表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/60

プロローグ

 フリーのルポライター、天田士郎アマダ シロウは、ようやく標的を見つけ出した。

 前方二百メートルほどの場所にいる男。五年前に人を殺し、ついさっき医療少年院を出たばかりだ。中肉中背、一見するとおとなしそうな、ごく普通の青年ではある。とても人を殺したようには見えなかった。

 男はゆったりとした足取りで、一歩一歩確かめるように歩いて行く。

 士郎は駆け寄り、声をかけた。

「そこのあなた。ちょっと待ってくださいよ」

 男は立ち止まり、振り返る。

 士郎は近づくと、名刺を取り出し、男に渡した。

「私はルポライターの天田士郎って者です。あの……五年前の件で、お話が聞きたいんですが……あ、もちろんタダとは言いません。金は払います――」


 そして士郎と男は今、喫茶店にいる。

 二人のいる店は薄暗く、他に客はいない。落ち着いた雰囲気の音楽が聞こえてくるが、会話の邪魔にならない程度の音量だ。

 男はコーヒーを飲み干した後、呟いた。

「刑務所出た直後は、コーヒー飲むと眠れないって聞いたが……だけど、五年ぶりに飲むと、旨いもんですね」

「私も聞いたことがあります。五年ぶりのカフェインは効くでしょうね。それより……なんだってあなた、あんなことをしでかしたんです? 金山さん……あなたは五年前、いじめられっ子のニート少年だった。そのあなたが、なんだってまた――」

「天田さん、あなたはとても失礼な人ですね」

 金山の言葉そのものは怒っているように聞こえる。

 しかし、顔は苦笑いを浮かべている。

「いや、どうもすみませんね。しかし、そんなこと気にしてちゃ、ルポライターなんて仕事はできませんからね。それに……あなただって誰かに話したいんじゃないですか? 何であんな真似をしでかしたかを」

「あなたは……本当におかしな人だ」

 金山は頭を振る。

「私はこれまで、いろんな人間を見てきました。犯罪者にも、数多く取材しました。あなたは……粗暴犯じゃない。かと言って、狂人とも違う。なんと言うか……そもそも、あなたは犯罪者らしくない。私にはわかる、あなたは心の真っ直ぐな人間だ。何かあなたにしかわからない、しかしやむにやまれぬ理由があって、あの男を殺した。私にはそうとしか思えない……私の言っていることは、当たってますよね?」

「では逆に聞きますが、天田さん、ぼくの話を信じますか?」

 金山は、士郎の目をじっと見つめた。

 そして、士郎の返事を聞く前に語り始めた。

 まともな人間には、キチガイの妄想としか思えない話を……。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