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第一章−Proxy of Nothingness −
当小説は様々な作品のインスパイアを受けて執筆いたしました。情熱はありますので、読んでもらったら幸いです。
ひとつの人間の形をした器がある。
器には何も入っていない。
俺はそれをただ眺めているだけ。
時折赤く世界が染まるけれど、俺がどうということはない。
ひとつの人間の形をした器がある。
器には水が注がれていない。
乾いた器にしてやれることは、何も無い。
赤く染まった視界で視れば、器の中は血に満たされている。
ひとつの人間の形をした器がある。
器はただ朽ちるのを待っている。
注がれるためのもののはずなのに、その役割を果たすことは出来ない。
だって、底に穴が開いているのだから。
ひとつの人間の形をした器がある。
いつの間にか、器の穴は消えていた。
ニヤリと笑んだ魔術師は、器に何かを垂らす。
血ではない。世界は赤く染まらない。
だってそれは、白いワインだったのだから。
――― Executioner