表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星草物語  作者: 東陣正則
53/149

盗賊


     盗賊


 丸二日吹き荒れた砂嵐が嘘のように静まり、西の地平線に三日月が浮かぶ。

 人の爪跡のような月を右手に見ながら、五頭ばかりの毯馬の隊商が、日没直後の砂漠を行進していた。行く手に黒い岩影が近づいては遠ざかっていく。

 振り返ると、後方に砂漠を分断する白い帯が緩やかな曲線を描いて横たわっている。

 ディエール川だ。ほんの一週間ほど前までは、渡る者を拒む駘蕩とした水の流れだったが、今や時を止めたように凍りついている。

 一行はすでに晶砂砂漠の南端に来ていた。

 ディエール川の北側が、満都末裔のゲルバ族の支配するゲルバ護国である。

 川を越えた今、もうゲルバの巡検隊に捕まり、櫓に吊される怖れもなくなった。砂嵐を押して、ひたすら砂漠の裏街道を走り続けてきた盗賊たちは、ようやく毯馬の手綱をゆるめ、鞍の上で安堵のうたた寝を貪っていた。眼を覚ましている者も、もう安心とばかりに、革の帽子を裏返し、黄色い裏生地を曝け出している。

 一列に並んだ隊列のちょうど真ん中、毯馬の背に振り分けに括りつけられた二つのカゴに、ウィルタと春香は手足を縛られ、毛布で素巻きにされた状態で押し込まれていた。

 起きる度に眠り薬を嗅がされる。それが何度続いたろう、また薬が切れてくる頃だ。

 カゴの編目に髪が引っ掛かった痛みで、ウィルタは眼を覚ました。薬が体の中に残っているのか、靄がかかったように頭がぼんやりとしている。それに何度も薬を嗅がされたおかげで胸がムカムカする。不快な気分を我慢しながら、ウィルタはカゴの隙間から外の世界に目を凝らした。薄日が砂漠を照らしている。

 しばらく見ているうちに、それが月明かりであることに気づいた。

 少しずつ記憶が戻ってくる。

 板碑谷のミトのこと、タクタンペック村のこと、フーチン号で川を下ったこと、ホブルさんの岩船屋敷に、尼商とジンバの子供たち、手灯の少女、砂呑窟、オアシス、隊商宿のハジル、ジンバ市、麻黄苔、クリスタルケース、火炎樹の種、地下道……、

 順番にそこまで思い出して、ウィルタの脳裏に意識の途切れた瞬間が蘇ってきた。カゴに顔を押しつけ、もう一度外の様子をうかがう。

 毯馬の背に跨っているのは、あの時の盗賊の一味だ。岩の多い風景からして、ここは晶砂砂漠のはずれ。口を塞いでいた布が外されているということは、人のいない土地を移動しているということだろう。

 ウィルタはカゴ越しに、煙苔を吹かしている男に声をかけた。

「おしっこがもれる」

 煙が乱れ、男から声が返された。

「我慢しろ、もうじき泉だ」

 思ったよりも愛想のいい声に「春香ちゃん、女の子は?」と続ける。

「心配するな、連れは反対側にぶらさげてある、大事なお宝だからな」

 呼応するように春香の声が、毯馬の背の向こう側から聞こえた。

「喉が乾いたわ、水を飲ませて。それから毛布をもう一枚ちょうだい、寒くて凍えそう」

 ウィルタには分かった。春香は自分が元気でいることを知らせようとしているのだ。

 春香に返事をするように、ウィルタも声を上げた。

「こっちも喉が乾いた。それにお腹も」

 後ろから怒鳴り声が返ってきた。

「うるさいガキどもだな、ギャーギャー騒ぐと口を縛るぞ」

 声にうがいをするような響きが混じっている。例のナマズひげの頭目だ。

「黙るから、毛布をあげてよ。彼女は寒さに弱いんだ」

 ウィルタが注文をつけると、物を打ち据える音が辺りの空気を震わせた。キセルを鞍に打ちつけた音だ。これ以上何か言うとまずいと考え、ウィルタはあっさり口を閉じた。

 賊は自分たちを、どうしようというのだろう。それに離れ離れになってしまったホーシュやトゥンバさんは……、何がどうなってしまったのか、皆目分からない。

 ただ……、今は自分と春香が生きている、そのことの安堵感の方が勝っていた。

 ウィルタは籠に頭をもたれさせると、再度、カゴの隙間から外に目を向けた。

 砂の地平線の先に、お椀を被せたような黒い山が三つ並んでいる。

 頭のなかに晶砂砂漠の地図を思い浮かべる。確かディエール川の南東方向に、三連つながりの山があった。ディエール川の曲線と、三連山の連なりを頭の中で組み合わせて、自分たちの進んでいる方向を割り出そうとする。ところが頭を使おうとすると、金槌で叩いたような痛みが後頭部に走る。ホーシュを助けようとして賊に殴られた場所だ。

 目を閉じて痛みをやり過ごそうとするウィルタに、春香の歌声が聞こえた。優しく頭を撫でるようなメロディーに、ふっと痛みが抜ける。

「こら、うるさいぞ、黙れと言っただろう」

「あら、注文をつけたのは、そっちの男の子の方にでしょ。カゴの間から奇麗な三日月が見えているの。黙っているなんてもったいないわ」

 構わず、春香は歌を続ける。

 援護するように、手下の一人が頭に呼びかけた。

「いいじゃないですか、ゲルバの巡回地を越えて、丸一日も経ってるんですぜ。誰かに聞かれるのがまずいんなら、あっしも歌いまさ。あっしの声は大きいから、女の子の声なんざ隠れちまう」

「ばかいえ、誰がおまえの歌を聞きたい」

 渋々といった調子で、ナマズひげの頭目が「女、おまえ一人で歌え」と怒鳴った。

「ハーイ」という、あっけらかんとした春香の返事に、手下たちが、どっと太い笑い声を上げた。とその笑いがしぼむ。ナマズひげが睨みを利かせたらしい。

 春香が歌を口ずさみ始めた。さっきとは別の曲で、その旋律を追いかけるように、前から後から、手下たちが鼻歌を合わせる。夜の砂漠にゆったりと歌が流れた。

 次の泉を出発する際、春香とウィルタは縛っていた紐を解かれた。

 手足を折り曲げカゴのなかでじっとしている窮屈さを除けば、自分で歩く必要はないし、食事の合間には温かいお茶も出る。今までにない楽な旅となった。唯一問題があるとすれば、カゴの底に敷いてある毛布にダニがいることで、体を食われて痒くて仕方がない。

 しかしこれは我慢するしかなかった。


 翌日、奇岩の散らばる涸れ谷の跡で、毯馬三頭の小隊が別の方向から合流してきた。追っ手を撒くために、隊を二手に分けていたらしい。これで賊は八名、合流した賊の中に、あの手足の長い蜘蛛腕がいた。

