浮気の話(美香視点)
「それって浮気だよー」
「んー浮気じゃないわよー……多分」
新学期が始まったある日、放課後に文化祭の準備をしている。準備をしながら真紀ちゃんと晶子ちゃんとお話ししてる。生徒会長の優菜は生徒会の仕事でいない。
「でも他の子とデートしてたんでしょ?」
「でもね、あのね、琉依さんは優しいから」
「なにそれー。美香ちゃん騙されやすいもん。危ないなー」
晶子ちゃんに言われてんーって考える。
「私騙されやすくないわよー」
「この前優菜さまが作ったおもちゃの虫でびっくりしてたじゃん」
「あんな下手なのすぐ作り物だってわかるわよ」
「あー優菜に言っちゃうわよー」
「良いよ、優菜さま改良が必要だって言ってたし」
「むー」
「それで美香ちゃん、浮気を見たの1回なの?」
「あの、えっと……」
晶子ちゃんが浮気されたって彼氏と別れたというからそういえば優菜もそうだったわねって話になって琉依さんは浮気なんてしないよねって言われて真奈美さんと一緒に映画を観に行った時に見ちゃったって言ったらこういう話になった。
「1回じゃないんだ?」
「偶然ね、お店のお手伝いで配達に行った帰りにカフェに入っていくのを見たの」
「それ何回も浮気してるよー」
「それ見つけちゃうのもすごいね。配達って美香ちゃんめったにしないでしょ」
「そうなの、本当に数えるぐらいしかなくて。でもね、カップル限定スイーツって看板があったのよ」
「それはそれは……」
「カップル限定って聞くと食べたくなるよね」
「真紀、それはフォローになってないよ」
「そう?でも見かけによらないんだね」
「いや、見かけ通りでしょ。キラキラオーラ満載じゃん。去年の文化祭の時みんな芸能人みたいってはしゃいでたし」
「確かにねー」
「浮気されても別れない人ってなんだろうね。私もう許せないってなったよ」
晶子ちゃんと真紀ちゃんが私をじっと見てくる。
「る、琉依さんは浮気じゃないわよー」
「浮気ってどこからが浮気なんだろうねー。晶子は?」
「私はもうがっつり遊園地で見たじゃん」
「そうよねー。がっつり遊園地で見知らぬ女の子と手繋いでキスしてるとこ私と見ちゃったものねー」
「あれは完全に浮気でしょ」
「じゃあ琉依さんの他の女の子と2人で遊ぶのはどうなのかなー」
「浮気浮気」
「晶子は多分全部浮気になっちゃいそうよね。2人で話してるのは?」
「話ー?曖昧だなあ。普通に話すのは良いけど2人でどこかお店で話すのは駄目じゃない?」
「でも相談事かもしれないでしょ」
「でもわざわざ1対1で相談しなくても良くない?」
「その人にしか言えない悩みかもしれないよ。ね、美香ちゃんはどう思う?」
「え、えっとーんーどうかなあ」
「琉依さんだと思って考えてみて」
真紀ちゃんに言われて考えるけどやっぱり私は仮の彼女だから琉依さんがそうしたいなら邪魔できないなって思っちゃう。
「わかった、じゃあ琉依さんが何をしてたら悲しいのかって考えたら良いんじゃないかな」
「んーわかったー」
「じゃあ相談があるって2人で話してたら?」
「んー琉依さんとっても頼りになるから悩みごと解決すると良いなって思うー」
「……美香ちゃんねえ」
「じゃあ前に見たのもそうだったって言われたらどう?」
「あ、そっかー!!そうだったのかなあ?」
「わかんないけど……でも悲しいでしょ?会うなら会うって言ってくれたら良くない?やましいことがあるから言わなかったのかも」
「がーん……そうなのかなー」
「じゃあ女の子と2人で会うねって事前に言われてはいそうですかってなる?言えば良いってものかなー」
「なに?真紀はそれが駄目?」
「私の彼氏は女の子と2人で会ったりしないから。いつものメンバーでって男だけでしか遊ばないし」
「じゃあこっそり内緒で会ってるかもだ」
「えー……そう言われると知らされない方がモヤモヤしなくて良いかも?でもほんとにこっそり会ってたらショック」
「でも彼氏が今日は何して明日は何があるって把握してるのって微妙だよね」
「そこまでしたらちょっと引いちゃうかも。でも一緒に暮らしてたら言ってもらわないと困っちゃうってお姉ちゃん言ってたよ」
「彼氏と同棲中のお姉さんだ」
「そうだ、お姉ちゃんは気持ちが離れちゃったら浮気かなって言ってたよ」
「好きじゃなくなったらかー。美香ちゃんどう?」
