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流行り(琉依視点)


 今日は本当なら美香ちゃんの文化祭に行って美香ちゃんの作る料理を味わえたのに。プロが作った高級料理じゃなくて美香ちゃんの作った料理が食べたい。美香ちゃんが僕のために作ってくれる手料理。はあ……毎日美香ちゃんの手料理が食べたい。朝起きて朝食を食べて、昼は美香ちゃんが作ってくれたお弁当を食べて夜は可愛い美香ちゃんに出迎えてもらって一緒に夜ご飯を食べるんだ。なんて幸せな1日なんだろう。それが毎日続くんだ。なんて幸せな日々なんだろう。


「琉依、顔がだらしない顔になってるよ」

「煩い。小林くんの馬鹿ー」


 立食パーティーで高級料理を口に入れながら美香ちゃんのことを考えてたらどこか行ってた小林くんが戻ってきた。


「琉依さま、締まりのないお顔をされていましたが美香さんのことをお考えでいらしたのですか?」

「締まりのない顔なんてしてないよー」


 加代子さんが公共仕様だけどいびってくる。


「加代子さま」

「加代子さま、ごきけんよう」


 3人で話してると2人の女の子たちが加代子さんに声をかけてきた。加代子さんがそれに応える。彼女たちは僕たちにも挨拶したあとぐいっと加代子さんに詰め寄る。


「加代子さま、ご存じでいらっしゃいますか?」

「何かしら?まあ、匂袋?良い香りね」


 加代子さんに話しかけた2人が小さな鞄の中から匂袋を取り出した。


「小さなお花屋さんで売られているんですの」

「そのお店のお嬢様がお作りになられてるそうですわ」

「既製品ではないので抵抗があったのですが後輩に頂いたのです」

「まあそうですの。本当に良い香りね」

「プルメリアというお花で花言葉は気品というのですって」

「そのお花屋さんのお嬢様が花言葉にお詳しくてお教えくださったそうです。それで今花言葉を送りたい方にその花や匂袋を渡すのが巷で流行っているそうですの」

「私たちの後輩が買ってきてくれて気品ある私たちを尊敬しますと、ねえ」

「とても嬉しかったですわ」

「ちょっと!!」

「きゃっ」

「る、琉依さまが大きな声を出されるなんて……」


 黙って話に耳を傾けていた僕は思わず前のめりになった。小林くんに肩を引かれる。


「ご、ごめん。そのお花屋さんってなんて名前なの?」

「えっと、確か藤井花店だったかと存じますわ」


 そういえば美香ちゃん匂袋も作って商品にしてるって言ってた。このお嬢様たちにも知られるくらい有名なのかって驚いてると女の子たちは足早に去っていった。


「確か美香さまの名字は藤井さまと仰いましたよね」

「そうだね。美香ちゃんの家のことみたいだね、琉依」

「はあ……」

「どうされたのです?」

「あのプライドの高いお嬢様たちに受け入れられるなんて僕の美香ちゃんはさすがお花の妖精さんだね。愛しすぎる」

「あらあら」

「すごいね、美香ちゃんは」

「はあ……今すぐ美香ちゃんに会いたい」

「琉依さんったら……」






 小林くんと僕はパーティーの後で飲み直しだって言って関さんの行きつけのバーに来た。僕を差し置いて文化祭を楽しんだ昇たちも呼んだけど何故か、忙しいんだクソ馬鹿って言われた。意味がわからないから仕事終わりの関さんも呼んで飲むことにした。


「あ、琉依関さん来たよ」

「久しぶり小林、琉依」

「関さん!!聞いてくださいよ!!」


 カウンターに座っていた僕たちの、小林くんの隣に関さんが座る。


「うん、なに?」

「おお、僕の話をうざがらないで聞いてくれる関さん、懐かしい。昇も小林くんも村岡くんも木村くんもみんなうざいとか邪魔だとか酷いんですよ!!」

「そっか。琉依って飲んでも飲まなくても面倒だよね」

「そうですね。関さん仕事大丈夫でした?」

「早番だったから平気だよ。昇たちは一緒じゃないんだね」

「はい、作戦会議だそうで」

「なにそれ?」

「とにかく関さん早く飲んでください」

「あーはいはい」


 そして乾杯したあとに美香ちゃんの匂袋の話をした。


「美香ちゃんの匂袋がねえ」

「美香ちゃんはお花の妖精さんですからね」

「なんで琉依が自慢げなんだろう」

「なんででしょうね」

「だって美香ちゃんが頑張ってることが評価されてて嬉しいんですよ。美香ちゃんは評判とかのためにじゃなくてみんなに喜んでもらいたくてやってると思いますけど、そんなところもまた魅力的です」

