のんちゃん
誰もいない真っ暗な部屋
ただいま
返事はない
「今夜はカレーにしましょう」
「やったぁ!」
近所の友達とお母さんの声が
しんとした部屋に響いた
電気をつけて
テレビをつけても
明るくならない
部屋の隅に座ると
のんちゃんを呼んだ
「智くんがね、すごくかっこいいんだよ」
大好きな智くんの話をすると
熱くなって、早口になった
のんちゃんは聞いてくれる
「国語のテストで百点とったの!」
「先生に褒められたんだよ」
「かけっこで私が一番早かったの」
嬉しいことだけ、思いつくままに
のんちゃんに話すと
疲れて畳の上で寝てしまった
「そんなところで寝ないでよ! 風邪ひいたらどうするの!」
母に怒られ、私は黙って母を睨んだ
本当はね、私……
涙があふれてきた
のんちゃんに話そうとして
口を開けても、震えてしまって
言葉にならない
「泣く子は嫌い。遊んであげない」
のんちゃんは行ってしまった
泣いて泣いて、布団にしがみついて
そのまま眠った
のんちゃんはもう来てくれない
私も、のんちゃん嫌い、大っ嫌い
次の日
「あーそーびーまーしょう!」
しんとした部屋に友達の声が響いた
「みんなで遊ぼう!公園行こうよ!」
私の心は飛びおきて
「はーあーい!」
暗い部屋を飛び出した
本当はね、私、寂しかったんだ
のんちゃんと話している時が一番、寂しかった
バイバイ、のんちゃん
昨日、遊んでくれなくてありがとう