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ボウリング(美香視点)


 琉依さんからの電話はいつかかってくるんだろう。朝から待っていたらお母さんに、お友達と話してからって言ってたんだから夕方か夜でしょって言われた。だからお店でお手伝いをして過ごした。

 お昼ご飯を食べてる間にお兄ちゃんに聞いてみた。デートって優菜と一緒にお勉強しててもデートなのって。そしたら男の子と女の子が2人で遊ぶことをデートっていうけどなんでも良いんじゃないって言われた。なんでも良いのかーって思った。それからお兄ちゃんは真奈美さんって彼女がいるけど真奈美さんとどんなデートをするのって聞いてみた。そしたら映画館に行ったり食事に行ったり記念日をお祝いしたりとかって言われた。記念日ってなんのって聞いたらお互いの誕生日とか付き合い始めた記念日とかって言われた。

 そういうものなんだーって思いながら時間は18時。常連さんをお見送りしたらお兄ちゃんに呼ばれる。


「琉依さんから電話だよ」

「えー!!出る出るー!!」


 急いでおうちに入って電話を取る。


「も、もしもし!!」


 慌てて喋ると琉依さんの笑い声が聞こえた。笑われちゃった。でも琉依さんに笑ってもらえるの嬉しいな。


『お店のお手伝い中にごめんね』

「全然大丈夫です!!」

『ボウリングなんだけどね、高校の夏休み最後の日でも良い?日曜日なんだけど』

「聞いてきまーす」


 お店に戻ってお父さんに聞いてすぐにまた戻ってきた。


「琉依さん!!大丈夫です!!」

『ほんと?良かった。じゃあそうしよ』

「はい!!」


 ボウリングは日曜日。楽しみだなあ。あ、電話もう終わっちゃうのかな。朝から楽しみにしてたのにこれだけじゃ寂しい。けど用事は終わっちゃったし……。


『ねえ、美香ちゃん。まだ時間大丈夫?』

「え?大丈夫ですよ?」

『じゃあもう少し話して良い?』


 わー!!ドキドキするー!!緊張するー!!


「お、お話したいです!!あの!!琉依さんのお誕生日はいつですか!?」

『え、誕生日?』


 お兄ちゃんは誕生日をお祝いするって言ってた。誕生日をお祝いするには誕生日を聞かないとできない。私って頭良い!!


「はい!!お誕生日をお祝いするんです!!」

『そっか。えっと、でも僕の誕生日は5月だから来年だね』

「えー!!そうなんですか!?」


 大変、これじゃあ来年までお祝いできない。


『うん、美香ちゃんの誕生日はいつなの?美香ちゃんのをお祝いするよ』

「本当ですか!?私はですねー9月30日ですよー今年は金曜日です!!」

『9月30……あー』


 琉依さんの声が聞こえなくなっちゃった。どうしたんだろう。


「琉依さん?」

『ごめん美香ちゃん。その日は仕事の取引先との打ち合わせがあって。サボったらさすがにまずいとこなんだよね』


 しゅん……。じゃあお祝いできないんだ。残念だなー……。


『ごめんね』


 琉依さんが悲しそうに言ってくれて琉依さんを元気にさせなくちゃって思った。


「大丈夫です!!お誕生日はいつも家族でお祝いするんです!!」

『そっか……プレゼントは買うね。土日で予定合ったら会おう』

「はい!!」

『美香ちゃんは今日ずっとお店のお手伝いしてたの?』

「そうですよー。朝ご飯食べて琉依さんの電話はまだかなーって言ったらお母さんに夕方か夜だって言われて、お店のお手伝いをして、常連さんと琉依さんのことを話して、お昼食べながらお兄ちゃんにお兄ちゃんはどんなデートをするのって聞いたりして、で、さっきもお客さんと琉依さんの話をしてましたよー」


 どうしたんだろう。琉依さんがなにも言ってくれない。聞こえてなかったのかなー。


「琉依さーん?琉ー依ーさーん」

『可愛い』

「可愛いですか?」

「うん」


 今日していたことを話しただけなのにどうして可愛いんだろう。でも琉依さんに可愛いって言われて嬉しい。


「琉依さんは今日お仕事してたんですよねー」

『ううん。会社で仕事しないで美香ちゃんのことずっと話してたよ』

「わーそうなんですねー。私も琉依さんのこと考えてお話してましたよー」

『一緒だねー』

「そうですねー」


 嬉しいなって思っているとお店からお父さんが早見さんだよって教えてくれた。


「仲良しの常連さんが来たので行かないと」

『そっか。頑張ってね』

「ありがとうございます」


 ボウリングに行く日の時間と待ち合わせ場所を決めて電話を切った。お兄ちゃんに、今日していたことを話したら可愛いって言われたのって話したら良かったねって言われた。嘘じゃないわよって言ったら、もうわかったって。琉依さんはすごく良い人だってわかったって言ってた。なんでかな。