 小休止の際、一味はゲルバの黒ずくめの衣服を脱ぎ捨て、別の服に着替えた。裾を絞ったズボンと綿入れ風の上着、それに黒と黄の幅広の横縞を縫いこんだチョッキである。聞こえてくる賊の話から、彼らが漠刺党という名の一味であることが分かった。頭目のナマズひげは、名をブーンという。春香は、その名が一味の着ている服と合わせて、虫の蜂を連想させ、思わず笑ってしまった。

 無事に合流したことを祝って杯が回される。

 ブーンの指示で蜘蛛腕が革袋を取り出し、中身を敷布の上に空けた。ジャラジャラと転がり出た小石のようなものを囲んで、男たちが歓声を上げる。

 ブーンの一味は、火炎樹の種を強奪する際に、同時に遺物館の一室に展示してあった印も盗み出した。印の素材は高価な玉や貴石である。軽量で小さく、かつ値の張る印は、かっぱらって逃走するには格好の獲物で、種の強奪に失敗した際の保険をかけるように、ブーンは手下に印の持ち出しを命じていた。

 母種は手に入れ損ねたが、印の奪取には成功した。それに後から気づいたのだが、盗んだ百個余りの印のなかに、名にし負う満都時代の国璽が含まれていた。瓢箪から駒である。

 ブーンが青磁のような淡い肌合いの角印を、愛でるような手つきで摘み上げた。

 最低限の苦労が報われたこと、それにゲルバの巡回地を抜けたこともあって、一行の足取りが軽やかになった。そしてこの頃には、ブーンの一味は、春香とウィルタがユルツ国の探している子供らしいと気づいていた。

 

 ディエール川を越えた夜から砂漠を南に向かって三日目。

 砂に埋没した石積みが現れた。満都時代の貯油施設の残骸で、すでに瓦礫の山と化している。ここが晶砂砂漠の南限で、この遺跡を過ぎれば同じ砂漠であっても、ガラスの晶砂ではなく、ありふれた石の砂の砂漠となる。その並砂漠を突き進めば、やがて砂に苔のついた石が混じり始め、大地は曠野へとその姿を変えていく。

 一行は、多肉植物のような堅い蹄苔の群落が点在する半砂漠地帯を進んでいた。

 前方に連なる低い山稜地帯の彼方に、冷月山という台形の山が見えてきた。

 この日の午後、石を土塁のように積み上げ、天井を皮布で覆った簡易小屋の並ぶ集落に到着した。ラングォ族の砂掘りキャンプにあったような櫓が、砂地に建っている。

 満都時代、電鍵通信を行うために唱鉄隕石の排除が行われた。それは徹底的な排除で、唱鉄隕石に限らず、隕石と思しき石は、かたっぱしから拾い集められ、満都周縁部に深い穴を掘って埋められた。近年、その穴を掘り返し、唱鉄隕石と共に埋められた他の有用な隕石や、貴石、玉、宝石の類を捜すことが行われるようになった。

 目の前の集落が、そのキャンプ地である。

 ブーンの漠刺党は、ここで休憩と食料の補給を予定していた。

 二人はカゴに押し込まれたまま、荷物と一緒に納屋に放り込まれた。見張り役として一味の下っ端、口に短いナマズひげを生やした若者、小ナマズが残された。

 納屋と棟続きの母屋は、この穴掘りキャンプの元締めの小屋で、そこでブーンたちは久方ぶりの酒を臓腑に流し込む。ゲルバ族の支配地を抜け、陽気な話し声が飛び交う。

 突然、ブーンが雄叫びにも似た声を上げた。

 ブーンが自慢げに見せた満都第六王朝の国璽を、キャンプに常駐していた石の鑑定士、目利きの男が、擬石の印と断定したのだ。つまりニセモノである。穴掘りのキャンプに到着した時からブーンは、満都の国璽を手に入れたことを、キャンプの面々に吹聴していた。普段ならブーンは仕事の獲物をひけらかしたりしない。それが、ここ一番の大仕事が、最後の最後に手下の裏切りで頓挫したため、その悔しさが印の自慢という形で噴き出たようだ。国璽を握るブーンの手がブルブルと震える。

 この時、母屋の入口には、貴重な国璽が拝見できるとばかりに、キャンプの連中が集まっていた。面目を潰されたブーンは毒づくように席を立った。

 頭目の抜けた漠刺党の手下たちの面前で、目利きの男は、せっかくだからと一味が持ち出した他の印の鑑定も始める。すると百個余りの印のなかで、本物はたったの二個。その本物にして、下級官僚の使う安物の官印で、高価な貴石や玉石でできていると思った印は、全て展示用の贋作、イミテーションだった。おまけに、併せて持ち出した印材の見本用の貴石までが、擬石を塗装して作られたものだった。

 冷水を浴びせ掛けられたように静まり返った面々に、「なにをぐずぐずしてやがる、物資の調達をしたら直ぐに出発だ!」と、ブーンの怒鳴り声が小屋の外から叩きつけられた。

 半刻後、毯馬を繋いだ駐毯場に、食料袋を抱えた小ナマズが息を切らせて戻ってきた。

 蜘蛛腕が調達品の入った袋を受け取るや、小ナマズの頭を小突いた。

「何をグズグズしてやがった、お頭がカリカリしてるのは分かってるだろう」

「すいやせん、餅の数が揃わなくて、おまけにカビた餅が混じってたもんで」

 言い訳を重ねる小ナマズの向こう百尺小屋から、目利きの男が顔を覗かせ、こちらを見ている。蜘蛛腕が、ハハンと鼻を鳴らせた。

「おまえ、あの目利きに何か鑑定してもらったな」

 見透かすような兄貴分の指摘に、小ナマズの短いひげが、ピリピリと感電したように震える。それを見て蜘蛛腕が「悪党になるつもりなら、その正直すぎるひげをなんとかしろ」と、叱り飛ばした。

 赤面する小ナマズの前方で、ブーンが「出発だ!」と、鞭を鞍に叩きつけた。


 怪我をした毯馬が一頭穴掘りキャンプに預け置かれた関係で、小ナマズがウィルタと春香を乗せた毯馬を引いて歩くことに。贋作の印のこともあり、行軍に重苦しい空気がまとわりつく。そして数刻後、泉の縁で小休止……。

 下っ端の小ナマズは、兄貴分に苔茶を配ると、カゴから頭を出している子供たちの側に来て腰を落とした。そして懐から小ぶりの巾着袋を取り出した。

 オアシスのギボを脱出してすぐのこと、ブーンの一味は、いかにも盗賊らしく、子供たちの所持品を改めた。もちろん金目のものを捜してだ。ところが二人は着の身着のままで、衣類以外で目ぼしいものといえば、紡光メダルと、巾着袋の中にウロジイからもらった灰色の石と小銭が数枚。あとは、春香が首に下げていた、チャビンさんから渡されたお守りの小さな袋くらいだ。

 小銭は目敏く蜘蛛腕が抜き取った。お守りは端から問題外。メダルと灰色の石が、煙苔の回し飲みように一味の男たちを一巡する。しかしメダルは樹脂製の飾り物、灰色の石は廉価の擬石にしか見えず、誰も手を出さなかった。唯一小ナマズだけが、灰色の石が丁寧に布でくるまれていたことを気に留め、もしやという期待を込めて自分の袂に押し込んだ。

