94話 おっさん=ツンデレ説
(^q^)イェーイェーエェ(^ω^三^ω^)おっおっお
これはハマるしか無い!!!
俺はイグニスの父さんに促され、靴を脱いで屋敷に入った。
うわ、クッソ広いな。かなりの大きさを誇っていた基地より広い。
「私の妻は2階の奥の部屋にいる。
おい、マルク。案内してやれ。」
「畏まりました。
お客様、こちらでございます。」
執事さん凄え。足音一つたてないとは!
武芸者か、と思うレベルだぜ。
俺は彼の足捌きに注目しながらついて行った。
「あああぁぁぁぁ!」
怖い。
俺がイグニスの母さんを見た時の感想はこんな感じだった。
何が怖いかというと、まず体中が黒い。
そして、ほぼ骨と皮だけである。何で生きているのだろう。
更に、微量だが闇魔力っぽいのがにじみ出ている。
極め付きに
「うううぅぅぅぅぅ!」
かなり腹に響く声で唸るのだ。
これは怖いというのも頷けるはずだ。
いや、人間をこんなにするとか。
呪いって本当怖いな。
「さて、君は私の妻を治せるか?」
イグニスの父さんの問いかけで俺ははっと我に返る。
まず、これは明らかに病気じゃないな。
ぶっちゃけこれで何かしらの病気だったら手の打ちようがあったのだが。
『デコラーレ・ピュリファイ』に頼るしか無さそうだ。
「可能性はあります。ですので、早速やってみようと思います。」
「そうか。なら早く始めてくれ。」
俺はイグニスの父さんに頷き、目を瞑る。
ここ最近はしていないが、俺は目を瞑ったほうが魔力が使いやすくなる。
練った魔力はかなり俺の中に溜まっていると言って良いだろう。
丁度俺の魔力総量の分だけある。
集中力が高まったのを見計らって俺は唱えた。
「『デコラーレ・ピュリファイ』。」
唱えると同時に体の中の魔力が放出しようとする。
それらを全て先生に教えて貰った通りに骨を通じて放出していく。
放出された魔力は次第にイグニスの母さんに纏わりついていく。
その瞬間、イグニスの母さんの中で『何か』が蠢いた。
俺はその蠢いたものを『デコラーレ・ピュリファイ』の魔力で捕まえる。
さっき『光属性・全』にはこう書いてあった。
『デコラーレ・ピュリファイ』は呪いの元凶との綱引きである。
つまり、『デコラーレ・ピュリファイ』の魔力を綱とした、綱引きなのだ。
現在進行形で蠢いている『何か』は魔力で捕えられると同時に暴れだす。
俺はその『何か』を引っ張るように魔力を操作した。
当然その『何か』は抵抗する。
どのような抵抗かというと、魔力から逃れるように逆方向に動くのだ。
しかもそれだけでなく、俺自身に痛みを与えていく。
かなり強烈な頭痛だ。
思わず集中力が途切れそうになる。
『何か』は苦しむ俺を見て更に抵抗を強める。
「くぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
が、俺は頭痛を『ヘイレン』を使い続けることで耐える。
更に綱引きの間に回復する魔力を『デコラーレ・ピュリファイ』に回す。
強化された『デコラーレ・ピュリファイ』の綱が『何か』を強く掴む。
しかし、ここで『何か』がとてつもない行動を起こした。
俺の魔力の綱に『何か』が魔力を流し始めたのだ。
それまで安定していた俺の魔力が歪みだす。
なんだこれは。
予想外の反撃に俺の精神が揺さぶられるのを感じた。
――――――マズイ。
『焦り』が頭のなかで増殖していく。
更に焦りで『ヘイレン』が一瞬緩む。
激しい頭痛が俺を襲う。
「うぐああああああああ!!!!!」
なんだ、これは!
脳味噌がかき回される、っつうのはこういう感じなのか!?
こめかみが陥没するような錯覚まで覚える。
お、落ち着け、俺。『ヘイ
「ああああああああああッッッッッッ!!!!!!」
ダメだ、魔法に集中できない!!!!
ああ、『デコラーレ・ピュリファイ』の綱が切れる。
ちょっと待てよ、『デコラーレ・ピュリファイ』を切れば頭痛も終わるんじゃ?
俺は『デコラーレ・ピュリファイ』を切ろうとした。
途端に、俺の頭で声が聞こえた。
『仕方がない、少し助けてやろう。』
声とともに頭痛が消える。
頭痛が消えると共に俺の思考回路が元に戻った。
あれ、今の声って、おっさんか?まあいいや、助けてくれたんだし。
俺は『デコラーレ・ピュリファイ』の綱をもう一度しっかり掴む。
どういう訳か、もう頭痛は襲ってこない。
なら、やることは一つ。
(『デコラーレ・ピュリファイ』の魔力を練るっ!!)
『何か』から出る魔力はいわば不純な魔力だ。
なら、これを全部出してやる。
『マジックサーチャー』を展開した俺は超速で黒い魔力を取り除いていく。
『何か』はビックリしたように蠢いた。
クックック、今度はお前が焦る番だ!!!!
さっきまで『ヘイレン』に回していた魔力も『デコラーレ・ピュリファイ』に回し、魔手を展開する。
魔手で『デコラーレ・ピュリファイ』の綱を掴み、引っ張る。
何だ、最初からこうすれば良かったんじゃないか。
魔手を8本全力で展開し、『何か』を釣り上げた。
よし、今なら言える。
「フィィィィィィィィィッッッッッッシュ!!!!!!!!!!」
俺から手応えが無くなると同時に、イグニスの母さんから『何か』が飛び出した。
その姿を目に収めて、俺は一つの存在が頭に浮かんだ。
―――――――――悪魔。
『クックック、よく上級悪魔たる我を退けたな。
が、小さき人間の分際で我を退けたことだけは褒めてやろう。』
まーたトンデモさんが来ちゃったよ。
俺、勇者と遭遇してから半年も経ってねえんだぞ!?