 そして今日は夏休み最終日。待ち合わせの駅につくとみんながいた。だけどなんだか優菜が村岡さんと木村さんと喧嘩してるみたい。


「美香ちゃんこんにちは」

「琉依さん……こんにちは。あの……優菜……」

「いつものことだから気にしなくて良いよ」

「そうだよ。喧嘩するほど仲が良いっていうしね」


 関さんがそう言う。喧嘩するほど仲が良い……そっか!!優菜この前別れてから彼氏いないし仲良しなら!!


「ねえ優菜ー!!木村さんと村岡さんどっちとお付き合いするのー?」

「付き合うわけないでしょうが!!」

「ありえない!!」

「誰がこんな性悪女と付き合いますか」

「ひゃー!!」


 優菜と木村さんと村岡さんに怖い顔をして言われて思わずそばにいた関さんの後ろに隠れる。


「女帝なんて頼まれても嫌です」

「誰が頼むってのよ!!」

「えーん!!怒られたー」

「美香ちゃんは本当に面白いね」

「女帝はねえよなー」

「女帝ってなんですか?」

「優菜のあだ名だよ!!」

「そうなんですかー?」

「我が儘で自分勝手で上から目線で偉そうで性格が最悪すぎます。こんなに意地汚い人は他に見たことありません」

「こ、これは苛め!?」


 大変だ、どうにかしないと。


「いや、苛めてるわけじゃない」

「竜二さん、そーなんですか?」

「事実を言ってるだけだ」

「えー……優菜は良い子ですよ?」

「まあみんなそう言ってるだけで優菜ちゃんを嫌ってるわけじゃないよ。苦手なだけで」


 小林さんが苦笑いして教えてくれる。そっか、苛めじゃないなら良いのかな。


「小林さん小林さん、加代子さんがこの前本屋でデートしてたよ。小林さんじゃなくてもっとかっこいい人。誰だろー」

「……加代子は浮気しないから」

「どうかなー。たまには遊びたい時もあるんじゃない?だって小林さん真面目すぎて面白くないもん」


 小林さんが関さんに慰められてる。どうしよう。


「お前えげつないな!!彼女の浮気チクるだけじゃなく小林さん自身も否定するなんて!!」

「ちょっと木村、加代子ちゃんが一緒にいるの小林じゃなきゃお兄さんの正之さんだけだよ」

「小林さんの個性を否定したらなにが残るんですか」

「村岡が一番ひでえよ。小林には他にも良いとこがあるだろうが」

「どこだ?」

「そりゃー竜二さん……どこっすかね」


 なんだろう……とりあえず小林さんを元気付けなきゃ。


「小林さん、元気だしてください!!」

「美香ちゃん……ありがとう」

「ねえねえ!!小林くんなんてどうでも良いから早く行こう!!」


 琉依さんが小林さんを慰めてる私のそばに来て思わず逃げる。あれ?私どうして逃げるんだろう。心臓がドキドキしてる。そっか!!琉依さんがかっこよすぎるからだ!!


「琉依、落ち込まない」

「関さん……」

「とりあえずボウリング早く行こうよーね、美香」

「あ、うん。小林さん平気かな」

「平気平気。小林さんだって冷静に考えれば加代子さんが浮気なんてありえないってわかるし」

「煽ったのお前だろ」

「本当に性格悪いですね」


 すたすたと歩いていく優菜について歩いていたら木村さんと村岡さんが隣に来てそう言った。なんだかんだ優菜と仲良しなんだ。


「ねえキムチー」

「キムチってなんだよ!!」

「反応してるじゃん。木村っちって言いにくいことに気付いたのよ。今日からキムチ」

「お前……キムチとかかっこわるいだろ!!」

「普通にいつもかっこよくないから良いわよ」

「ムカつく!!」

「どうしよう……やっぱり喧嘩し始めちゃった……」


 あわあわしてるうちにボウリング場についた。なんだか元気になったみたいな小林さんがくじを作ってくれてチーム分けをした。私は関さんと村岡さんと。琉依さんは昇さんと小林さんと。優菜は竜二さんと木村さんと。


