出ないくらい言うことは真っ当なのにそれを逆手に取ってやっぱり偉そうだしかこさんは暴力怪力女だしって。きっと残りの1人は3人とはまた違ったキャラなんですよ」

「はいはい、キャラね。なんだと思うの?」


 店内を歩きながら木村くんはわざとらしく顎に手を当てて考えるふりをしてる。


「それはずばり!!」

「ずばり?」

「男誘惑系女子です!!」

「なにそれ」

「すごく可愛くて甘い言葉で男を騙す恐ろしい女に違いないです!!」

「そんなことない……と思うけど」


 まあ人は見かけによらないし、よく知らないからなんとも言えない。


「ああ!!言わなくて良いんですよ!!僕たちはあくまで想像してるだけなんですから!!」

「もしくは黒魔術で陥れる系とかな」

「そんなわけないでしょ」

「あとはレーザービームとか放ってくるやつとか!!」

「……楽しそうだね」

「楽しいんじゃなくて対処法を考えてるんですよ!!最初のだと昇さんは一番に倒れちゃうし」

「黒魔術でもレーザービームでも対処のしようがないでしょ。あるわけないんだけど。それに昇も木村くんもパーティー出てくればいるよ?翠さんたちが話させないようにしてるだけで」

「いや、だから正解なんてなんでも良いんですって。触らぬ神に祟りなしです。なんだとしても恐ろしい四天王にはかわりないんで関わりたくないんです」

「っていうか昇は普通に社長なんだからパーティー出てほしいんだけど。10月にあるレヴィールの創立記念パーティーは来てよね」

「それは行くって」

「木村くんも自分で仲間内でやるパーティーじゃなくて会社関係のだけで良いから来れば良いのに」

「いやー可愛い子は好きですけど翠さんたちみたいなわがままお嬢様は勘弁なんで。四天王じゃなくても厄介でしょ。昇さんこそそろそろ本当に彼女作ったらどうなんです?」

「それそっくりそのままお前に返す。俺こそ金持ちのご令嬢なんて無理だ。服やらエステやらに金を使いまくってみんな傲慢で偉そうで自分大好きなやつらなんだろ」

「偏見いけないんだー。美香みたいに純粋で可愛い子もいるよ。美香は僕のだけど」

「それが悪いとは言ってないだろ。そういうのが好きなやつは好きなようにやってれば良いってだけだ。俺とは相容れないけどな。自分のことにしか金を使わねえってやつと俺とじゃ価値観が合わねえ。そんなやつと結婚なんて考えられないだろ」

「そもそもお嬢様が昇さんみたいなガラの悪い人なんてお断りですよ」

「そりゃそうだ」

「じゃー昇はどんな子が良いわけ?」

「普通だ普通。今と同じように家族全員で食卓を囲んでギャーギャー騒いで贅沢しなくてもそういう幸せを日々感じて生きていきたいんだよ」

「昇さん社長なのにですか?」

「社長でも俺は一生それが良いんだよ。白飯に卵かけて味噌汁と野菜食べてごく普通の素朴な生活をしていくんだ。お金持ちのご令嬢と結婚なんてしちまったら美容室やらエステやら洋服やら宝飾品やらで俺の将来像と真逆になっちまう」

「彼女作ったらって言っただけなんですけどねー結婚とは言ってないのに」

「結婚するつもりもないのに付き合うのか木村は。そうか、お前は一生独身だったな」

「違いますよー!!」

「とにかく付き合う延長線上に結婚があるんだから考えるもんだろ」

「ふーん、そういうものですかねー」

「俺は、そうなんだよ。ほら、まずはこれだな」


 昇はそう言って木村くんが押してるカートにテントを乗せる。それで次から次へと昇が決めていった。

 昇は高校生の時から起業したいっていうわりに社長ってことにもお金にもこだわってない。趣味にも使ってるけどほとんどお母さんに渡して生活費や弟と妹の学費にあてたりしてる。それにしてもへたれな昇が結婚観を話すなんて初めてだな。周りが結婚し始めてるからかな。でも昇らしい。それならパーティーに来るようなお嬢様では昇の理想の生活はできそうにない。みんな豪華な生活に慣れてるだろうし。

 あーあ、昇に合いそうな人いないかな。そういえば前に桜にちなんだ子とこれから出会う気がするって思ったなー。ん?桜……?桜さん?いやいや、そんなわけないよね。きっと桜にちなんだって言ってまんま桜って名前の子だとしてもあの桜さんなわけない。だって桜さんは翠さんの家と同じくらい有名な大企業のご令嬢だ。そもそも木村くんの言う通りそんな生粋のお嬢様が昇となんてあり得ない。あり得ない……よね?







 昇と木村くんと手分けしたのに大荷物を持って筋肉痛になると思いながら昇の家に運んだ。関さんと小林くんが当日昇の家に寄って荷物を昇の家の車と関さんの車と小林くんの車に積んで来るんだ。

 家に帰ると美香ちゃんが夜ご飯を作ってくれていたから手伝って出来上がったご飯を食べる。


「今日は楽しかった?」

「うん!!佳代子さんたちの生徒会長だった時の話をしてねー噂とかを聞いたのー」

「噂?どんな?」

「佳代子さんは2メートルの大きな男の人を投げ飛ばしたとかー」

「ああ、竜二さんの話だね」

「へ?佳代子さんは噂は嘘だって言ってたわよー」

「確かに竜二さん2メートルはないけど大男を投げ飛ばしたって話の元はそれだよ」


 竜二さんのせいで不本意な噂が立ってしまったって当時佳代子さんが怒ってた。大男を投げ飛ばせる馬鹿力があるのは事実だろうになにを怒ってるんだろうって思ったな。まあ、翠さんも上品なレディに不似合いなイメージだって怒ってたから佳代子さんも合わせてまったくですねって怒ってたんだろう。


「佳代子さん竜二さんも投げられちゃうのー?すごーい」

「あの竜二さんが投げ飛ばされるんだからすごいよねー。真似しちゃ駄目だよ」

「私琉依さんも投げられないわよー」

「そうだね、可愛い美香はそんなとんでも技を身に付けないでね」

「はーい。あとは、えっと、たくさんあるんだけどー……あ、そうだ。私翠さんと佳代子さんともっと仲良しになれたの!!琉依さんが言うようにタメ口で話したらね、もっと仲良しになれたのー」

「え、そ、そうなの?翠さんと佳代子さんも?」


 美香がこうやってタメ口で話してくれる日常が嬉しいなって思ってたら聞き捨てならないことを聞く。……まさかまたか?


「うん!!翠さんがタメ口にしてもっと仲良くしましょって言ってくれたから」

「本当に意地の悪い……」


 だから意地が悪い3人娘は困るんだ。本当にたちが悪い。


「仲良しになれて嬉しかったー」

「……良かったね」

「うん!!」


 もー!!仲良しになれたって喜ぶ美香が可愛い!!可愛いけど悔しい。口止めしてたのに。美香から言ったんじゃ仕方ないけど。でも僕と仲良しになれれば良かったのに。僕とだ、け、もっと仲良しになれれば良かったのに!!




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