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追試(美香視点)


「なんで……」

「優菜?」

「なんでなのー!?」


 中間テストが全部返ってきた授業のあとの休み時間、クラス中に優菜の声が響く。


「なんで全教科赤点なの!?あんなに教えたのにー!!」

「えーん……優菜が怒った……」

「美香ちゃんまた赤点だったの?」

「でもね、孝子ちゃん、見て!!20点なの!!惜しい!!」

「ほんとだー美香ちゃん頑張ったねー」


 クラスのお友達みんなにすごいね、頑張ったねーって言ってもらえて嬉しくなってたら優菜が机をバンって叩くからびっくりしちゃった。


「赤点は赤点!!みんな美香を甘やかさないで!!」

「優菜さまは厳しいわねー」

「ねー優菜ったら厳しいわー」

「ふふ、でも優菜さまは美香ちゃんのために言ってるのよ」

「そうなのー?」

「追試対策するわよ!!」

「えーお勉強いやー……」

「琉依兄とだから良いでしょ!!」

「琉依さんー?でもーお勉強の時の琉依さん厳しいしなに言ってるのかさっぱりなんだものー……」

「琉依兄は天才肌だからね。教えるのは苦手なの。でも琉依兄がいれば勉強する気になるでしょ」

「うーん……しょうがないわねー」

「あんたのために言ってんの!!わかる!?」

「痛ーい……」


 ツンツンつつかれたおでこを擦ってると孝子ちゃんたちが頑張ってって言ってくれた。嫌になっちゃうけど頑張ろう。






「美香ちゃん、間違ってるよ」

「はーい……」

「あーもうそうじゃないってば!!」

「ひぇー!!優菜が怖いー……」

「ちょっと休憩しよっか」

「おやつー!!」

「美香ちゃん、飲食禁止だよ」


 うう……全然頑張れない。優菜が琉依さんに話してくれて勉強を教わることになった。だけどまた私のおうちの近くの図書室の自習室でって言われておやつを食べながら勉強ができなくてぐったりしちゃう。


「私のおうちでやりませんかー?」


 机に突っ伏して横から少しだけ顔をあげて琉依さんを見てそう言う。


「駄目だよ。おうちには誘惑がたくさんあるんだから」

「誘惑ー?」

「うん、おやつもあるし好きなものがたくさんあるでしょ。ここだと勉強しかないから集中できるよ」

「集中できないですよー?」

「んー……頑張って」

「頑張れないー……」

「困ったね。優菜追試に出そうなとこ予想できないの?」

「そうねー……先生たちも困ってたからテストで出てきた問題がまったく同じとまではいかないけど似たような問題が出てきそうかな。これがテストの問題用紙」


 優菜が渡した問題用紙にさーっと目を通す琉依さん。


「これ応用はそんなになさそうだね。教科書とか問題集からそのまま持ってきてるんじゃない?」

「そうそう。だから簡単な筈なのに」

「前回の中間テストとかどうしてたの?」

「同じ。全部赤点で追試になって先生に泣きついて出るとこ教えてもらって丸暗記」

「そっか」

「でももう駄目だからねって言われちゃったんですー」

「それはそうだろうね……。でもとりあえず丸暗記しかないかな。美香ちゃん記憶力良いんだし。そうだ、花言葉も覚えてるんだからそれと同じように覚えれば良いんじゃない?」

「んーそれは無理です」


 一瞬考えてみたけどやっぱり無理だからそう言うと琉依さんは苦笑いする。


「やってみないとわからないよ」

「花言葉は赤ちゃんの時から花言葉の本を見て毎日お花を見ながらこれはこう、これはこうってやってたから覚えてるんですよー」

「長い時間かけて覚えたってことかー」

「それにお花が大好きだから覚えられたんですー。お勉強は嫌いだから覚えられませーん」

「うーん……そうは言っても追試に受からないと留年しちゃうしね」

「だけど美香はできないものとことんやらないよね」

「できないものは仕方ないもの。でもみんな私だから仕方ないって言ってくれるわよー?」


 お勉強もお料理も他にもいろいろできないけどできないものは仕方ないもの。お母さんもお父さんもお兄ちゃんも怒るけど私が泣いてできないって言うと私だから仕方ないねって言ってくれる。助けてくれる。できないこともわからないことも困ったらいつも誰かがどうにかしてくれてた。だから困った顔をする琉依さんと優菜を見てこれ以上勉強できないって泣きそうになるけど優菜にいつも笑っててって言われたことを思い出して琉依さんを元気にさせたいって頑張ってるのに泣いちゃ駄目だって思う。