「どうして僕美香ちゃんと同じチームじゃないの?」

「え、どうしてって……えっと」


 くじで決まったからだけど琉依さんはなぜかムッとしてる。どうしちゃったんだろう。


「馬鹿。くじに文句つけんじゃねえよ」

「美香、勝負だからねー」

「うん、負けないからね」


 琉依さんが気になったけど優菜に背中を押される。


「美香ちゃん頑張ろうね」

「よろしくお願いします、関さん、村岡さん」

「なんでこういうチームわけなんでしょう」

「村岡も小林が作ったくじに文句あるの?」

「……変わり者のくせに打たれ弱いですね。文句ないです」


 村岡さんが小林さんの方を見て言う。


「最近ちょっと上手くいってないらしいよ」

「まさか。なんの変哲もない幼馴染みからの付き合いなのにですか?」

「まあいろいろあるんじゃないかな」

「一番変なのは関さんと翠さんですけどね」

「あはは、そうだねー」


 翠さんとか加代子さんって誰だろう。加代子さんは小林さんの彼女さんってことで良いんだよね?私が不思議そうにしてると関さんが教えてくれた。


「加代子ちゃんは小林くんの幼馴染みで彼女なんだよ」

「面白味は特にないです。でも加代子さんは生粋のお嬢様です」

「加代子ちゃんの家は呉服屋でね。小林くんは普通の家なんだけど幼馴染みで親同士も仲が良くてすんなり。まあ上手くいってないっていっても大学卒業したら結婚するよ」

「問題は関さんです。翠さんという婚約者がいるのにふらふらしてます」

「そうなんですか?」

「んーまあいろいろあるんだよ。とりあえず翠さんは一応俺の婚約者。あと……かこちゃんは良いかな」

「そうですね。美香さん頭悪いですから覚えられないでしょう」

「私記憶力は良いですよー」

「本当ですか?」

「まあそのうちで良いと思うよ」

「関さんも村岡くんも始めますよー」

「琉依煩いね」

「いつも以上に琉依さんうざいです」

「ねえ2人とも美香ちゃんに近付きすぎ。もっと離れて」

「はいはい」

「面倒な男ですね」

「準備できたから始めますよー!!」


 木村さんの声でボウリングが始まった。関さんと竜二さんがすごく上手で、昇さんも最後の方ですごくて……結果的に勝ったのは優菜たち。


「優菜おめでとー」

「竜二さんはさすがだね。琉依兄と違って」

「えっと……琉依さん大丈夫ですか?」


 琉依さんはなんだか疲れてるみたいで座ってぐったりしてる。


「嫉妬で疲労がすごいね」

「……関さんの意地悪」

「なにが?」

「村岡くんの意地悪」

「俺はハイタッチしてません」

「仲良くしてた。意地悪」

「面倒ですね」


 どうしちゃったんだろう。琉依さんを元気にしたいのに……。もっと元気になれそうなことを考えなくちゃ。そうだ。


「ねえ優菜、文化祭はみんな来れるのよね」

「チケット持ってる人なら入れるよ」

「じゃあ琉依さん!!文化祭来てください!!」

「え、行って良いの?」

「はい!!これから決めるのでなにするかわからないですけどきっと楽しいです!!みんなで遊びに来てください」

「あ、みんな……だよね」

「まあ良いじゃねえか」

「女子校の文化祭とか楽しそうじゃないですかー!!やったー!!」

「女子校の文化祭に琉依兄1人でいたら即身動きとれなくなるからみんないた方が良いわよ」

「んー……まあそんな気はするし、まあ良いや」

「竜二さんも小林さんも村岡さんも来てくれますか?」


 なんだかこそこそ話をしていた3人に聞いてみる。


「竜二さんも人が悪いですね」

「良い考えだろ」

「まあ楽しそうではありますね」

「美香ちゃん、なにするのか決める時に喫茶店にするんだ」

「へ?」

「良いな、優菜」

「なにがー?」


 竜二さんが優菜になにか話すと優菜は苦笑いする。


「まあ、撮れ高はありそうね。乗った」

「お前は悪い女だな」

「竜二さんに言われたくないよ」


 なんだろう。とにかくみんな来てくれるってことで良いみたい。良かった。

 


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