 その灰色の石を、小ナマズは出発前の買い出しのドサクサに紛れて、目利きの男に見せた。すると百個近い印を、あれほど簡単に鑑定した目利きの男が、灰色の石をしげしげと眺めまわしたあげく、鼻先で指標石と擦り合わせたのだ。

 隕石の同定に匂いが決め手になるというのは、知れたこと。小ナマズは身を乗り出し、目利きの判断を待つ。ところが思わせぶりな素ぶりに反して、目利きの口から出てきたのは、「ただの糞石だな」という、小バカにしたような言葉だった。

「ユルツのお尋ね者なら、もっと増しな物を持ってろ」

 腹立たしげに言って、小ナマズは灰色の石をウィルタに突き返した。

 なにはあれ、紡光メダルとウロジイから渡された灰色の石は、二人の元に戻ってきた。

 

 ディエール川を越えて四日目、進路をやや西寄りに移したせいか、冷月山は角度を変えただけで、いっこうに近づいてこない。それよりも砂礫の平原に、砂漠ではけっして見ることのなかったリウの群落が顔を覗かせるようになった。盆栽のようにいじけた育ち方をしたリウだが、休憩時に毯馬たちがそれを貪るように食んでいる。

 頭目のブーンは印の件が腹に据えかねるらしく、不機嫌そうにひげをピリピリ震わせ、何かというと子分に当り散らす。そんな神経質な頭目を、蜘蛛腕が赤子の子守りでもするように宥めすかしていた。

 漠刺党の一味が向かっているのは、オーギュギア山脈東の裾野を南北に貫く諜石街道の末端の町、冷月山の麓の蓬楽という宿郷である。頭目のブーンは、そこでウィルタをユルツ国の者に差し出すつもりで、いま時分、先行したカマキリ顔が蓬楽に着いて、その段取りを組んでいるはずだ。

 母種の強奪に失敗し、盗み出した印も空振り、おまけに裏切り者のビットが巡検隊に一味の情報を漏らす可能性もあって、当分ゲルバ護国の内側では仕事ができない。頭が痛いのは、新規に仕事を立ち上げるにあたって、まとまった軍資金が必要ということだ。

 その金を、ブーンは二人の子供を売り飛ばして工面しようと考えていた。


 夜、砂地にテントを張り、むしり取った苔を山積みにして火をつける。

 焚き火を囲むように車座になると、漠刺党の男たちが酒を回し始めた。

 縛られたままテントの中に転がされたウィルタと春香に、男たちの話し声が聞こえてきた。話題はウィルタたちに懸けられた賞金についてだ。

 蜘蛛腕が、鍋から出した熱々の酒を、ブーンの角杯に注ぎながら問いかける。

「お頭、あんなガキのどこに、四万ブロシュの価値があるんですかね。身なりも貧相だし、言葉は、ありゃ曠野のなまり。とてもえらい学者の息子には見えねえんですが」

「手配書が街道の宿に配られてる、間違いねえ」

 ブーンが自信を持った顔で熱酒をすする。

「小僧が四万ブロシュ、だが交渉して五万は出させるつもりだ。それに娘の方もジンバとして売れば、五千ブロシュにはなる」

「え、娘をユルツ国に渡さないんですか」

 頭の杯に酌を傾けながら、小ナマズが意外そうな表情を浮かべた。

「賞金は坊主の方に懸かっているということだ。手配書には二人連れとあるが、娘の方は死んだことにすればいい。女は女で転売した方が金になる、そうだろう」

「ごもっともで、しかしお頭、あんな小娘が五千で売れますかねえ」

 短いひげを少しでも伸ばそうと、せっせとひげをしごく小ナマズの前で、ブーンは飲み乾した杯を脇に置くと、手にした長キセルを背もたれ代わりの鞍に打ち当てた。

「あの娘の真っ黒な目は、この先に住む碧眼赤髪のムン族の連中には、福眼、つまりだ、幸運を運ぶ目として喜ばれる。それに自分たちと違う種族のほうが、ジンバとして扱いやすいということくらい、おまえにも分かるだろう」

 小ナマズが感心したように首をヘコヘコと前に倒した。

「落ちぶれても素封家の育ちだけあって、親分は学が深い。あっしにゃ使われる身分にはなれても、使う身分なんて想像もつかないこって」

「落ちぶれては余計だ!」

 ブーンは結局キセルを吸わず、代わりに袂から黒いチューブを取り出した。捻り出したグリスを長いひげに塗りつけながら、もったいぶったように説明をつける。

「伝令のカマキリには、そっちの話もつけて来るように言ってある。蜂楽で男のガキをユルツの手の者に渡す前に、娘を片づける。娘は、明日、ムン族の土賊に売り渡す」

「さすがはお頭、手回しがいい」

 小ナマズが手を打ち、頭をヨイショ。その拍手をきっかけに、車座になった手下たちから手拍子が起き、歌が始まる。吹き出したくなるほど下手な歌だ。

 二人を売り渡す前祝いのように始まった酒と歌の粋狂が、ウィルタのいるテントにも伝わってくる。けれどもウィルタの耳に聞こえているのは、調子っぱずれの歌ではなく、ブーンの言った「春香をジンバとして売り払う」という一言だった。

「売り払う」という言葉が、頭の中をグルグルと回る。

 今の今まで、ウィルタは、春香と自分が二人一緒にユルツ国に引き渡されるものだとばかり思っていた。それが先に春香だけがジンバとして売り払われようとしている。

 なんとかして春香が売られるのを、止めさせなければ……。

 そうは思っても、手足に巻かれた紐は、動くと余計皮膚に食い込んでくる。身動きできないのでは、どうしようもない。それでも何かいい案をと、頭を絞ろうとするウィルタをあざ笑うかのように、酒の入った品のない歌が次々と夜の砂漠に流れる。

 やがて歌に飽きると砂相撲。互いに相手の腰に手を伸ばし、ベルトを握って、がっぷり組み合った状態から、早く相手を地面に倒した者が勝ちという、投げ技の競技である。投げられても痛くない砂漠特有の砂相撲だ。往々にして、この競技の勝者が賊の中で頭目になる。熱酒を飲んでからやるので、通称徳利倒しの呼び名がある。

 失態続きの鬱憤を晴らすように激しい取り組みが続いて、最後、頭目のブーンと次目の蜘蛛腕が組み合う。がっぷりと組み合ったまま、二人とも額に汗を滲ませる。

 素面なら細身ながらも針金のように芯の通ったブーンが、体格で勝る蜘蛛腕を圧倒するのだが、先程からしたたか酒を勧められたおかげで、足元がおぼつかない。ピンと油で固めた自慢の長いひげも、だらんと垂れ下がって弱々しい。

 お陰で五分と五分、ちょうどいい勝負になっていた。もっとも初めからそれを期待して、手下たちも頭に酒を勧めていたのだ。

 お頭のブーンと蜘蛛腕の勝負を肴に、ほかの手下たちは、酒に任せた下品な野次を飛ばす。そんな漠刺党の一味が、いっとき仕事の不首尾を忘れて砂相撲に熱狂している最中、脇に張られたテントの中でウィルタが声を上げた。