「美香ちゃんの料理も僕たちが褒めると琉依も一緒に喜ぶんですよ。なんだか最近少し似てきてます」

「ほんと?僕と美香ちゃん似てる?」

「夫婦やカップルは似てくるって言うもんね」

「へー!!」

「ここに村岡とか木村がいたら馬鹿な美香ちゃんに似てるって喜ぶことかって言いそうですね」

「そうだね。今ここ毒づくメンバーがいない」

「まあ関さんも大概腹黒いですけどね。なんだかんだで翠さんと楽しんでるそうですね」

「あーそうですよ関さん。1年前まではあんなにうじうじしてたくせに翠さんのお嬢様言葉直すのただのイチャイチャじゃないですか」


 僕はあのあと佳代子さんに聞いてもないのに教えてもらった。


「厳しく訂正されて落ち込む翠さんをキスして慰めてるんですよね!!関さん別に話し方変えなくても良いって言ってたのに」

「んーだって頑張ってるとからかいたくなるよね。キスして恥ずかしがるのもまた可愛いし」

「なりませんし関さん怖いです!!」

「そう?小林ならない?」

「なりません」

「おかしいなー」


 それから関さんの話じゃなくて美香ちゃんの話に戻した。


「あー美香ちゃんはとびきり可愛い。可愛い……けど……」


 僕は一気にお酒を飲んで項垂れる。


「はあ……浮気のつもりじゃなかったのに」

「翠さんたちにすごい言われたらしいね」

「関さんも小林くんも話すなら苛められないようにだってとこまで話してくださいよ。何度もしてるよってだけ話すから翠さん激情して怖かったんですけど」

「いやー怒ってる翠さん怖くて」

「加代子も怒ってて飛び火が怖くてね」

「絶対2人とも奥さんが強い家になりますよ。もっとガツンって言ってちょっとは怒りを収めさせてからお茶会してほしかったですよ」

「翠さんの話って本題に入るまでが長いしとにかく全体的に長いよね」

「そうそう。それで話半分に聞いてると今なんて言ったのか一語一句間違えずに言えとか言うんだよ。一語一句は無理だって」

「それは琉依が話長いなーくどいなーって思いながら聞いてるからいけないんだよ」

「そうは言っても小林くんだって思ってるでしょ。僕だけ当たりがきついんだけど翠さん。どうなってるの」

「ふふ、良いなー翠さんと仲良くて」

「これのどこが仲良いんですか。嫌だな、関さんと翠さんサディスト同士で。恐ろしい夫婦になりそうです」

「そうかな」

「それは僕も思います」


 僕はバーテンダーから受け取ったお酒を飲む。


「はあ……美香ちゃんに見られてたらもうすぐ振られちゃうのかな……」

「大丈夫だよ。そんな偶然めったにないから。翠さんが見たのもたまたまでしょ」

「関さん」

「え、なに?アウ……言うな?」


 んんー?秘密なの?小林くんが関さんに携帯を僕に見せないようにして見せてる。


「僕たちの間で秘密はいけないんですよー」

「絶対じゃないからね」

「うん、とりあえずあれだよ、美香ちゃんが仮に琉依が他の女の子と会ってるのを見たとしても何を浮気とするかなんて人それぞれだよ。美香ちゃんなら相談事かな頼りにされて琉依さんはすごいなとか思うだけかも」

「なんで関さんがそんなことわかるんですか」

「そうかもって言ってるだけだよ」

「そうだ、関さん美香ちゃんと電話してますよね。知ってるんですからね。何か聞いてないんですか?」

「アメリカで暮らしてた時のことを話してるだけだよ。ちなみに竜二も、無人島でサバイバルしてた時のことを話してるだけだって」

「もー……なんで仲良く話すんですかー。美香ちゃんが楽しそうに関さんと電話した竜二さんと電話したって言うから可愛いですけどー」

「ほら、美香ちゃんが僕たちと話したところで琉依は浮気だとは思わないでしょ」

「そりゃー……でもみんなじゃなかったら駄目ですから。みんなだから良いんですよ。美香ちゃんみんなと仲良くできて嬉しいって言ってますし」

「うん、じゃあ美香ちゃんだってさっきみたいには思わないとしても浮気だと思わないんじゃない?」

「でも美香ちゃんは僕しか知らない純粋でウブで最近ますます大人っぽくなってきたけどまだ子供な可愛い子だから僕が他の女の子といるのを見てショックを受けちゃうかもー。あー……なんでみんなそれは浮気になるって教えてくれなかったんですかー」