「私頑張ります……」

「できる?」

「はい」

「偉いね」

「偉い偉い!!私ヤマ張ってみるね。そしたら丸暗記よ」


 優菜がそう言って頭を撫でてくれる。やっぱり助けてもらえた。でも泣かないで頑張る。優菜がヤマを張ってくれた。


「丸暗記っていってもただ覚えてってしたところで覚えられないだろうからね。なにか工夫できたら良いんだけど」

「図で覚えるとか?」

「そうだね。社会とかはそれでいけるかも」


 そう言って琉依さんがノートに不思議な絵を描いてくれる。


「これなんですかー?」

「う……」

「琉依兄は絵心ないからね。こうやってこう」

「優菜も下手でしょ」

「わからないわよー?」

「煩いなあ。独特な絵の方が覚えられるよ」


 そう言って不思議な絵を描いてくれながら覚えていたらあっという間に2時間が経っていた。


「すごーい!!私覚えた!!」

「疲れた……」

「頑張ったね、美香ちゃん」

「はい!!」


 続きはお昼ご飯を食べてからって言われて、今日は車で来てくれた琉依さんの運転で隣街にある琉依さんのお友達の洋食のお店に行く。

 お付き合いを始めた日に助手席に乗ったけど今日は優菜も一緒だから後ろに乗ろうとしたら琉依さんが助手席のドアを開けてくれた。


「え、えっと……」

「美香ー早く乗んなよー」

「う、うん」


 今日は優菜も一緒だからかな。この前みたいに緊張することがなくて楽しくお喋りした。そしてお店について琉依さんが助手席に腕を回してドキッとしてしまった。そういえば前もそうだったけど元々緊張してたからこんなにドキッとしなかった。なんだか抱き締められてるみたい。抱き締められたことないけど。そう思うとこの前の勘違いを思い出してしまって慌てて首を振る。


「さ、着いたよ」

「は、はい」


 車を降りてお店に入ると個室に案内される。


「個室なんだね」

「うん、美香ちゃんもこれならマナー気にしなくて良いでしょ」

「え?気にしなくて良いんですか?でも……」


 優菜に教えてもらって頑張ってたところだったんだけど。


「気にしすぎなくて良いよってこと。僕と優菜しか見てないんだから」

「ほら、ここでなら間違っても大丈夫よ。教えた通りにできるか挑戦だと思ったら?」

「うん」


 優菜の言う通り教えてもらったようにできると琉依さんが褒めてくれて嬉しくて楽しくお喋りしながらご飯を食べた。


「ぬるま湯に浸かってる気分になりそうね」

「ぬるま湯?」


 車に乗ってまた図書室に戻っていると後ろにいる優菜が呟いた。


「私が美香だったらぬるま湯に浸かってる気分になりそうだってこと」

「どうして?」

「甘やかされておかしくなりそうってこと」

「どういうことー?」

「あーもう!!良いわよ気にしなくて」

「むー……」


 みんな難しい言葉を使いすぎるから私がわからないんじゃないって思ってると隣にいる琉依さんが笑う。


「みんな美香ちゃんが可愛いから甘やかしたくなっちゃうよね。楽しく覚えられた方が覚えさせる方も覚える方も楽しくて良いんじゃない?」

「良いけどね、美香だもん。美香だとなんでも許しちゃいたくなるし。許さないけど」

「よくわからないけど優菜全然許してくれないわー。優菜って見た目と違って真面目ー」

「悪かったわね、こんな見た目で真面目で」

「ひゃー優菜が怒ったー」


 後ろから頭を叩かれた。痛い。


「あんたは馬鹿なのに真面目ね」

「えへへー」

「馬鹿!!なのに!!」

「優菜が褒めてくれたー」

「馬鹿!!」


 図書室に戻ったらまたさっきと同じように覚えてなんだか勉強は嫌いだけどこれは好きって思った。帰りにおうちまで送ってくれた琉依さん。今日は優菜も一緒にお店にも来てくれた。今日はお兄ちゃんは真奈美さんとデートでお母さんとお父さんがいる。