「トイレ」

 下っ端の小ナマズが舌打ちをすると、面倒そうに立ち上がった。

 テントの垂れ幕をめくる。

「まったく、よくしょんべんに行きたくなるガキだな、せっかくのいい所なのに」

 ウィルタの脇にしゃがむと、小ナマズは焚火の明かりを頼りに足首の紐を解いた。

「手も」と、注文をつけるウィルタに、小ナマズがウィルタの腕を小突いた。

「手は縛られていてもできるだろう」

「大だよ」

 言い返されて、小ナマズは、まだ顎の辺りまでしかないひげをピリピリと震わせた。

「まったく、でかいのは朝やるもんだ、逃げるなよ」

「分かってるよ。だって、こんな砂漠の真ん中で、どこに逃げればいいんだよ」

 仕方がないとばかりに、小ナマズは手首の紐を解いた。その時、テントの外で歓声が沸いた。勝負が決まったのかと、慌てて小ナマズが首を伸ばして外を見やる。どうやら水が入って、酒を飲んでの取り直しになったようだ。勝負が決まらないと酒を飲ませる。酔っ払わせて、足腰をふらつかせて、決着を付けやすくするのだ。

 小ナマズはこれで勝負の行方を見届けることができると思ったのだろう、安心したようにウィルタの背を押した。

 ウィルタは一言礼を言うと、テントから離れた場所に走った。焚火の明かりに顔を向けながら、用を足す場所を靴で二度三度と軽くえぐる。その様子をテントの横から、小ナマズがじっとうかががっていた。

 顔に似合わず用心深いことだなと、ウィルタは感心半分、諦め半分で砂の上にしゃがみこむと、鼻歌を歌いながら天を見上げた。

 傾いたお椀のような月が、雲に乗るように浮かんでいる。オーギュギア山脈を越えて晶砂砂漠に足を踏み入れて以来、初めて目にする雲らしい雲で、その雲の下を掠めるように、黒い影がくの字を作って横切っていく。渡り鳥だ。

 鳥が山脈を越え砂漠を越えて、東の湿地に渡っていく。それももう終わりの季節だ。

 いったいどれだけの鳥が、次の春に今飛んでいるコースを逆に辿れるだろう。

 剥き出しの尻が冷気に触れ、ウィルタはブルッと体を震わせた。


 翌日、昼過ぎ。

 前方から別の盗賊団らしき一行が近づいてきた。盗賊と断定したのは、人相の悪さよりも、外套の上にこれ見よがしに弾槽を回しかけていたからだ。

 互いの姿がはっきり見える距離になったところで、ゲルバ族のやっていた遠吠えのような狼煙の声を、空に向かって響かせる。ゲルバの洗練された鈴のような声と違って、ほんとうに狼の遠吠えのような声だ。何度かそれを繰り返し、互いに敵意のないことを確認すると、あとは一気に間合いを詰める。そして先頭の毯馬が鼻面を合わせる一歩手前で、互いの盗賊団は歩みを止めた。

 双方とも先頭の毯馬に騎乗しているのが頭目である。

 対照的な頭目の二人だ。漠刺党のブーンが、褐炭肌に鋼のような細身なら、対する赤ひげ党のザバイは、薄土肌で肩太りの筋骨隆々。髪とひげを油で撫でつけ固めたブーンに対して、ザバイはバサバサに毛羽立った乱れ髪。ブーンが御洒落な黒と黄の縞模様のチョッキなら、ザバイは野性的な毛皮のチョッキ、という具合である。

 赤ひげ党のザバイが、悠然とした動きで毯馬を飛び下りた。ざっくりと頭の後ろでまとめた乱れ髪が、フワリと宙に浮く。

 二人の頭目は、毯馬を降りて歩み寄りると、握手を交わして抱き合った。抱き合うのは、相手が武器を隠していないかどうかを探る目的もある。

 この時ウィルタは、口を縛られ、最後尾の毯馬のカゴに押し込まれていた。

 一方隊列の前では、春香が蜘蛛腕に抱きかかえられるようにして、毯馬から降ろされた。

「言われたとおりにしろ、さもないと分かっているな」

 脅すように耳元で囁くと、蜘蛛腕は春香をザバイの前に突き出した。

 精悍な顔つきのザバイは、少女を見るなり、服の上から春香の腕を掴んだ。

「細いな」というザバイの指摘に、ブーンが自信満々に言い返す。

「骨は丈夫だ、手足よりも歯を見ろ。欠歯がない、よく食べ、よく働く」

 人の売買も家畜の売買と同じで、買う側が欠点をまくしたて、売る側がそれをいなして良い点を誉めちぎる。ザバイは後ろに控えた岩苔頭の手下に命じて、嫌がる春香の口を開けさせた。確かにこの時代にしては綺麗な歯、それに治療を施した歯もある。

「ずいぶん丁寧な治療をしてるじゃないか。おい、この娘は下賎の出じゃねえな。ちゃんと働けるのか」

 ブーンが、したり顔で、油で固めたナマズひげを撫でつけた。

「さすがによく分かるな。この娘は、さる没落した名家の隠居に仕えてたんだ。老翁の寵愛を受けていたらしい。だから下賎の身じゃ受けられねえ歯の治療も受けている。下仕えの身ながら、娘の世話をする下僕もいたらしい。だから娘の手を見ろ、傷のない柔らかい手をしているだろう」

 蜘蛛腕が長い腕で春香の手首を掴み、ザバイの前に突き出す。

 この二カ月の旅でガサガサになってはいるが、それでも春香の手は、労働に手を染めたことのない幼児のような手をしている。ブーンが自分の自慢でもするように続けた。

「老翁の寵愛を受けながら、この娘は、歌や朗詩、三弦の演奏を毎日のようにやらされていたそうだ。こいつの歌は絶品だぞ」

 ザバイがツッと顔をあげると、「華奴なのか」と意外そうに聞いた。

「そう言いたいところだが、その見習いってところだ」

 一般にジンバは肉体労働や下働きに従事する。それでも希に、音楽や詩や踊りなど芸能に秀でたジンバが、資産家の家に囲われることがある。それは財産として富裕な家同士で売買され、結婚の婚資として相手の家に贈与されるジンバの華でもある。それゆえに、一般のジンバとは区別して華奴と呼ばれる。華奴のいることがその家の格を表すことにもなり、一般のジンバ市場には出てこない貴重な品だった。

「見習いにしても五千ブロシュか、安いな」

「新しいアジトを作るのに金が必要なんだ。格安だぞ、売りようによっては、軽く三倍の値段で売れる逸品だ」

「さっき、歌も歌うと言ったな、一曲披露してもらえるか」

「ああ、もちろんだ。しかし連れ出す際に騒がれては面倒なので、痺れ薬を飲ませた。そのせいで声が掠れている。我慢して聞いてくれ」

 蜘蛛腕が長い腕で、出番だとばかりに春香の背を押した。

 事前に春香は、売込先の男の前で毯馬の上で歌っていた歌を披露するように命じられていた。上手く歌わなければ、相棒のウィルタの喉を掻き切ると脅かされてだ。

 春香としては、どうしていいのか分からないような命令だった。上手く歌って相手に気に入られるということは、ウィルタと離れ離れになるということだ。かといって、下手に歌うと何をされるか分からない。それに意識して下手に歌が歌えるほど、自分は歌が上手くも得意でもない。それよりも、あまり頑張って歌うと、ウィルタから見て、自分が離れ離れになるのを何とも思っていないように見えるだろう。