「え、えっとー」
元々好きじゃない時はどうなんだろう。んー……。
「じゃあ体の浮気は良いの?」
心の浮気はわかるけど体の浮気ってなんだろう。首をかしげる私に晶子ちゃんは直接的に言ってくれる。でも今度は反対側に首をかしげる。
「んー……」
「美香ちゃんは体の浮気なら良いの?」
「んー……」
「自分以外の人としてるんだよ?嫌じゃない?私はどっちも嫌だなー。体だけだって割り切ってるっていっても嫌なものは嫌だし気持ちが離れてるなら結局体の関係だってあるでしょ」
「お姉ちゃんの知り合いにはただ映画観たりショッピングするだけの清い関係の浮気相手になってる人がいるってよ」
「なんと……それはどうなの?好きなら触れたいってならないの?」
「不思議だねー。ね、美香ちゃん」
「う、うーん……うー」
「あ、美香ちゃんが難しくてわけわかんない時の症状だ」
「美香ちゃんには難しかったかな」
「んー……あのね、自分以外って……」
「自分だけじゃなくて他の子ともしてるって嫌じゃない?」
「そりゃ良いって思う人いないっしょ」
「んーあのね、自分としてなくて他の子とだけしてるのは?」
「え?あ、レスってこと?それで浮気かー」
「じゃなくてね、ね」
真紀ちゃんと晶子ちゃんに察してほしくて見てると2人が、あって言う。
「あれ?もしかしてまだしてない?」
「う、うん」
「えーうそー!?1年も経ってるのにー?」
「だ、だって、でも、みんな私にはまだ早いって言ってたでしょ」
「あれはまだ付き合いたてだったからでしょ。さすがに半年とか1年経ってもしてないって」
「や、やっぱりおかしい?」
「だって好きだったらしたくなるでしょ」
「むー」
だから好きじゃないんだってばーって頭の中だけで言う。モヤモヤする。そもそもこの2人になんで言ってないんだろ、そうだ、言っちゃえ。
「優菜さま琉依さんがドン引きするほど美香ちゃんに夢中だって言ってるもんね。優菜さまいつも楽しそうに話してるよねー」
「だよね。それだけ大切にされてるってことなのかも」
うう……やっぱり言えないや。だけど……。
「でも1年間誰ともしてないってあるのかなー」
晶子ちゃんがそう呟いてドキッとする。
「それこそ他の子と遊んで「晶子」……たり遊んでなかったりかもねー」
「うう……でも琉依さんナンパはしてないって聞いたわよ」
「ナンパじゃなくても向こうから逆ナンされたりこっそり誘われたりして「あーきーこー」……たりしてなかったりするかも」
真紀ちゃんに遮られて晶子ちゃんが顔をひきつらせる。
「晶子は思ったことすぐに言っちゃうから気にしなくて良いんだよ美香ちゃん」
「むー……でも真紀ちゃんもそう思う?」
「うーん……どうだろうね。人によるんじゃないかな。だって好きじゃない人とでもできるって聞くしね」
「晶子ちゃんお願いー思ってること全部言ってー!!」
「言ってと言われると罪悪感が……」
「お願いー!!あー!!」
「な、なに!?」
「どうしたの!?」
お願いって言って思い付いちゃった私は思わず大声を出してしまった。
「琉依さん優しいからお願いされたら断れないんだって。だから今までも付き合ってる子がいても他の子と遊んでたんだって。だからそういうことお願いされたら断れないかもー」
「おお、きっと断らないに違いない」
「やっぱりそうなの晶子ちゃん!!」
「しまったつい思ったことを……」
「良いから言ってー!!」
「1年っていうのは長いかも。体だけの関係って人がいるって言われた方がやっぱりなって思うかなー……なんてね」
「これはあくまで晶子の意見だから。大丈夫だよ」
「部屋の中探してみたら女の子のピアスやらが落ちてたりするかも」
「お部屋……」
「でも琉依さん実家だから家ではしてないかもよ」
「でも去年卒業した部活の先輩に聞いたんだけど彼氏がなかなか家に呼んでくれなくていきなり行ってみたら女と鉢合わせたってよ。そういうの怪しいかも」
「……琉依さんおうち行かせてくれない」
「ほらー!!浮気だ!!」
「だ、だけどそれはお勉強おうちでやりませんかって駄目って言われてるからで」
「きっと言い訳だよ!!部屋に入ったら女の香水とか下着とかが置いてあるに違いない」
「だから実家だってば」
「優菜のがあると思うけど……」
