88話 灯台下暗し
俺等が闘技場の控室を開けた途端、人がなだれ込んできた。
「「!?」」
俺とグランさんが同時に驚く。
あれ、一ヶ月前にも同じことがあったような………………。
ま、まあ気にしないでおこう。
つーか気にしたら負けだ。
どうやら一番前にいるのは庶民のチャンネー(約10名)のようだ。
その後に気品正しそうにしている貴族(約4名)
そしてその後ろに『ヘカトンケイル』。
非常にシュールだ。
ボールを相手のゴールにシュシュシュールな景色になる~♪
スマン、あまりの光景に取り乱した。
「グランさん、これの行列ってなんだと思う?」
「さあ…………?なんだろうな。」
そんなやりとりをしていると
一人のチャンネーが味方を踏みつけ立ち上がった。
「私達はロイド君のファンなんです!是非ともサインを下さい!」
「な、なんだってー。」
あ、安心しろ。棒読みじゃないからな!
冗談なしに結構驚いている。
まさかのファンかよ!
「大丈夫かなぁ、ロイド。確か女性恐怖症だったよね……………。」
「おい、シュウ。見ろよ、あいつ微妙に足震えてるぜ。」
「あ、ホントだ。よく我慢してるねぇ。」
おまいら、うっせえ。
足が震えるのは不可抗力だ。
こんだけチャンネーがいて震えないほうが可笑しい。
いや、俺以外の男には桃源郷か。
くそう、なんか悔しくなってきた。
よし、なんとしてもこのチャンネー軍団の相手をしきろう。
あれだ、自分の壁を超えろ!て奴だ。
やってやる!
結論から言おう。
無理。
何とかサインを書いたけど、『ヘイレン』を連発して頭痛とかを抑えたからだ。
もう一回やれって言われたら出来ない自信がある。
しかもそんな俺を見て「緊張してるのかな☆」と思ったらしいチャンネー達が撫でてこようとする始末。
早急に魔手を細かく動かし髪のようにして、防いだ。
チャンネーがいい匂いだったのが唯一の救いだろうか。
これで臭かったら死んでた。
が、そんな感じで息も絶え絶えになりながらも俺はチャンネー軍団を突破したのだ。
後はこれから始まる至福の時に心躍らせるだけだ!
「ちょっといいかね、いや、悪い筈がない!
なんたって私は貴族!貴様ら庶民共よりはるかに高貴…………………!
という訳で、私の護衛になることを許そう!感謝するが良い!」
…………………。
アリス、俺今日帰れないかもしれない。
「ええ、ですから金は必要ないのです。」
「ぐっ、確かに貴様は「煙玉作成者」…………!金ごときでは揺るがないか!ならば!この特製の杖で!」
「すみません、如何せん筋力が低いのであんまり物を持てないんですよ…………。」
「ならば諦めるしか無いか……………。クッ!」
俺は4人の貴族を見事にあしらうのに成功していた。
俺は安定した生活を求めているが、自由が奪われるのは嫌なんだ。
あ、あとさっきの杖の件は嘘な。
魔手があるから余裕で持てる。
よし、じゃあこれで至福の時へ移れる。
……………………………。
いやいや、嘘だよ?
あ、あーはっはっは(乾いた笑み)
忘れてるわけ無いじゃないですかー。
だからさ、睨まないで欲しい。
『ヘカトンケイル』の皆さん!
「やっと俺等の番が来たぜ………。
でだ、ロイド。俺等がここに来た理由は2つあるんだが何かわかるか?」
さあ?わかる訳ない。
強いて言うなら
「俺等がFランクにしては強すぎた、とか?」
「いんや、それは既に諦めている。」
諦めるって何を!?
や、やだなあ、まるで俺等が化け物みたいじゃないか。
あ、ちょっと待てよ。
「だったら『消えない炎』についてとか?」
「そうだ。一つ目はそいつに関してだ。
何なんだ?あれは。『アンチフレイム・ウォーター』を喰らって強くなる炎なんて聞いたことがない。」
「あれは…………まあ、特殊魔法みたいなもんだ。」
ナトリウム云々言っても判るはずがないし、これで誤魔化そう。
「だとしてもだ、司会と解説によりゃあお前は火属性を持っていない。
さすがに特殊魔法だとしてもおかしくねえか?」
「あれは土と水の混合魔法なんだ。
この2つで水をかけても風が吹いても燃える炎が出来るのがこの特殊魔法。」
「そりゃあ恐ろしい魔法だな…………。
ところで、どうやって炎を消すんだ?どうやらお前が倒れて少ししたら
勝手に消えたんだが。」
あっ、消すの忘れてた。あっぶねー。
「あれは砂を被せまくるか炎の発生源を壊せばいい。
勝手に消えたのは何かの拍子でスタジアムの砂を大量に被ったんだと思う。
いやー。本当に危なかった。おっさん、マジでごめん。」
「いや、まあそれで死んでもすぐ復活するんだがよ………。
ところで、あれは水属性と土属性さえあれば誰でも使えるか?」
「無理だな。まず『ナトリウム』が何かを軽く説明できないといけない。」
「『なとりうむ』………?ダメだ、文字からしてわからなそうだぜ。」
「つまりはそういうこと。
あ、そうだ。もしかしたらこの後にこの特殊魔法について聞きに来る人はいるかな?」
「大丈夫だと思うぞ。
司会と解説が上手いこと丸め込んでくれた。
俺は実際に戦ったから疑問に感じたが、他の奴は大丈夫だろう。」
おお、司会&解説、サンキュー。
「じゃあ、もう一つの用は何?」
「シュウとギルを鍛えさせてくれ。
あいつらには戦士の素質がある!」
……………。
「ごめん、あのクソギルマスが二人に稽古をつけてくれるらしいんだ。
ちょっと諦めt「何だと!?もう一回言ってくれ!」
あのクソギルマスが二人に稽古をつけるそうd「キタァァァァァァァァ!!」
そんなにあのクソギルマスが働くのが嬉しいのか?
「いい情報を有難う!早速ギルマスに頼むぞ!!!
俺等も稽古をつけてもらう!!!!」
「「応!」」
そう言って『ヘカトンケイル』はギルマスを探しに行った。
へえ、クソギルマスの稽古ってそんなにいいのか。
その本人は俺等の後で休日のおっさん的ポーズで試合を見ているんだが。
気づかなかったんかい。
『ヘカトンケイル』の皆さん、ご愁傷様。
「じゃあグランさん、戻りましょうか。」
「ああ。もうそろそろ流石に戻らないと仕事がマズイぞ…………。」
俺等は『ウィンド・ブースト』を使った全速力でギルドに帰った。
更新ペースが戻ります。
具体的には週3くらいのペースになると思っていて下さい。
すみませんm(__)m