「どうした、さっさと歌え」

 ブーンの一言で、春香は我に返った。

 とにかく今は歌うしかない。それに歌は考えて歌うものではない。

 そう思うと、春香は自分が売られるかもしれないということを忘れて、背筋を伸ばした。

 合唱団でピアノの伴奏をやっていた時、顧問の先生が、緊張を解すには一寸間を取って気持ちをお腹に下ろすの、丹田よ、丹田。と耳タコで口にしていたのを思い出す。

 丹田とは体の中心のツボのようなものだ。

 呼吸を整え、スッと気持ちをお腹の中に落とす。そうすると、自分を見つめる、むくつけき男たちの顔が良く見えた。興味深そうに見ているのは双方の手下たち。漠刺党のブーンと蜘蛛腕は、乱暴な目つきのなかにも、今回の策が上手く行くかどうか、上手く行かなかった時の手筈をどうするか、微妙な怯えとも不安ともつかない表情を目に忍ばせている。

 比べて赤ひげのザバイは、腕組みをして、さあ好きに歌いなさいという顔だ。

 コンクールの審査員はおしなべて粗を探すような目つきの先生が多いけど、時々こういう、下手でも小父さんは君の音楽を楽しんであげるよ、という顔をしてくれる人がいる。そんな時は緊張が解けて、自然な気持ちで鍵盤に指を落とすことができる。春香は自分が囚われの身であるのも忘れて微笑んだ。

 そして歌い出そうと呼吸を整え、息を吸い込んだ時、

「気に入った、この娘を買おう」

 赤ひげのザバイが、腕組みをしたまま言い放った。

「五千ブロシュで良かったな、おい、金をここに」

 ザバイが左腕を上げて、後ろにいる岩苔頭に合図する。岩苔頭は短い剛毛のような髪が頭の所々に残る赤ひげ党の次目だ。

 あっけに取られたブーンが、思わず目の前の赤ひげを見やる。そしてザバイの顔に自信に満ちた笑みが浮かんでいるのを認めると、口元を歪めた。こんなことならもっと値を上げておくんだったという、未練がましい想いが目に滲んでいた。

「本当に、お買い得な商品だぜ」

 愛想を付きながらもブーンは、岩苔頭が皮袋から取り出した馬蹄銀に、如才なく目を走らせた。

 手の平ほどもある馬蹄銀数枚と交換に、蜘蛛腕が春香の背をザバイの方に押す。

 そして岩苔頭が春香の腕を掴もうとした時、振り絞るような声が後方で上がった。

「その子を売るな、売ったら、懸賞金の四万ブロシュは、もらえないぞ!」

 漠刺党の最後尾、毯馬のカゴの蓋を突き破るようにして、ウィルタが顔を見せていた。そのウィルタの頭を、小ナマズが必死でカゴの中に押し込もうとしている。

「懸賞金……?」

 怪訝な顔で言ったザバイが、唇に絡んできた真赤なひげを右手でパシッとはたくと、唇の先で小さく口笛を吹いた。

「分かったぜ、この二人は、ユルツが懸賞金を懸けているガキどもだな」

 ウィルタが小ナマズの手に噛みついて引き離すや、叫んだ。

「本当だぞ、その子を売ったら、金にならないからな」

「黙らせろ!」

 後ろに向かって喚くや、ブーンが困った表情で首筋を掻いた。

「いやね、あのガキは、この華奴の娘と同じ屋敷にいた下僕でね。離れるのが嫌らしく、暴れてばかりで、こちらも手を焼いてんでさ」

「お頭、懸賞金の懸かった男の子は、黒眼黒髪褐土肌の十三歳とありましたぜ」

 ブーンの言い訳がましい口草に、岩苔頭が素早くザバイに耳打ちする。

 そんなことは分かっているとばかりに岩苔頭を後ろに下がらせると、ザバイは小ナマズと揉めている少年に呼びかけた。

「面白い話だ。坊主、ユルツ国が捜しているのはお前ではなく、この娘だとでも言うのか」

「違う、ユルツ国が探しているのは、ぼくでもその子でもない。ぼくが首に吊るしていたメダルだ。メダルの周りに文字が彫ってある。古代語で宝の在処を示す文句だ」

 周りにいた男たちが感電でもしたように一斉に眉を吊り上げた。

 漠刺党と赤ひげ党、盗賊としての流儀は違っていても、なぜユルツ国が二人連れの子供に高額の懸賞金を懸けているのか、それを不思議に思っている点では同じだ。

 ウィルタを羽交い締めにしていた小ナマズが、「嘘を言うな、見せてみろ」と、ウィルタの首根っ子を掴んで引き寄せた。

 ところがウィルタの首にぶら下がっているのは、金属の鎖だけ。

「んっ、メダルをどこにやった」

 慌てる小ナマズを横目に、ウィルタが頭目のブーンに向かって声を張り上げた。

「メダルはここに来る途中で砂に埋めた。考えてもみろ、ぼくみたいな只の子供に四万ブロシュなんて賞金を懸けるはずがないだろう。ユルツ国はお宝のことを伏せておきたいから、ぼくを捜しているということにしてるんだ。ぼくだけなら、馬蹄銀一枚にもならない。だから……」

 息継ぎをするように大きく息を吸うと、

「彼女は関係ない、毯馬を与えて逃がしてくれ。そうしないと、絶対にメダルの在処は言わない!」

 ブーンのこめかみに血管が浮き、長いひげが痙攣したようにビリビリと波打つ。

「ふん、ガキが洒落たことを。お前が喋るまで、この娘の体をナイフで切り刻んでやるわ。娘の悲鳴を存分に聞くがいい」

 泡立つようなうがい声で怒鳴ると、ブーンは目の前の春香の体に手を伸ばした。

 とそのブーンの指先を掠めるように、ザバイが春香の体を引き寄せ、後ろの岩苔頭に受け渡す。まるで仔牛を親牛から引き離すような手慣れた手つきだ。

 ザバイが、ブーンの前に立ちはだかった。

「金を渡した以上、娘は俺のものだ」

「なんだと!」

 ブーンが春香を掴もうとした手をギリギリと握り締める。

 親の仇もさりなんと睨みつけるブーンに、ザバイがおどけたように話しかける。

「ブーンよ、商談は成立したんだ。娘はもうこちらのもの、手を出してもらっちゃ困る。それに少しは頭を使えよ、ご同輩。おまえももうこの商売をやって長いだろう。この娘にどれほどの値打ちがある。逃がして欲しくば、毯馬の一頭や二頭くれてやっても、何の不都合もないはずだ。小娘一人でどこまで行ける。後からいくらでも捕まえることができる。それよりも、あの坊主は、そうすればメダルの在処を教えると言ってるんだ。メダルを手に入れたいと思わないか」