「一応言ったよ」

「嘘だー」

「言ったのに琉依がこれは美香ちゃんを守るためなんだから浮気じゃないって断定しちゃったんでしょ」

「そうだったかなー……あー……どうしよう。美香ちゃんを守らないといけないのに」

「こうなるんなら最初から翠さんに話してガツンと言ってもらえば良かったね」

「確かに、翠さんが話すと途中何の話してたんだっけってなりますけど何故か納得できるとこありますもんね」

「あの話し方なのかな?でもお嬢様口調直してるのに変わらずなんか偉そうっていうかー……さすが歴代最強の生徒会長」

「加代子ちゃんもかこちゃんもそれぞれすごかったけどね。今でも翠さんと加代子ちゃんとかこちゃんを崇拝してる人がたくさんいるって秘蔵っ子ちゃんが言ってるんだって」

「だってって言いますけど関さんは桜さんと唯一直接話してますよね」

「パーティーで会うからね。俺以外は避けろって翠さんたちに強く言われてるんだって」

「どういうことですか。どうもしないですけど。っていうかなんだかさっきから美香ちゃんの話をしようとすると翠さんとかの話になってる気が……」

「それは琉依が話を振ってるからだよ」

「そう?なんか僕ビビッてきちゃったんだけど美香ちゃんの話避けようとしてない?」

「気のせいだよ」

「そうかな……あ、そうだ。昇は忙しいって言ってたけどそれって村岡くんも木村くんも一緒だってことだよね?それならきっと村岡くんの家で僕に秘密で意地悪を画策してるに違いない。これから村岡くんの家に行こうかな」

「まあまあ、琉依。琉依の勘は良く当たるけどこっちはこっちでやってようよ」

「そうだよ、全部俺が奢るから」

「えーそう?関さん良いんですか?」

「良いよ良いよ。琉依次なに飲む?」

「んーじゃあ……」


 それからまた飲んで美香ちゃんの話をして関さんが美香ちゃんと電話して僕のことを最後にちょこっと聞いたら優しくてかっこよくて大好きで幸せですって言ってたって聞いて良い気持ちになって家に帰ってきた。

 美香ちゃんはまだ幸せだと思ってくれてるんだな。悲しんでるのは僕の何がいけないのかはわからないままだけど浮気はしてないって誓って言える。でもそれを自分から言えないし……どうしたら良いんだろう。そう思ってたら携帯にメールが届いた。村岡くんからだ。なんだなんだ?珍しい。


『美香さんの誕生日プレゼント買いに行くの付き合わないこともないです』


 んんん?今日は稀にみる優しい村岡くんの日なのかな。


『ありがとう!!村岡くん良い子だねー』


 そうやって返したらうざいですって来た。村岡くんだなーって思った。そしたら今度は電話がかかってきた。美香ちゃんからだと思って急いで出た。美香ちゃんは今日の文化祭で全学年1位になったそうだ。すごいね、頑張ったねって言った。それから木村くんと村岡くんが女子高校生たちに追いかけられて大人気だったそうだ。女子高校生って年上が好きなんだなあ。木村くんなんて全然かっこよくないのに。村岡くんは巻き込まれてイライラしてたんだろうな。で、昇と一緒にたくさん食べ歩きしたそうだ。ちょっと待って、村岡くんと木村くんが女子高生たちに追いかけられてたんなら美香ちゃんと昇2人きり!?がーん……昇のやつ、僕の美香ちゃんと2人きりだなんて。昇じゃなかったら許さないんだからね。

 美香ちゃんとの電話を終えて考える。僕の浮気だと思うことってなんだろう。美香ちゃんが昇たち以外の男と話してることかな?でも美香ちゃん社交的ですぐいろんな人と仲良くなるからなー。じゃあ昇たち以外の男と2人で待ち合わせして出かけたらかな?でも美香ちゃん僕しか知らないしそういうことも教えてあげないと悪い男に騙されて出かけちゃうかもしれないな。

 ……でももし仮に美香ちゃんが僕が女の子と会ってるところを見てたとしたら僕は良いのにどうして駄目なのかとかどの口が言うんだってことになるよね。いや、美香ちゃんはそんな優菜とかみたいなことは言わないか。でもどうしよう。美香ちゃんには注意を促したいけど……誰か他の人に言ってもらおうか。関さんとかに。うん、そういうことにしよう。木村くんなんてムードメーカーだけどトラブルメーカーでもあるし。何か余計なことも一緒に言いかねない。

 そう思った僕は美香ちゃんの誕生日プレゼントのことを考え始めた。美香ちゃん最近外出先でお化粧直しをするので大きめの鞄が欲しいんですよねーって大人びた顔で言ってたから鞄にしようと思ってる。美香ちゃんのお化粧はパウダーとアイシャドウとチークが増えてもう本格的にお化粧してるってわかる。可愛くなりましたかって聞いてくれるからすごく可愛いって答える。お化粧してなくても可愛いんだけど美香ちゃんがへにゃって笑うからその大人っぽくお化粧した顔で子供っぽく笑うのはとびきり可愛すぎるって思う。そんな美香ちゃんにぴったりの鞄を村岡くんと探そう。

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