「あら、優菜ちゃん」

「美香ママー久しぶりー」


 優菜は入学して仲良くなってすぐにおうちに招待したから私の家族を知ってる。


「5月振りだね」

「美香パパもう怪我してない?」

「あれっきりだよ。美香が騒いで大変だったから気を付けてる」

「ふふ、そっか」


 優菜がお父さんと話してる間琉依さんはお母さんとなにか話してていつも通りお母さんがあがっていかないのって聞いたら優菜が諸事情につき駄目なのよって答えて琉依さんの背中を押して帰っていった。諸事情ってなんだろう。







 それから数日後、追試の結果びっくりな点数でびっくりした。


「見て優菜!!ゼロが1つと、ゼロと数字の2つだけは見たことあるけどゼロ2つに1がついてるわよー!!」

「なんでそんな回りくどい言い方……私の努力のおかげね。感謝して」

「ありがとー優菜ー!!」

「自分がテスト勉強するより大変だったわ……試しにこの問題もう一回解いてみ」

「……わからないけどもう追試終わったから良いのよー」


 その日の夜琉依さんから電話がかかってきた。


『追試合格おめでとう。頑張ったね』

「ありがとうございます!!でも今日優菜にもう一回問題解いてって言われてわからなかったです」

『まあその場しのぎって感じだけど留年するよりはね……。でも問題ないよ。美香ちゃんは勉強できなくても僕がずっとやしな……じゃなくて、見ててあげるから』

「ほえ?」

『気にしないで』

「はい!!」


 琉依さんとは週に2回か3回くらい電話でお話ししてる。今日もそのまま今日あったことを話したりしてから電話を切った。

 それから台所にいたお母さんのところに行く。


「お母さーん、私お料理できるようになりたいのー!!」

「えー?なんでまた……どうせできないって泣くでしょ」

「泣かないわよ!!」

「作ってどうするの?」


 今までできないものは仕方ないんだって思ってた。できなくてもみんながどうにかしてくれるって。でもあんなに嫌いだった勉強も嫌いなままだけど……でもできた。お店でのマナーも難しいけど頑張って覚えられた。琉依さんと優菜が楽しく覚えさせてくれたから。優菜のお母さんが前に教えてくれた通り楽しいって思った。だから今までできないからやらないで諦めてたことも今ならできる気がした。真紀ちゃんが彼氏の胃袋を掴むためにお弁当を作ってるんだって言ってたからお弁当を作ったら琉依さん私を好きになってくれるかもって思った。


「琉依さんに作るの!!」

「あら……そうなのね。じゃあ頑張らないとね。なに作る?」

「琉依さんなんでも好きって言ってたよ!!あ、琉依さんのお母さんはね、アメリカ人だから和食は食べないわ!!洋食が1番好きなのよ!!」

「そうなのね。じゃあ明日から簡単なものから作ってみようか」

「うん!!」


 私記憶力が良いから覚えてるの。前に私が好きなものをお話しした時なんでも好きって言ったけどパスタもピザもカレーも中華も好きだって言って甘いものも好きだって言い忘れたと思った。でもあのあとおうちに帰ったら和食も好きって言い忘れちゃったと思った。だけど琉依さんも和食が好きとは言わなくて私が言ったのと同じだって言ってたはず。多分。あれ?洋食が1番好きとは言ってなかったかも?忘れちゃった。でも琉依さんのお母さんはアメリカ人だもん。きっとおうちでは洋食ばかりに決まってるわよね。うん、きっとそう。




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