 なだめるように言われて、ブーンは渋々首を縦に振った。しかし相手に場のペースを掴まれたのが気に食わない。それに値打ちがないと言っておきながら、ポンと娘に五千ブロシュの金を払ったザバイの真意がどこにあるのか。

 ブーンは疑り深い目でザバイを睨むと、

「じゃあ、おまえさんは、なぜ逃がす女を買う」

「ほんとですぜ、お頭」

 心配気な顔で娘を抱えた岩苔頭に、ザバイが野太い声で言い放った。

「俺はこの娘が気に入ったんだ。俺の女にする。それじゃ駄目か」

 慌てて春香が話に割って入った。

「ちょっと、あなたは嫁を金で買うの。パートナーは愛で買うものでしょう」

 岩苔頭の腕の中でもがく小娘を見て、ザバイが豪快に笑い上げた。

「これはいい、愛で買うか、盗賊には似つかわしくない言葉だ。益々気にいった。お前、俺の五番目の妻にしてつかわすぞ」

 ウィルタが口を塞いでいた小ナマズの手を振り解くと、顔を赤らめ叫んだ。

「冗談は言うな、ぼくはその子を逃がしてやれと言ったんだ。逃がさない限り、ぼくは何も喋らないからな」

「そうか、じゃあ逃がしてやる」

 ザバイが隊列最後尾の毯馬を指した。少女をその毯馬に乗せて逃がせと言うのだ。

 浮き足だったのはナマズひげのブーンだ。

 ウィルタとザバイを交互に見ながら、声を上ずらせ、。

「ちょっと待て、あの少年は俺の所有だ。メダルの在処を聞く権利は俺のものだ」

「聞けるようにしたのは、俺だ」

「ばかな……」

「いいか同輩、お宝を探すんだ。ユルツ国がこれだけ大げさに動いている。さぞや凄いお宝だろう。場末の盗賊だけじゃ手に負えないかもしれねえ。過去の遺産にしがみついてるゲルバ族を相手にするんじゃねえ、西の大国相手だ。お前さん一人で仕切れるのか。ここは組むのが、ベストチョイスってやつだろう」

 不満気なブーンを、ザバイが噛んで含めるように説得する。

 毯馬の上に春香を押し上げた岩苔頭が、「本当に逃がしてやるんですか」と、念を押すように聞くと、ザバイが「ヤレ!」と指を鳴らした。

 毯馬の尻に鞭が入り、春香を乗せた毯馬が、体を左右に揺さぶりながら、何もない砂礫の砂漠に向かって小走りに歩きだす。

 事の展開の速さに唖然とする間もなく、春香は初めて乗った毯馬の背で、振り落とされないように鞍にしがみついているのが精一杯だった。

 それでも必死の思いで振り向き、ウィルタの姿を探す。

 その時、走る毯馬に更なる鞭を入れるように、銃声が辺りを揺るがした。

 ブーンの手にした馬上筒から、白煙が立ち昇っていた。

 耳をつんざく音に驚いたのだろう、春香を乗せた毯馬は、あっという間に砂礫の丘の向こうに姿を消した。

 銃に弾を詰め直しながら、ブーンが、どうだとばかりに語気を強めた。

「さあ、逃がしてやったぞ坊主、次はメダルの在処を教えてもらう番だ。もっとも……」

 言うや、ブーンは手にした馬上筒をザバイに向けた。

「さて、赤ひげ党の皆さんには、退散願おうか」

 先ほどまでの苛々した表情は顔から消え、口元に笑みが浮かんでいる。

「宝探しは小人数でやるというのが、昔からの鉄則だ。もしユルツの宝が手に負えないものなら、その時は、宝の在処を書いてあるというメダルを、当のユルツ国に売りつければいい。お宝の口止め料も加算して、さぞやいい値で買い取って貰えるだろう。それに、もし宝の話がでっちあげだったとしても、最低限この坊主を連れて行けば、四万ブロシュは手にできるんだからな」

 銃口をザバイの喉元に向け、ブーンが勝ち誇ったようにうがい声を響かせる。

「さあ、さっきの娘のように、砂漠の先に消えてもらおうか」

 場の主導権は自分が握ったとばかりの横柄な口ぶりである。

 口元にげびた笑いを浮かべ、「娘をお買いあげいただいてありがとう」と付け加えたブーンに、赤ひげ党の手下たちが気色ばんで銃に手をかける。がすでにブーンの手下たちは、蜘蛛腕を初めとして、全員がいつでも銃を発砲できるように構えていた。

 娘を相手に渡す際に、ブーンが合図を送っていたのだ。

 銃口を突きつけられたザバイは、哀れむようにブーンを一瞥すると、参りましたとばかりに両手を上げる。そのいともあっさりとした反応に皆が気を抜いた瞬間、何かが空気を切り裂いた。と同時にギャッと悲鳴が上がる。

 砂の上でボタリと音が鳴った。

 ブーンの手が、馬上筒を握り締めたままの格好で砂の上に落ちていた。

 肘から先を切り離されたブーンの二本の腕から、糸のように血が吹き上がる。

 手を上げる際、ザバイは髪留めのリングを指で引っかけて外した。そして間髪入れず、バネ状の金属製のリボンを、ブーンの腕に向かって振り落としたのだ。

 砂に膝をつき、呆然と手を無くした腕を見つめるブーンを、阿修羅の形相でザバイが見下ろす。髪留めを外したザンバラ髪が逆立ち、なにより髪とひげが真っ青に変色。

 ザバイが野太い声を叩きつけた。

「ブーン、腕がない盗賊として生きていく覚悟があるか、なら命は助けてやる」

 唇を震わせていたブーンは、青ひげとなったザバイを憎々しげな目で見上げると、唾をペッと吐いた。そして「俺は、盗賊だ!」と呻くなり、口元をぐっと締めた。

 堅く閉ざした唇の間からムッと血が湧いて出る。舌を噛み切ったのだ。

 ボタボタと垂れる血とともに、ブーンが前のめりに突っ伏す。

 その様子を冷やかに見つめていたザバイは、自身の手に凶器がぶらさがっているのに気づくと、少しはにかみ、バネについた血脂を手拭いでサッと拭った。そして逆立つように拡がった青い髪を、金属のバネで束ね上げた。

 蜘蛛腕を初めブーンの手下たちは、銃を構えはしていたが、すでに棒立ちで、毒気を抜かれたように敵の頭目を見ていた。ザバイの青い髪とひげが元の赤い色に戻っていく。

 ザバイは髪の留め具合を確かめるように首を揺ると、顔を起こし、居並ぶブーンの手下たちに向かって声を発した。

「ブーンは盗賊として死んだ。男同士の勝負の果てに亡くなったのだ。お前たちが頭の仇を討ちたいというのなら、持して受けよう。だが俺は無用な血は好まぬ。血は盗賊本来の目的のために流すものでありたい。それが俺の主義だ。ブーンは盗賊としては算段に長けた男だった。それがいいとも悪いとも俺には分からん。もちろん俺の好みではない。俺は策を弄して物を奪う生き方は望まん、力と力のぶつかりあいで生きることを良しとする」

