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さよなら、聖女様  作者: タンバリン
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5

ーーコンコン



「父様、母様、朝早くにごめんなさい。お話をさせていただけないでしょうか?」





「…アンレスタか。入りなさい。」



少し経ってから父の声がした。

どうやら父はもう起きていたようだ。







寝室に入ると心配そうな寝起きの母様と、起きて立派な肘掛け椅子に座っている父様がいた。





「父様、母様、朝早くにごめんなさい。今日は2人にお話したいことがあってきました。」




緊張した面持ちでそういうと、




「それは今でなければだめなことなんだね?」



優しい笑顔を見せ、父様が言った。




「今じゃないと、だめなんです。」






そこから起こったこと全てを話した。

勿論、信じてもらえるなんて思っていなかったけれど、両親は真剣な顔で私の話を聞いてくれた。





これから起こること、これからされる仕打ち、なぜ夢ではなかったと言えるのか。




証拠はないけれど、1人ではどうにも出来ないと思った。貴方達を頼りたい。助けて欲しい。





一生懸命に訴えた。





最後、両親は泣いていた。












ーーーー



木から落ちてから、アンレスタの様子がおかしいことはずっと気にかけていたの。



だけど、こんなに大きなものを抱えていたなんて、胸が痛かった。




夢だ、安心してちょうだいと言うには現実的すぎる内容だった。


これから、わたしの娘にこんなことが起こったなら、その時に私はそばに居てやれないなら、

アンレスタは一人でそれを背負うしかない。






一生懸命に、私たちや関わる人たちを失いたくない。

助けて欲しい。洗礼には行きたくない。そう訴える娘を、抱きしめてやることしか出来なかった。






聖女降臨の件については、有り得ない話ではなかった。

先代の聖女が御隠れになって200年目の年。

200年周期前後とざっくりしたものにはなるが、ある程度の法則性を持って聖女は降臨する。




聖女が現れれば国が安定し、聖女が祈れば国は繁栄する。




これは、聖職者の間では有名な話であった。


妻になる前、私は教会でシスターをしており、夫のアルドースと恋に落ち、結婚をすることで教会から抜けなければならなかった。


最近ではそういうシスターも多いから、特に問題なく結婚をした。





ただ、一般の人は知らないことであった。





口止めはさらていないからどこかで聞いた可能性もあったけれど、10歳になる幼い娘が何故それを知っているのか。

今日まで1度も館を出たことのない娘が、何故祭りの華やかさや、教会の位置、声をかけてきた大工の男や八百屋の女将、その他大勢の領民のことを知ったのだろう。






アルドースが話せばわかるかもしれないが、ここまで一致していると信憑性は増した。





もしもこれが本当に起こった出来事なら、目の前の娘は、どんなに辛い目にあってきたのか。



想像しただけで涙が出てきた。




そしてアンレスタをぎゅっと抱きしめることしか出来なかった。








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