「そうだった。でも怪しいー。あんな選り取りみどりな感じだもん。遊んでてもおかしくないよね」
「琉依さんの周りには綺麗な子も可愛い子もいっぱいいるし……で、でも私信じるって決めてるから!!」
私は鞄から持ち歩いてる押し花を持ってくる。
「アスターなの。花言葉は信じる恋。琉依さんを信じてるから大丈夫!!多分!!」
そう、多分大丈夫なの!!私は2人にそう言っていつの間にか中断してた文化祭の準備を再開した。
だけどおうちに帰ると不安になって悲しくなった。去年の大学の文化祭の時以来もしかしたらキスしてくれるかもって思うこともなくて、でも琉依さんと一緒に過ごせるだけで楽しかった。優菜たちがそういうお話をするからいつかする時があるのかなって思うこともあるけどただ琉依さんといろんな所に遊びに行ってお話しするだけで幸せだなって思ってた。だけど琉依さんはそうじゃないのかな?だから体だけの関係の女の子もいるのかな?お願いされたらするのかな?小林さんが言ってたのってこういうこと?え、どういうこと?体の浮気はしてるけど心は浮気してないってことなの?でも琉依さんは私を恋愛感情で好きっていうわけじゃない。心も体も私のものじゃないのにこのまま仮の彼女を続けていて良いの?私がいるから琉依さんは本当に琉依さんを元気にさせられる女の子を彼女にできないのかも。もしかしたら体だけじゃなくて小林さんが知らないだけで心も通じ合ってる女の子がもういるのかも。
「美香ー琉依さんから電話よー」
お部屋にいたらお母さんがお部屋の外からそう言った。どうしよう、琉依さんとお話ししたいけどこんな気持ちじゃいつもみたいに話せないかも。
「美香ー?なんだか琉依さん急いでるみたいよ?出ないの?」
「え、そうなの?」
急いでるなら急がなきゃって思わずドアを開けるとお母さんが苦笑いする。
「いつもならちょっとお話しするのにショックなことがあったから早く美香の声が聞きたいって」
大変!!琉依さんを元気にさせなくちゃって思って急いで階段を下りて受話器を取る。
「もしもし!!」
『あ、美香ちゃん?聞いてよ優菜が酷いんだよ』
「え、優菜がですか?」
『今月から付き合い始めた彼氏の誕生日がちょうど来月の大学の文化祭とかぶってるから行かないって言い出して』
「ああ、聞きましたよー」
『僕ミスターコン出るの止めるー』
「えー!!木村さんに頼まれたんですよね!?どうしてですか!?」
『だって優菜が美香ちゃんと一緒にいるっていうから安心してたのにー』
「んー?あ、わかりましたよ!!琉依さん目立つの苦手だけど頑張るって言ってましたもんね!!優菜に見てもらえなくて残念ですね」
『えーそんなのどうでも良いんだけど』
「え?」
『う、ううんなんでもない』
「んーでもみんな琉依さんが出るの楽しみにしてるんですよねー」
『こんなことになるなら出るって言わなかったのに』
どうしよう。琉依さん落ち込んでる。電話だから笑顔は見せれないけど精一杯明るい声で言ってみる。
「私お守り作りますよ!!」
『え、お守り?』
「はい!!琉依さんが頑張れるように!!」
『うん、頑張れる気がするよ』
「そしたら私の誕生日に渡しますね」
『ありがとう。楽しみにしてるね』
「はい!!」
良かった。琉依さんちょっと元気になってくれたみたい。去年人がたくさん集まってたもん。あんなに注目されるなんて琉依さん目立つの苦手だから嫌だろうな。でも木村さんにみんな琉依さんがミスターコンテストに出るのを楽しみにしてるって言われて断れなかったんだって。
『文化祭の準備どう?』
「順調ですよー」
『そっか、ごめんね。僕行けなくて』
「いえ、大丈夫ですよー」
今年の文化祭は琉依さんと小林さんがどうしても外せない用事が出来て来れなくなった。琉依さんが子供の頃から知ってる人が主催するレセプションパーティーで加代子さんも呼ばれて小林さんも一緒に行くんだって。多分初めて琉依さんから直接パーティーの話を聞いた。
『ちゃんと昇と村岡くんと木村くんに美香ちゃんのクラスの売上に貢献するんだよって言っておくからね』
「えへへ、ありがとうございます」
そのあと少しお話して電話を切った。お守りを作ろうと布を探し始めたけどすぐに今日真紀ちゃんと晶子ちゃんと話したことで頭がいっぱいになって全然他のことができなかった。