 男たちを見回し、ザバイが声に力を込める。

「俺の生き様は、ゲルバの巡検隊と正面からぶつかり、血と血をやり取りする生き方だ。それを良しとする者は仲間に加われ。嫌な者は、倒れた頭目に弔いの砂をかけて、この場を立ち去れ!」

 砂礫まじりの砂地に、ザバイの朗々とした声が響く。

「砂漠には、盗賊の血をたぎらす多くの財宝が埋もれている。秘密裏に発掘された黄金の火炎樹が、ゲルバ族の長老会に秘匿されているとも聞く。いまユルツ国の探すお宝の話も転がり出た。場末の盗賊には過ぎた宝。血を絞り出しても命を託すに相応しい宝の話だ。我と行動をともにする者に、血と財宝の雨が降らんことを!」

 我が身を断じるように言い放つと、ザバイはブーツで死者に砂を一掻き、さっと毯馬に飛び乗った。頭目に習い、手下どもが次々と死者に砂をかけては毯馬に跨がる。

 ブーンの手下たちも、元の親玉に砂をかけると、毯馬の背に跨がり始めた。

 ザバイが放心状態の小ナマズに、「お前はどうする」と呼びかける。ウィルタの入ったカゴを積んだ毯馬は、すでに蜘蛛腕が引いて岩苔頭に付き従っている。

 小ナマズは弾かれたように背を伸ばすと、あたふたと元の頭目の所に歩み寄った。

「急がなくとも、死体は逃げたりはしないぞ」

 蜘蛛腕の野次に、騎乗の面々が一斉に哄笑。

 その笑いのなか、毯馬を回して、ザバイがウィルタに近づいてきた。

 人が殺される場面を目の当たりにして、魂を抜かれたようにボーッと突っ立つウィルタに、ザバイが喝を入れるように鞭を鳴らした。

「さあ、約束は守った。言われた通り娘は毯馬に乗せて逃がした。今度はおまえだ。その秘密を書き記したというメダルを埋めた場所に、案内してもらおう」

 口調は優しいが有無を言わせぬ響きを含んでいる。

 我に返ったウィルタは、慌てて首を縦に振った。

 一行が馬上に揃うと、ザバイが「盗賊に血と財宝を!」と、号令一喝。「行くぞーっ!」という野太い声が、砂漠を揺るがすように響き渡った。


 夕刻になった。

 一行は、昨夜、漠刺党の一味がキャンプした地点に戻っていた。

 ウィルタは砂のあちこちを探していた。なかなかメダルが見つからない。

 見張り役の小ナマズが「まだか!」と急かすが、ウィルタは石まじりの砂を掘り返しては、また別の場所を掘るということを続けていた。

 小ナマズが新しい頭目であるザバイのボサボサ髪の真似をするように、油で固めた髪やひげを解し始めた。その様子を、ウィルタがチラチラと盗み見る。

 ウィルタは待っていた。屈んでメダルを捜すふりをしながら、時折、視線を薄闇の迫る砂漠に這わせ、その事が起きるのを……。

 メダルはいつでも取り出せるように、数歩先の黒っぽい小石の下にある。

 テントの設営を終え、酒盛りの準備を始めた男たちが、ウィルタに向かって「日没までに見つからなかったら、男の一番大事なところを切り落とすぞ」と、からかいの声を飛ばす。十五名ほどに膨らんだ男たちのなかで、気の早い者は、もう宝を見つけた前祝いだと酒を呷っている。二つの盗賊団が一緒になったので、賑やかというよりも喧しい。

 その盗賊一味の設営地から少し離れた砂丘の陰で、身を潜め、ウィルタ同様タイミングを計っている者がいた。

 そして日没、カンテラに明かりが入る。それが示し合わせたタイミングだった。

 薄暮が闇に変わり、人の目がカンテラの明かりに馴れる直前。砂丘の陰に隠れていた、その者が動いた。風下からゆっくり、そして素早く。獲物を狙う動作さながらに、気配を消して設営地に忍び寄った四つ足の獣は、艶やかな白い毛に覆われた体を毯馬の群れに踊り込ませた。

 毯馬たちは、ゆっくりと歩ける程度に、前脚と前脚を紐で結束されている。その紐を白い四つ足の獣は素早く噛み切ると、最後、リーダー格の毯馬の尻に鋭い牙を突き立てた。

 口に餌カゴをつけ、夕餉の一時を楽しんでいた毯馬たちが、突然の乱入者に驚き、けたたましい嘶きの声をあげる。そして尻を噛まれて走り出したリーダーにつられて、砂漠の闇に向けて駆け出す。

 驚いたのは毯馬だけではない。男たちのほとんどが、ほかの盗賊一味の襲撃だと思ったのだ。皆が浮き足だったところに、獣は白い影のように右に左に、カンテラを蹴散らし駆け抜ける。一瞬にして宿営地は闇に包まれた。

 皆が大声を上げ、消えたカンテラにつまずき、手探りで銃を探す。

 慌てふためく盗賊たちのなかで、落ち着いていたのは、やはり頭目のザバイだった。

「止まれ、動くな」と手下たちを一喝すると、「敵襲ではない。カンテラはつけるな、目はすぐに馴れる。それより耳を澄ませろ」と、威圧するように言い渡した。

 頭目の一声で、手下たちがピタリと動きを止める。耳を澄ますと、四散する毯馬の音にまじって、かすかに砂の上を人の走る音が聞こえた。ウィルタの走る音だ。

 ザバイは自身の赤ひげを手でしごき上げると、「フム」と頷いた。

「毯馬は放っておけ、ここはまだ砂漠だ。気が落ち着けば、餌のあるここに戻ってくる。それよりも、小僧の足音を追いかけるのだ」

 ザバイは、手下の一人、目玉が鼻のように顔面から突き出た小男に、後を追うように命じた。ずんぐりとした体形だが、足が速く夜目の利く、ヨビと呼ばれている男だ。そのヨビが心得たとばかりに闇に向かって飛び出していった。

 すぐにヨビの走る方向から鈴の音が聞こえてきた。自分の位置を知らせるために、鈴を鳴らしているのだ。その音を頼りに、別の二名がカンテラを持って走り出す。

 追跡の本体は、その灯を目標に進む。

 小ナマズが憎々しげに吐いた。

「まったくあの小僧、捕まえたら、手足を切り落として芋虫みたいにしてやるからな」

小ナマズの言葉を遮るように、ザバイが闇に落ちた宿営地で声を発した。

「よし、追跡に入る」

 賊の本隊が、留守居の一人を残して追跡に動きだした時、ウィルタは宿営地から砂丘を三つ越えた場所を走っていた。ウィルタは息を切らせて、前を行く白い獣を追いかけていた。シロタテガミである。

