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さよなら、聖女様  作者: タンバリン
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父様や母様と、夜更かしをして、私はいつの間にか寝てしまっていたようだった。

目が覚めて、辺りを見回すと両親は窓のそばで椅子に座り何か話しをしている。


夜はもう明けて、空は青く輝いていた。

火事は起きなかった。



やはり、というかなんというか。



あの日教会へ行くことを拒否したことで館は燃やされたことはなんとなく気がついていた。

焼け焦げた父様や母様、マイトや使用人達の姿は今でも思いだせるもの。




やはり私が、聖女であることが原因だったのか。





血の気が引き、嗚咽が漏れる。



それに気がついた両親はすぐに抱きしめてくれた。














1週間が経ち、いつもの日常が戻ってきた。



皆、欠けることなくすっきりとした顔で戻ってきた。



嬉しくて一人一人に挨拶をしに行った。

皆が笑顔で、前には迎えられなかった日々を送っている。これからがどうであれ、間違った選択はしていない。そう確信した。












ーーーーーーーー






















「おかしい…!おかしいぞ!なぜ現れない、何故、あいつはやってこないんだ!!!!」



怒りに声を震わせ、地団駄を踏む主は、有り余る怒りを目に浮かべ声を荒らげている。

極東の教会で15歳にして神官長となった主は、心優しく、大きな癒しの力を持つ美しい男だった。

だが今は神官に似つかわしくない表情で苛烈に怒りを顕にしている。


「あいつはもう来ているはずだ。聖女は降臨したはずだ!!奴がいなければ、隣国との戦争にも勝てんし、あの時と同じ地位まで上り詰めることはできないじゃないか!!!!」



あいつが誰なのか、その内容がすべてちんぷんかんぷんで周りの従者達は何も言えないでいる。

本当にどうなさったのか。権力なぞ必要のないものだとおっしゃっていたのに。

聖職活動をする高官を諌める立場の人間であるのに。

昨日まではいつもの主であったのに…





















ーーーー











昨夜、私は唐突に思い出したのだ。






2回目の人生を歩んでいることに。


あの日、元聖女の処刑を行った所までは覚えている。

あいつは異界から来た聖女に嫉妬し、彼女の力を使えないよう神に祈ったから処刑された。

最後の言葉が原因なのか?いや、きっと殺すべきではなかったのだろうか。今回は慎重に幽閉できる準備を整えるべきかもしれない。






しかし、しかしだ。

同じ日を繰り返しているのに、何故あの女はやってこない。昨夜には聖女降臨の報告が教会に届いているはずだった。



あいつがやってきて色々と世話をし、後見人となって指示を出し続けた。全ての貴族に恩恵を与えることが出来た。



それにより、陛下の覚えも目出度くなり、教会内の地位も、王都での地位も高くなり相談役として付かせていただける、そんな未来があるのだ。




全ての民に幸福と利益を与える為に神官となった。

祈りを捧げ、慈善活動をする毎日であったが、

どんなに良いことをしても【聖職活動】をする高官共は居なくならず、どんどんと教会への不信感が募った。




だから、今こそ必要なのだ。






今日、洗礼を行った中に、あいつはいなかった。

領主夫婦が連れてきた女児は可憐ではあったが、洗礼中に何も起こらなかった。

だが、確信している。あいつも同じように繰り返していることを。

もしかしたら記憶もあるのかもしれない。




まあ、いいさ。

また同じように連れてこればいい。







「まっていろ、アンレスタ。」









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