表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夏生詩集

のんちゃん

作者: 夏生

誰もいない真っ暗な部屋

ただいま

返事はない


「今夜はカレーにしましょう」

「やったぁ!」


近所の友達とお母さんの声が

しんとした部屋に響いた


電気をつけて

テレビをつけても

明るくならない


部屋の隅に座ると

のんちゃんを呼んだ


「智くんがね、すごくかっこいいんだよ」


大好きな智くんの話をすると

熱くなって、早口になった

のんちゃんは聞いてくれる


「国語のテストで百点とったの!」

「先生に褒められたんだよ」

「かけっこで私が一番早かったの」


嬉しいことだけ、思いつくままに

のんちゃんに話すと

疲れて畳の上で寝てしまった


「そんなところで寝ないでよ! 風邪ひいたらどうするの!」


母に怒られ、私は黙って母を睨んだ

本当はね、私……

涙があふれてきた

のんちゃんに話そうとして

口を開けても、震えてしまって

言葉にならない


「泣く子は嫌い。遊んであげない」

のんちゃんは行ってしまった


泣いて泣いて、布団にしがみついて

そのまま眠った

のんちゃんはもう来てくれない

私も、のんちゃん嫌い、大っ嫌い


次の日

「あーそーびーまーしょう!」

しんとした部屋に友達の声が響いた

「みんなで遊ぼう!公園行こうよ!」

私の心は飛びおきて

「はーあーい!」

暗い部屋を飛び出した


本当はね、私、寂しかったんだ

のんちゃんと話している時が一番、寂しかった


バイバイ、のんちゃん

昨日、遊んでくれなくてありがとう


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 読ませて頂きました。 自分の子どもの頃を思い返したりしました。 あー、うん、だよね… まるで童話を読んでいるような感覚になりました。 ほのぼのして、ツーんときちゃって、優しい作品でした。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