 毯馬の群れにシロタテガミが突っ込み、一味の郎党が混乱した隙を狙って、ウィルタは小石の下からメダルを掴み出し、闇の中に向かって一目散に駆け出したのだ。

 昨夜、ウィルタは春香に相談を持ちかけた。春香がジンバとして売られそうになっている、何とかしてこの一味から逃げ出さなければと……。

 すると春香が、夜の闇を見透かしながら、シロタテガミが付かず離れずついて来ていることを告げた。シロタテガミのことに気づいたのは二日前で、それ以降、毯馬に揺られながら、どうやってシロタテガミに助けてもらうか、方法を考えていたという。

 そして二人で相談、思いついたのが、メダルを使った計略だった。

 ウィルタの走る後方で、チリンと澄んだ音が鳴った。

 追っ手だ。

 ウィルタとの距離を変えずに、張り付くように付いてくる。手練れの追跡者に違いない。鈴の音が、逃げられるものなら逃げてみろと言っているように聞こえる。

 また鈴がチリンと冴えた音を夜の砂漠に響かせた。

 地獄の門番の鳴らす鈴があるとしたら、こういう音かもしれない。さっき賊たちが面白半分で言っていた、男の大事なところを切り落としてやるという声が蘇る。あいつらなら平気でそれをやるだろう。大事な部分だけじゃない。耳も鼻も腕も足も、体のでっぱっている部分をみんな切り落として、芋虫みたいにして、最後は笑いながら首もザクッと切り落とすに違いない。

 ウィルタはバラバラにされた自分の体を想像して、倒れそうになる息を我慢して必死に足を動かした。ところがこんな時に限って、足元の砂がどんどん細かくなってくる。靴が砂にめり込んで足を取られる。膝が重くて上がらない。心臓が悲鳴を上げる。

 もうこれ以上はと、そう思った時、先導するシロタテガミが足を止めた。

 苦しい息を整えながら追いついてきたウィルタに、シロタテガミが鼻先を前方に向けた。

 闇のなか、砂の上に膝を曲げて座りこんでいる毯馬が見えた。シロタテガミは、自分が近づくと毯馬が逃げる怖れがあるので、少し手前で足を止めたのだ。

 毯馬の横に小柄な人らしき影が立っている。

 荒い息を振り絞るようにして、ウィルタはその影に向かって走った。

 そこに毯馬の手綱を手にした春香がいた。

 春香の元に駆け寄ると、ウィルタは両手を膝に置いたまま春香を見た。苦しくて声が出ない。春香に抱きつきたかったが、とてもそんな余裕はなかった。

 春香が「大丈夫?」と聞く。

 必死で息を整えるウィルタの後方で、またチリンと鈴が鳴った。

「追っ手なんだ」と、ウィルタがようやくそれだけを口にした。

 春香は「乗って」と毯馬の背を指すと、ウィルタを鞍の上に押し上げた。そうして自分もウィルタの後ろに跨がると、手を伸ばしてエイッとばかりに手綱を引いた。毯馬が前後に体を揺らせながら立ち上がる。毯馬の背の上から追っ手の灯が見えた。

「様子が変だ、急げ」という賊の声が、砂丘の尾根を越えて伝わってくる。

「早く」と、ウィルタが言おうとしたその時、後ろでシロタテガミがさっさと行けとばかりに唸った。それを合図に毯馬は体を震わせると、闇の中を走りだした。


 砂丘の上でヨビが鈴を手にしたまま立っていた。

 駆け寄った後続の二名が、「どうした」と聞く。

「カンテラの灯を」とヨビが要求、灯を向けると、足元の砂の上に毯馬と二人の子供の靴跡、それに犬らしき動物の足跡が残されていた。

「あの小娘が、くれてやった毯馬と一緒にここで待っていたんだ。さすがの俺でも、毯馬には追いつけねえ」

 悔しげにそう言うと、ヨビは口に指を挟み、鋭くかつ長い口笛を鳴らした。

 それが、追跡が失敗に終わった時の合図だ。

 ウィルタを追いかけていたヨビと、後続の二人が宿営地に戻った時、ザバイは、すでに残りの手下たちと共に焚火を囲んでいた。ヨビがサバサバとした表情で、ザバイに追跡の首尾を報告。「夜明けを待って足跡を辿ります、砂漠のヘビと言われた俺の名にかけて、絶対に逃がしませんから」と、いまいましげに吐き捨てた。

 ところがそれを聞いたザバイが、もういいとばかりに首を振った。そして労うように酒を勧めると、傍らの砂の上に視線を投げた。

「そこを見てみな」

 ザバイの示す砂の上に、シロタテガミの足跡がくっきりと残されていた。

「毯馬を追い立てていた犬の足跡ですか」

 ザバイが違うとばかりに首を振った。

「犬じゃねえ、似てるが、こいつはオオカミの足跡だ。この辺りにはオオカミがいないから分からねえだろうが、紛れもなくオオカミ、それもかなり歳のいったオオカミだ。カンテラが倒されて消える寸前に姿が見えた。あれは白狼、まるで白い影が闇を切り裂いて走っているようだった」

 蜘蛛腕が新しい頭目に尋ねた。

「ということは、お頭、オオカミがあのガキを助けたんですか、なんでまた」

「さあな、しかしこんな砂漠のど真ん中に、突然オオカミが出てくるはずがない。あの白いオオカミは、ずっとおまえさんたち漠刺党の後を付けてたんだぜ、気配を消してな」

 まさかという表情で、蜘蛛腕が体を震わせた。

 ザバイが瓠を杯に傾ける。並々と酒を注ぎ、喉を鳴らして飲み乾す。

 胸の中に溜まっていた息を大きく吐き出すと、ザバイが思い起こすように言った。

「確か、ガキの連れの娘は、氷の中から蘇生した古代人のはず。古の少女に、西の大国が法外な賞金を懸けた少年。それに嘘か本当かは知らんが、宝の在処を記したメダル。おまけに、今度は影のように寄り添う白狼だ。これは場末の山賊の追いかける獲物じゃない。俺は迷信なんざ欠けらも信じないが、今回はパスだ。剣でなぶり殺しにされるのは本望だが、オオカミにたぶらかされて死ぬのは御免だからな」

 酒を回す手下どもが、まったくとばかりに杯をかざす。

「追跡したいやつは追跡しろ。俺は何も言わん」

「おお恐わ、お頭、なんだかこう背中がぞくぞくしてきやすね」

 体をブルッと震わせた蜘蛛腕が、邪気を祓うように杯を飲み乾す。みな、自分にも早く飲ませて欲しいとばかりに、目が瓠の口を追いかける。

 それを見たザバイが、更にもう二つ、瓠の封を切らせた。

「とにかく今夜は一杯やろう、全ては夢の中の事と思って忘れようぞ」

「ほんとだ、お頭、ほんとだ」

 十五名の盗賊が、体の内に湧いてくる恐怖を打ち消すように杯を回している頃、春香とウィルタを乗せた毯馬は、夜の砂漠を駆けていた。

 折しも上弦の月が中天に浮かび、冷え冷えとした月明かりが、毯馬の後方を走るオオカミを、毛並みそのものの白銀色に浮かび上がらせていた。



次話「骸骨ビル」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